プロローグ
本作は処女作『いちにちひとつぶ』のリメイク版ですが、当時とは大きく異なる展開となります。
生命とは、どうしようもなく脆く儚いものである。
今日は紙で指を切ってしまった。明日、階段から落ちて骨折するかもしれない。もしかしたら、それ以上のことも……。
ビーズ細工のように一粒ひとつぶ紡いできた日々が、たった一本のかけがえのないテグスが何らかの理由で一瞬にして切断され、全てがパーになってしまうのも今日や明日かもしれない。人生というのは、そんな危うい生命というテグスを出来る限り長持ちさせられるよう、大切に、大切にしながら、色とりどりのビーズを使ってオリジナルの作品を紡いでゆくものと喩えられるだろう 。
あなたは今、幸せですか?
そう訊ねられて躊躇いなく心からイエスと言える人はどれだけいるだろうか。
例えば日本人の場合、多くは衣食住に不自由なく暮らせている。 それだけでも幸せなのだろう。その有り難味は存分に噛み締め、大いに感謝すべきだ。だがこの国の幸福度は下降の一途ではなかろうか。イジメ、劣等感、進学や就職難、家庭問題などなど、悩み藻掻き苦しむ材料はいくらでも揃っている。それらから逃れようと努力したところで、すぐに報われるのはレアケース。殆どの場合長い時間を要するが、それでもいつかは報われるという希望は捨てたくないものだ。
人は皆、問題を抱えている。
そんなニュアンスの言葉をたまに聞く。全員が全員そうとは言い切れないが、大なり小なり、何かしらの問題を抱えている人が殆どなのは確かだろう。問題の重みに耐えられず、自らテグスを切断してしまう人が絶えない、そんな世の中だ。
これから繰り広げられるのは、一見平和で、実は出口の見えない洞窟に迷い混んでしまった時代に送る、ごくありふれた日常の人間模様を切り取った、問題だらけのリアル系ハーフ・ファンタジー。
お読みいただき誠にありがとうございます。
第1話は後ほど公開予定ですので今しばらくお待ちください。