見知らぬ地で part2
あれは今朝のことだ。鍛冶屋の俺は近くの山まで鉱石を採りに行ったんだ。その行く道の途中でお前を見つけた。
あの時は驚いた。こんな人気の無い所に人が倒れているなんて、思いもしてなかったから。
それで俺は鉱石を諦めて、お前を背負って帰って来たんだ。力には自信があるからな。鉱石採りはまた行けば良いしな。
「簡単に言うとこんなところだ」
そう言い終え、口を閉じる。
「そうだったのか、ありがとう。何か手伝えることがあったら言ってくれ。一部を除いて協力するぜ」
ガインはクロードの言う『一部』が気になったが、そこは訊かないことにした。
「そうか? じゃあ……、鉱石集めを手伝ってもらおう。俺も行くから何も案ずることはない」
「分かった。ところで、今は何時頃だか分かるか?」
お腹が空いたクロードは、ガインに時間を尋ねる。
「今はだいたい昼時だ。今から飯だが……、一緒にどうだ?」
空腹のクロードを気遣ってか、ガインは彼を食事に誘う。
クロードは願ってもない機会、とばかりにその話に食いつく。
「ありがたく甘えさせていただこう!」
「よし、ちょっと待ってろ。すぐに用意する」
「意外とうまい!!」
数分後、2人はテーブルに着いていた。
「意外と、は余計だ! ほぼ毎食自分で作ってるんだからな」
スープに感心(?)するクロードと、それに抗議するガイン。
暫しの沈黙の後、ガインが口を開く。
「鉱石の件だが、明日で良いか? 急で悪いが、都合上明日が一番なんだ」
そう言って口を閉じたが、すぐに断りを入れる。
「あ、無理に気遣う必要はないからな」
「いや、俺も特にすることがなくて暇を持て余していたところだ」
クロードは快く了承。
「ありがたい、よろしく頼むぜ! それと、途中の道には魔物が出ることもあるから心に留めておいてくれ」
ガインは満足げに頷き、笑みを広げる。
「へー。魔物って、例えばどんな種類が出るんだ?」
魔物について好奇心をぶつけるクロード。
ガインは口元を緩ませて『いかにもクロードらしい』と感じた。会って間もない2人だが、かなり打ち解けつつあった。
「そうだな……、良く見かけるのはゾンビやスケルトン、スライムぐらいだな。あとはハウンドとか……、って説明が必要か?」
クロードはガインを見据え、力強く断言。
「大丈夫だ。スライムはゼリー状の不定形生物で、ゾンビは動く屍人、スケルトンは戦死した兵士の骸に邪念が宿ったもの、ハウンドは凶暴化した猟犬、ってとこだろう」
ガインはクロードの知識に感心、同時に彼の心にはある一つの目標が生まれた。
それは勿論――
「あっ!!」
突如クロードが大声をあげた。
「な、何だよ。びっくりしたじゃねぇか!」
よほど驚いたのか、ガインは少し身を引いている。
「いつの間にか俺のスープが減っている!!」
本当に空腹だったのだろう、食べ物への執着が少し高いようだ。
その言葉に、ガインは呆れながら告げる。
「何言ってんだ? お前は話している間もずっと食い続けてたじゃないか。だが心配するな、余分に残っているぜ」
クロードは顔にも声にも嬉しさを表す。
「おぉ、天恵が!!」
ガインはまたしても呆れ、突っ込む。
「神にじゃなくて俺にだろ、感謝すべきは。残りは向こうにある、自分でおかわりしてくれ」
キッチンの方を指差す。すると、彼は残りを素早く平らげ、滑るようにして行ってしまった。
向こうの方から感謝の声。
ガインは小さく笑いを漏らす。