僕の生きる世界
『夕日の見える坂で、また逢えるといいね』
彼女の台詞が耳に残る。
幾千もの星空が
僕の身体を包み込んでくれる。
もう誰もいないこの部屋で
空しく響く呼吸音は
僕が出しているんだろうか。
それとも彼女の温もりだろうか。
少し広く感じるベッドで
世界から隔離されるとき
深い夢へと誰かが誘う。
それも彼女なのだろうか。
君を失ったこの世界に
興味を忘れてしまった僕は
これからどうすればいいのだろう。
そうだ。
あの坂へ。
彼女に逢いに行こう。
そこには当然彼女はいない。
でも、確かに足跡はあった。
夕日が色濃く輝いてた。
『キセキ』とでも言うべきそれは
誰も想像もしないほど
僕の心を揺さぶったのだろう。
雨が頬を濡らした。
が、すぐに止んだ。
彼女だった。
傘を片手に待っていたのだ。
夕日の見える、この丘で。
気がつくとベッドの上だった。
夢。
そうつぶやいてみた。
これから彼女に逢うことはない。
世界は彼女を忘れてしまったからだ。
しかしそれでもかまわない。
僕が生きていく限り
彼女は心にいるのだから。
あなたと大切な人がいる世界が
何よりも大事なんですよ。