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いちにちひとつぶ ~迷える君への贈りもの~  作者: おじぃ
浸地の小学生時代

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◇イジメのはじまり

 ましろさんより浸地のイラストをいただきました!(2016年10月1日)

挿絵(By みてみん)


 ◇◇◇


 大甕浸地おおみかひたち、現在高校三年生。これは私が小学五年生の頃のお話。


 当時、私は未砂記と一緒にオレンジとグリーンのツートンカラーの古い電車に揺られ、疲れた顔をしたオジサンたちと空間を共有しながら、横浜よこはまにある私立小学校に通っていた。皆一様にグレーのブレザーに身を包み、自らの達成感のため、親の機嫌を窺うため、机に向かって黙々と成績を競う日々。遊びといえば、クラスメイトの殆どが乱闘を繰り広げ、物理的な強さを競うジャンルのテレビゲーム。家庭の方針で汚れる遊びは禁じられている場合が多いのと、そもそも宅地開発により公園や空き地といった遊び場を容赦なく取り上げられていた。テレビゲームは私もそれなりに好きだけど、カラダ全部を使い思いっきり動き回って広い広い真っ青な空を見上げ、地球の丸みを目の当たりにできる海を見下ろす機会が滅多になく、微小なストレスが徐々に蓄積されてゆくのを幼いながらに感じていた。きっと、殆どの子供がそうだったと思う。


 ◇◇◇


「ねぇ、大甕さんってなんで成績悪い人と仲良くしてるんだろうね」


「きっとそうすることで自分を優位に見せようとしてるんだよ」


「へぇ、でもそれ最低じゃん」


「世の中キレイゴトだけじゃやってけないいんだよ。それは私たちも見習わなきゃね」


 始業前や休み時間、その他教職員の監視がない時間、背後から高潔ぶった低俗人種の噂話が聞こえてくる。常に誰かの悪口を言ってストレスを発散するのが、この学校では常識だった。私がその標的になったのは一学期の終わり頃。いつかそうなると確信に近い予感はあったけれど、いざ現実となると、気持ちがずんと重くなり、常態的に頭痛に悩まされ、胃や胸のざわめきは治まらず、食事は殆ど手付かずで、鉛筆や箸を持てば手が震えた。


 これを、『イジメ』っていうんだ。


 こんな状態がいつまで続くのだろうと、ただただ絶望にくれる日々を送っていた。それに、なにより私は自分を優位に見せるために成績の良くない未砂記と仲良くしていたわけではない。ただ気が合うというのみだ。イジメが始まると同時に三十八人いるクラスメイトの殆どが私から距離を置くようになり、味方といえば未砂記だけだった。


「ちょっと職員室行ってくるねー!」


 けれど、陰口を叩かれるようになってから一週間ほど過ぎた日の放課後、私は未砂記が日直で、職員室へ日誌を提出しに行っている隙に一人で教室を出て、いつも一緒に通学しているにも拘わらず黙って帰宅してしまった。電車に乗っている時間がいつもより何倍も長く感じたのは、今でもハッキリ覚えている。一人ぼっちの退屈と、未砂記を置き去りにした罪悪感だ。


 その日の夜、悶々としていた私は思い切ってお母さんにイジメについての相談をしてみた。しかし私にとってそれは、大きな間違いだったのかもしれない。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 今回からしばらく浸地の過去についてお送りいたします。

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