遭遇 part3
今回は強敵との戦闘です。
下山しながらクロードはガインに話し掛ける。
「なあ、さっきの敵、なかなか強いヤツもいたよな」
それにはガインも同意する。
「そうだな。俺も槍を止められて驚いた。生前はなかなかの戦士だったのかもしれないな」
「そうか、ガインですらもそうだった――」
グギャアアアアァァーー!!
クロードの話を遮って、突如魔物の咆哮が響いた。
それは聞く者の恐怖を掻き立てるかのような威圧を帯びていた。
「なあ、あれって、まさか……?」
クロードは逃げ出したい気持ちをなんとか抑え、ガインに尋ねる。
「ああ、例のディヴァーだ。だが俺が戦ったのよりは少し小さいな。俺達が戦ったヤツは3メートルくらいあったかな」
ガインに怯えは見受けられない。少しばかりは動揺しているようではあるが。
「だが、どうやってこんなのと――」
「来るぞ!!」
ガインの鋭い叱声。
クロードも我に帰り、精神を研ぎ澄まして約2メートルもの巨駆の突進を避ける。
間一髪。危なかった。
そして、向きを変えつつあるディヴァーに向かって突きを繰り出す。弱そうな腹を狙って。
ディヴァーの痛みの叫び声が響く。今のはそれなりに効いたようだ。クロードの剣は狙い通り腹部に突き刺さった。刀身が半分程埋まっている。
ディヴァーが怒り暴れるので、止むを得ず剣を残して飛び退く。
ガインも奮闘しているが、あんなに大きい相手に1人では分が悪い。
と、なれば――
(使うしかない、よな)
背中越しに剣を見る。
《我を使うがいい。手助けしよう》
タイミング良く声が来て、クロードは即決する。
「よしっ! いくぜっ!!」
流れるような動作で抜剣、大きく跳んでディヴァーの目に斬りつける。一連の動作に無駄は無く、その過程で刺さったままの剣も抜き取る。
ディヴァーは噴き出す鮮血と失った左目の痛みや怒りなどで悲鳴を上げつつ、クロードに体当たりを仕掛ける。
それを見て跳び退るが、完全には避けきれず、衝撃を和らげるだけに留まった。少しの距離を吹っ飛び、地面に打ちつけられて一度跳ねる。
「ううっ……」
痛みに呻くクロードに、ディヴァーはとどめを刺そうと向かってくる。
なんとか立ち上がるが、とても攻撃を避ける余裕なんて無い。
(くっ、どうすればいいんだ……)
「俺の存在を忘れるなっ!!」
突然ガインが横からディヴァーを突く。大したダメージは与えられていないが、注意を引くには充分だった。
「すまない、助かった!」
「気にするな、お互い様だ!!」
痛みから立ち直ったクロードも攻撃に参加……しようとした時、剣に話し掛けられた。
《主よ、このままでは埒が明かぬ。魔法を使ったらどうだ?》
「魔法という手が! だが俺は……」
クロードは名案に思ったが、記憶喪失なので使えないことに気付く。
《案ずるな、頭では覚えてなくとも、心の内では覚えている筈だ。我に続いてルーンを唱えよ》
剣に言われた通り頭の中で唱えられるルーンを復唱する。難しいと思ったが、なるほど確かに覚えているようだ。
短いルーンを終え、叫ぶ。
「ガイン、避けろよ! くらえっ、ファイア!!」
かざした左手に熱が集まり、小規模な火の玉となってディヴァーへと向かっていく。ガインは射程圏外だ。
見事に命中し、大きな悲鳴が上がり、倒れる。黒く燻っている部分もある。
ガインはそれでもなお立ち上がろうとするディヴァーに攻撃を仕掛ける。少し遅れてクロードも続く。
「食らえっ!」
2人の攻撃を受けたディヴァーが耳をつんざくかのような断末魔を上げる。
そしてディヴァーは横倒しになって少しもがいた後、動かなくなった。
「ふう……、なんとか倒せたな」
ガインが安堵の表情を見せる。
「しかし、よく魔法なんて使えたなぁ。俺はそっち方面はさっぱりだ」
そう言って軽く笑うガイン。
「とは言っても、俺は剣の力で使っただけだ。記憶が戻れば自在に使えるようになるかもしれないが、今はまだ厳しいな」
まだまだだ、とクロードは首を振る。
ガインが気分を改めるかのようにして手を叩く。
「さて、片付いたし、帰るか。日が暮れてしまう」
クロードも同意する。
「そうだな。じゃあ、帰ろう!」
とうとうストックが尽きかけてしまいました……
次回は苦し紛れに人物紹介などに逃げるかもしれません(^_^;)