02
――……じさん、……きて。
誰かの呼ぶ声により目を覚ました黒田は周りを見ると、薄暗い室内はあちこちに物が散乱していてどこも穴が空いているといった状態で欠陥であるのがわかった。
黒田は天井から室内全体を見下ろすようになっていたため、自分がどうなっているのか確認する。
どうやらコンクリートから突き抜けた鉄骨に医療用椅子のコードが引っ掛かり、ぶら下がっているようだ。
「おじさん!こっちだよ、こっち!」
室内を見渡し声のする方を探してみると、こちらを見つめてる目線と目があった。
そこにいたのは瓦礫の陰に隠れている学生服を着た小柄な女性がこちらに向かって分かりやすいように小ぶりに手を振ってくれた。
その女性に黒田は見覚えがあった。
「お前……轟木の妹か」
「やっぱり黒おじさんだ……大丈夫?だいぶ上から落ちてきたみたいだけど」
「まあ、なんとかな……生きている分は上等だ」
からっと笑って見せたが医療用椅子に縛られてぶら下がっているようなおっさんは端から見たら情けないものだろうと黒田はそう思った。
この女子学生はエドリック 轟木の妹”エリーナ 轟木”。
IT専門の一流高校に通っているメカが大好きで、兄のエドとは正反対の性格をしている。
兄の心配とは裏腹に元気そうにしているし、むしろこの状況を楽しそうにしているため黒田にとって複雑な心境である。
まあ、無事であるなら良かったもんだが……。
エリーナの無事も確認したので、ぶら下がっている今の自分の状況をどうにかしなければならない。
まずは、まだ外し切れてない拘束器具をどうにかしないと……。
下手な外し方をすれば変な体勢になってしまうため、外していく順番を気をつけなければいけない。
黒田はまず自由が効く左手で足元の拘束器具を外そうとした。
「おじさん待って、動かないで!」
突然の静止に条件反射で動きを止めてしまう。
すると薄暗い部屋全体が赤いライトに照らされて、部屋全体が赤く染まる。
ライトが発している方に目を向けるとそこには……。
「なっ、ボルグ……!?」
部屋に現れたのは、赤い目を光らせたボルグだった。
ボルグは何も言わずあちらこちらへと視線を配り、何かを探すように部屋を徘徊している。
エリーナの方に目を向ければ口元に人差し指を立てて、黙るようにと黒田にジェスチャーをしていた。
ボルグは一定に徘徊しを終えると、その場を去って何処かに行ってしまった。
ボルグがいなくなったことをエリーナが分かると、黒田の方に近寄って足元の拘束器具を外し手伝いをしてくれた。
黒田もまだ右腕についている拘束器具を外し、無事医療用椅子から解放され床に着地する。
「助けるつもりが、助けられるとはな……お陰様で助かったよ、ありがとな」
「いいんだよ!うちの兄ちゃんの手伝いしてくれてるんだから、お互い様だって」
そう言って、ニッコリと満開の笑顔を黒田に見せた。
黒田はまったく頼もしい兄妹だと、エリーナとエドを見比べてそう思った。