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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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花咲く君へ

掲載日:2026/08/09

プラトニックマブダチ百合 婚約者との関係も良好


ねぇ、覚えている?私たちが初めて会った時のこと。私、あの日まで自分の髪の色が嫌いだったの。

あなたが私の髪を月の光を流したみたいだって、褒めてくれて、それで自分の髪色(いろ)を好きになれたのよ。それに、あなたの色である夕焼けも好きになったわ。我ながら本当に単純。ある意味で初恋か一目惚れみたいなもの…ああ、言葉の綾よ。あなたの婚約にも私の結婚にも異議はないわ。本当よ。

別にそれまで褒めてくれた人がいなかったわけじゃないわ。お兄様だって顔を合わせるたび私のことを可愛い可愛いって褒めてくれるし。でも良くも悪くも、お兄様って身内びいきが過ぎるから、たとえ私がネズミの毛皮みたいな汚らしい色をしていても、老人のような白髪をしていたって、どうにかこうにか褒めてくれると思うの。それって私の欲しいものじゃなかったわ。

ずっと幼い頃はお兄様たちのようなキラキラした金髪に憧れていたの。太陽の光を絹糸にしたみたいな、美しく鮮やかな金色。己の銀に近い金色があれに比べたら汚らしい色に思えて惨めだった。いっそ弟くらいガラッと違う色なら思いきれたでしょうけど、一応金色と言えなくもない色だったから余計に。

仮にも王族の姫たる私にあからさまな悪口を言う人なんかいなかったわ。でも褒め言葉がお世辞にしか聞こえなくって、上滑りしていて…私の髪がもっと鮮やかで美しい金色だったらって思ったわ。

ふふ。ええ、あなたが本心から私の髪を褒めてくれたのはわかってるわ。だから好きになれたんだもの。お兄様は知ったらしょんぼりしてしまうかもしれないけれど。

あなたが私の友人になって。たびたび王宮に私の遊び相手として訪れるようになって。私と仲良しになっただけじゃなくて、お兄様たちとも良好な関係を保てたから、我が弟との婚約話が持ち上がったのよね。あなたが嫁に出されるのではなく、婿を迎える立場でなおかつそこそこの格の伯爵家だというのも良かったのよね。うちの過保護な兄もあなたの過保護な兄も、渋々でも納得させられるし。

肝心の弟もあなたとの婚約に悪い気はしなかったみたいだし。顔合わせの時に一目惚れ、とまではいかなくても、あなたと話して妻に迎えるのはあなたがいいと決めたようだったわ。多分姉弟揃って好みが似ているのよね。

ちなみにあなたはいつ頃からあの子のことを好きになったの?

婚約者として交流している内に少しずつ。ふぅん。流石に婚約者にはちゃんとしていたのね、あの人嫌い。

ううん、良い事だと思っているわよ。小憎たらしいところもあるけど、可愛い弟だもの。幸せになって欲しいと思ってる。勿論、あなただってそう。いつまでも笑って、幸せでいてほしいと願っているわ。

変なこと言っちゃったわね。でもそれで良かったのかも。これから私たち、今までみたいに気軽には会えなくなるわ。物理的に住居が遠く離れるし。なにしろ海の向こうよ。国境を越えるだけならまだしも、船旅をしなきゃならないんだもの。馬を駆けさせるだけじゃ会えないわ。

それに嫁いだら嫁ぎ先の家の事情も汲まなくちゃいけなくなるし。夫より親友を優先するわけにもきっといかない。まあそれはあなたも同じだろうけど。入り婿を迎えて当主になるのはあなたとは言っても、気軽な令嬢の身からは卒業。お互い大人にならなきゃいけないのよね。

ずっとわかっていたし、受け入れていたわ。あなたが家付き娘じゃなければ侍女として引き抜いて連れていったのに。これは本気よ。だって慣れない異国でも親友が一緒なら明るくやっていけそうでしょう。そこだけは残念。でもお互い、そう生まれついて役目を与えられたのだから仕方ないわよね。

ねぇ、好きよ。私の大切な友達。夕焼け色のリナリア。私きっと、夕焼けを見ても、月を見ても、あなたの名前と同じ花を見ても、あなたのことを思い出すわ。あなたはどんな時に私を思い出してくれる?私の髪に似た月の光を見た時かしら。

私とのお茶会によく出てきたチョコケーキを食べる時?まあ、うふふ…。

嬉しいわ。きっと、私との幸せな時間ばかり思い出してね。そうして、微笑みながらいつものようにチョコケーキを食べて、ミルクをたっぷり入れた紅茶を飲むの。私もそうするわ。お手紙のやり取りくらいなら、いくらかはできるといいわね。

私が、この国を戦場にはさせないわ。もし嫁ぎ先で私が不当な扱いをされたら、お兄様が嬉々として戦を仕掛けにいくかもしれないけれど…あなたは。あなたは、あなたの故郷で我が弟と穏やかに暮らしていて。お願い。

外に嫁いでいく私はもう、この国の王族男子どもがトンチキ言い出した時に叱りつけて止めたりはできないけれど。というか本当、そろそろいい年なんだからお父様もお兄様も常識というものを学んで欲しいのだけれど。あの蛮族どもをお行儀よくさせておくための最後の砦はあなたたちなんだから。上手くやりなさいよ。

お互い、結婚式に出席できないし、晴れ姿(ウェディングドレス)を見せ合えないことだけは心残りだわ。きっと、世界一幸せな花嫁になるあなたを見られないのは本当に残念。絵に描かせて送ってくるようにあの子に言いつけておこうかしら。余所の男に見せたくないって断られるかもしれないけど。



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