06
その映像は黒田も知っている”第5地区警察署”であった。
道路を遮断して横道するjob:bot……多くのボルグ達が列へ連なるように警察署へと向かっている。
何が起きているのか、人々はただ眺めるだけの人もいれば暴走すると喚き散らす人も……現場にいる人達は混乱していた。
エリーナは鷹敷に怒鳴る。
「あれも、貴方が命令したことなの!?」
鷹敷は首を横に振って否定した。
その顔は有り得ないものを見ているようであった。
「ち、違う……こんな命令は、俺はただお前を攫うようにと――」
「この命令は”オレ”がした」
そう言ったのは鷹敷ではなく、パソコンのスピーカーから発せられるものであった。
その声はノイズの混じったような音声であったが、それが誰なのか黒田には検討がついていた。
黒田はノイズ音声の相手に返答する。
「お前がサイバーギャング団のボス”アステル”か……さっきは上から突き落としてくれて、ありがとうよ」
皮肉も入れて返したが、相手は関係ないというように楽しそうに語りだす。
「私の息子とのかくれんぼは楽しんで頂けたかな?もうそろそろ、こちらもフィナーレを飾ろうと思ってね……最高の花火をこしらえたんだ」
「もちろん君も来るだろう?」
パソコンの時刻は夜中の3時を示していた。
アステルは黒田に予告をしていた事を思い出す。
――後残り、三時間。
花火ということは……まさか警察署ごと爆破するつもりなのだろう。
朝方の6時頃までには何とか阻止しなければならない。
緊張感と焦りが黒田の中で走る。
怒りを抑えながら、黒田はエリーナに自宅の鍵を投げて渡した。
「その鍵は俺の家のだ、暫くは危ねえから俺の家にいろ」
「黒おじさん行くの?」
「もう時間がねえ、早く行かないと警察署は爆破することになる」
「爆破って、花火ってそういう事!?お兄ちゃんが……!」
今にも泣きそうなエリーナの肩を掴み、落ち着かせる。
「大丈夫だ、俺が何とかする」
「……黒おじさん、手伝えることは?」
「その気持ちだけで充分だ、今は俺に任せろ……いいな?」
エリーナは何も言わず、ただ頷いた。
今まで黙っていた鷹敷が不安そうに黒田へ話し掛ける。
「俺は、どうしたら」
「お前も俺の自宅にいろ……そんな不安そうな顔すんな、お前のことは事件が片付いてからだ」
「でも、ボスが――」
「……お前も”駒”になって吹っ飛びたいのか?」
「……駒?」
黒田は鷹敷に話した。
サイバーギャング団のボス、アステルは自分の仲間を駒としか見ていないということ。
そして、その駒の一部が鷹敷でもあるということ。
自分が駒であることを知った鷹敷は床に膝をついて、愕然としていた。
アステルは唯一の救いだと思っていたのだろう鷹敷にとって辛い真実ではある。
だが、アステル自身の勝手でこの若者を殺させるわけにはいかないのだ。
黒田は鷹敷をエリーナに任せ、パソコンからコードの一部を取り出して情報を抜き取ると廃墟の出口を把握し、急いで第5地区警察署にへと向けて駆けて行った。
2人だけが残されたパソコン室。
ショックで下を俯いている鷹敷に何て言葉をかけていいかエリーナが悩んでいると、パソコンの隅にある物が気なり問いかけた。
「ねえサイバーギャング団に子供がいたの?」
「……居るわけないだろ、この中で一番最年少なのは俺だけなんだから」
「それじゃ、あの子供用レインコートなに?」
パソコンが置かれている机の隅っこ、事件に追われて気付く事もなかったそれは隠れるように置かれていた。
エリーナはそれに近づき、そのレインコートを確認するように持つ。
その子供用レインコートはまだ買って新しいのか汚れのない綺麗なものであったが、雨の時に使ったのかまだ濡れていた。




