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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
浸地の小学生時代

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ばぁちゃんと畑作業とお散歩

 仏壇の前に敷かれた紫色の座布団に正座し、お母さんは両サイドの燭台しょくだいに差し込まれた蝋燭ろうそくにマッチで火を灯し、私は右の蝋燭で緑色の線香に点火。すすけた金メッキの香炉こうろにそれを横倒しにした。横倒しにするのは火災予防のためで、この家の習慣だ。ちょうど線香独特の薫りが漂い始めた頃、チーン、と、リンを小指ほどの直径の木製の棒で軽く叩き、合掌する。


 ご先祖さまとの挨拶を終えると、ばぁちゃんといっしょに金時豆やキュウリ、トウモロコシ、トマトなどを収穫する。


 ばぁちゃんは畑作業が趣味で、家の前には東西に長く野菜畑が広がっている。そこで収穫された野菜はどれも店で売っているものとは風味が違い、特にトマトは独特の匂いが強く格別。私はここを訪れる度、ばぁちゃんと一緒に収穫を楽しんでいた。


 収穫の合間、私は辺りに居るトンボを追い掛けていた。周囲には公園など、これといった遊び場がなく、昆虫採集や魚釣りが数少ない遊びだった。畑には黒い毛虫が沢山いて、おばあちゃんはそれを躊躇ためらいなく踏み潰すが、かなりグロテスク。


「ほらほら浸地ちゃん、チョウチョさ捕まえて! そこにアゲハチョウいるべした」


「え~、リンプン付くからやだ」


「浸地ちゃん、トンボさ捕めぇたら畑の虫さ増えちまうべした」


 トンボは肉食で、畑の害虫を食べてくれるらしい。


 翅の端が茶色いアカトンボの仲間が留まり木や電線いっぱいに止まっているなか、木の陰の草むらをチョウのように舞う翅全体が黒く鮮やかで、メタリックグリーンのボディーが綺麗なトンボが視界に入った。


「わかったぁ。ねぇばぁちゃん、この黒くておっきいイトトンボ何?」


「これはハグロトンボさ。よくテーブルの上でおかずと一緒に寝てる」


「テーブルで寝てるの!? オニヤンマはよく家の中飛んでハエ捕ってくけど……」


 後で知ったが、ハグロトンボがイトトンボの仲間ではないそうだ。


 収穫を終え、お母さんも交えて三人でトウモロコシの皮を剥ぐ。実を包む色素の薄い葉は厚く、力いっぱいに剥ぎ取ると、もじゃもじゃと白い毛が露出する。それらを綺麗に取り去って、ようやく茹でるのだ。


「おいしい! 甘いねこれ!」


「オラがこさえたんだから当たりめぇだべぇ。都会じゃこんなん食えねぇだろうから送ってやる」


「ホント!? ありがとうばぁちゃん!!」


「浸地は素直でいい子だべぇ。夕方になったら田んぼさ行ってイナゴ獲るべした」


「イナゴ!? やったー!!」


 ばぁちゃんが作ったイナゴの佃煮は私の大好物。バッタも混じっていたりするけどそのときは気にならなかった。それよりも食事に夢中になってしまうのだ。


 午後四時を過ぎ、少し陽が傾いてきた頃、私とばぁちゃんは家の前を通る砂利道に出た。この砂利道は数百メートル先の湖まで田んぼを囲うかたちで続いていて、イナゴを獲りながら一週して家へ戻るコースだ。


 楽しいのに、時の流れはそよ風のよう。しかしそれでも、あっという間に過ぎてゆく、不思議な感覚。私が住む街にも山や海といった自然はあるのに、こんなにも違うのは、どうしてだろう。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 いつも更新が遅くなりまして恐縮でございます。

 先日この章の舞台とした地を訪れ、今後より良い物語を贈り出せるよう感性を磨いてゆきたいと思います。

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