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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
浸地の小学生時代

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ばいばい、ばぁちゃん

 ばぁちゃんで過ごした十日間は長いようであっという間に過ぎ、神奈川へ戻る日が来てしまった。駅に行くためタクシーを呼んで、来るまでの時間、玄関で待つ。


「浸地ちゃん、また来なんしょ? ばぁちゃんビンのサイダーとご馳走用意して待ってるからな」


「うん! ありがと!」


「あと、これな。古いから効き目あるかわからねぇけど」


「あ、うん、ありがとう……」


 ばぁちゃんは大事そうに握っていた『無病息災』のお守りを、私にそっと手渡した。そのやさしい感触とは裏腹に、ばぁちゃんの目には、今まで見たことない、強い力を感じた。


 そうか、ばぁちゃんはなんでもお見通しだ。


 心配してくれている。それはとても嬉しいのに、嬉しすぎて感情を押し殺してしまい、お礼の言葉が口籠くちごもってしまった。


 それから少しの間、お母さんとばぁちゃんが会話をしていると、あっという間にタクシーが来てしまった。


「じゃあね、またおいでよ?」


「うん! ばいばい、ばぁちゃん」


 最後にギュッと握手をして、お母さんに手を引かれおもむろにタクシー乗り込むと、バタン! と自動でドアが閉まった。その瞬間、私とばぁちゃんは断絶され、もの悲しくなって涙腺が緩み、鼻がムズッっとした。


 タクシーは徐行で家の敷地から国道へ顔を出し、右折した。国道に入り加速すると、ばぁちゃんは曲がった腰を押さえながら、歩道を走って追いかけて来た。


「またなー! また来てなー!」


 私は扉のハンドルを回し、窓を開けて少しだけ顔を出し、精一杯叫んだ。


「ばいばいばぁちゃーん!! またねー!! ありがとーっ!!」


 私、こんなに大声出す子だったっけ。


 お母さんの前での大声は恥ずかしいけど、表に出しきれない、感情としてより論理的に捉えるしかできない、きっとこうするべきだろうという感覚とのせめぎ合いがそうさせた。これが本当のところで、ばぁちゃんに悪いことをしているとは理解しているけれど、この頃私の心はフリーズしたままで、これが精いっぱいの誠意で尚且つ、心からそうありたい自分だった。


 それでもこの場所を訪れて、少し氷が溶けた気がする。どうせまた、固まってしまうのだけれど。


 また来年、ばぁちゃんと会えたらいいな。そう強く思ったけれど、これがばぁちゃんとの最後の別れとなった。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 いつも更新が遅くなり申し訳ございません。


 次回から、更にイジメ被害者とその周囲の人間模様を深掘りして描いてゆきます。

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