02
「俺に依頼ってなんだ」
「依頼というのは、坂本の無念を晴らして欲しいのです」
「……俺に人殺しなんざ出来ねえぞ」
「もちろんそんなことを刑事さんには頼めません、逮捕して欲しいのですよ……サイバーギャング団を」
最後のサイバーギャング団に対して重く発した声は、怨みを感じさせるような言い方だった。
黒田は気になっていることを店主に聞いた。
「大屋功の兄ちゃんに坂本刑事の話をしたのはあんたか?」
「ええ、この繫華街は全体がサークルのようなもの。……信頼出来ない警察を相手にするぐらいなら、みんなを信じた方がいい」
この繫華街の連中らはどうやら警察を信頼していない。その理由が坂本刑事と関係があるのか?坂本刑事もまた彼らが恨む警察の一人だ。坂本刑事は信頼し、警察を信頼しないにはそうとうの理由があるはず……。
そこを問い詰めることにした。
「俺も一応は警察だぞ?あんたらが警察を信用しない理由はなんだ?」
店主は飲みに来ている繫華街の店主達に視線を送ると、繫華街の店主達は坂本との関係を語りだした。
「最初は警察に頼っていたさ、でもあいつらいつになっても動こうとしない。決まって動くときは、事故が起きた時ぐらいだ」
「俺らはサイバーギャング団の悪質な行動から幾度も坂本に助けられてきたんだ」
「動かない警察よりも坂本刑事はよく動いてくれたよ、この繫華街のためにな」
「警察はサイバーギャング団の行動を咎めようとしねえ。それどころか、見逃してるようにも見えたんだ」
「俺らは思ったんだよ、警察とサイバーギャング団は”グル”だってな」
「グル?警察とサイバーギャング団が?」
俺はさっき言った言葉をオウム返しのように反復して返すと、繫華街の店主達はみんな揃ってうなずき返した。
酒場の店主はサイバーギャング団と警察の動きについて話す。
話によると、こうだ。
4年前からこの繫華街はサイバーギャング団の悪質な暴動によって事件が度々起きていた。
この事件に関して警察は、あまり協力的ではなかった。必ずサイバーギャング団関連の事件で顔を出すのは暴動が起きて、事故が終わった後とのこと。
それと比べて坂本刑事はサイバーギャング団の事件が起きると必ず現場にすぐに来てくれたらしく、サイバーギャング団の犯行を食い止めてくれていた。
それ以来から繫華街の住民達は坂本刑事を敬うようになり、彼を信頼するようになっていったそうだ。
彼らが警察とサイバーギャング団がグルだというのは、警察がサイバーギャング団を野放しにしていることとサイバーギャング団は警察が動かないことをいいことに、好き放題やっているということから警察とサイバーギャング団には裏の繋がりがあるとそう考えたらしい。
……根本的な理由はあるが、決定的な証拠はない。
この話を鵜吞みにするには筋が通っていない。だが、彼らにとっては一番信頼できる坂本刑事が亡くなったことにより、この話の信憑性に拍車が掛かり、徹底的なものとなってっしまったようだ。
ここで抗議を起こそうものなら、彼らを敵に回すこととなるだろう。
下手なことは言わず、彼らに同情する形でその場は頷き黙って聞いていた。
そして彼らは坂本刑事の退職後の話を聞かせてくれた。
退職後、職を無くした坂本はこの繫華街で仕事に就いて家族の生活費を稼ぐべく、よく働いていたとのこと。
その時の坂本刑事の家庭は奥さんと11歳になる息子さんの3人暮らしだったらしく、坂本刑事が職を無くして以来から奥さんも支えるべく共働きをするようになったとのこと。
キツイ生活ではあったが、それでも幸せそうであったとか。
……だがしかし、その生活も長くは続かなかったという。
「奥さんが自室で首を吊って死んでたそうだ」
仕事から帰ってきた坂本刑事が自室を開けると、天井にぶら下がった奥さんがそこにいたらしい。
警察はこの事件を”自殺”という形で処理したとのこと。
自殺する動機もなかった奥さんに違和感しかなく、坂本刑事自身で調査を行ったところ部屋は荒らされており、奥さんの足には10㎝程の穴が開いてあった。
坂本刑事は、これは”自殺”ではなく”他殺”であると断定し、独自で捜査することを決めたとのこと。
「(10㎝の穴……レーザー銃か)」
そこから坂本刑事は仕事を辞めて、奥さんの仇を討つべく独自捜査を開始した。
息子さんはというと、自分と一緒は危ないから親元に預けたとのこと。
捜査をするべくホームレスに化けて、犯人を捜すべく繫華街にずっと目を配り続けたらしい。
「なるほど、坂本刑事はわざとホームレスになって犯人を追いかけ続けていたのか」
「そして、その犯人っていうのがサイバーギャング団だった……てことか?」
「その通りです、黒田刑事」
「うむ……(そうだと言ってしまえればいいが、これも証拠がない。)」
「あなたもそう推測されていたのではないんですか?サイバーギャング団はハッキングを得意とするテロ集団、彼らなら自分達の手を汚さずに犯行を行う事ができる」
「あなたが連れていたあの忌々しい呪われたロボットを使えばね」
黒田はその発言に目を細め、不快さを徐にだした。
だがそれは、酒場の店主も同じだったらしく。ここには居ないが、もし居たならば異物のように受け付けてもらえなかっただろう。
電次郎の時と同じように、その口から重々しく語られた。
「そう、呪いのロボット”job:bot”ならね」
どうも読んでいただき、ありがとうございます。
小説を書いていて、ちょっと読みづらいかな?と思い、少し改善してみました。
読みやすくなったでしょうか?良くなってたらいいなと思います。
それでは後書きはここまで。
評価や感想をいただけると、嬉しいです。
それでは、次回の話しで会いましょう。