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”ネット・ゴースト”。
都市伝説の1つとして噂されている。
ネットゴーストはインターネット上に死んだ人間の声、面影が見えたということから噂が始まる。
後に死んだ人間は未練が残るとネット・ゴーストになると噂が大きくなり都市伝説の1つとして有名になった。
だが、この噂には他にも1つ噂がある。その話というのが、ネット・ゴーストは人工知能AIの実験により失敗したAI達が破棄され、その意志がネット界に入り込み彷徨うことでネット・ゴースト化するという話である。
ちなみにこの都市伝説はどこから流れ出たか謎であり、度々ネット・ゴーストを目撃する話も出ていることからネットを主にしているこの世間では、若者の間では人気的な話題となっている。
ー奪われた警官バッジー。
2116年05/19. -17:35-。
東京都第5地区に務める東京警察の刑事”坂本 直樹”は強盗を追っかけていた。
強盗は人混みに入り込み、人にぶつかろうが関係なく突き飛ばし捕まらないように逃げ続ける。
それを追いかけるように坂本は人混みを避けながら、追いかけていく。
坂本は耳に付けてある通信イヤホンのボタンを押し、連絡を取った。
「おい!そっちに奴が行った!挟みこめ!」
「了解です」
数秒も経たないうちに通信機からは無機質な声が返ってきた。
強盗は繫華街の狭い裏通りを走っていく、次の角を曲がろうと強盗が行こうとした途端121cm程の小型ロボットが道を塞いだ。
その容姿からして強盗は警察のロボットであることに気付いた。
たかがロボット、人を抑える程の手を加えることなぞできやしないだろうと強盗は思った。
それもそのはず、この機械たちには”ロボット三原則”と呼ばれるものがある。
そのプログラムが組み込まれている以上、人間様に手を出すことや傷つけることも許されない。
強盗はそう高を括りその警官ロボットに突っ込んでいった。
「そこをどけ!雑魚ロボット!」
「止まってください。あなたは通報されています、直ちに止まり警察に出頭して下さい」
強盗は道を塞ぐ警官ロボットを突き飛ばす。突き飛ばされた警官ロボットはそのままの勢いでその場に倒れる。
嘲笑うようにロボットに向けて強盗は捨て台詞を吐くように言った。
「はっ、邪魔なんだよ!このー」
”木偶の坊”と口にした瞬間、強盗の右足に熱い感覚を感じた。
だがそれも一瞬のうち、後に強盗の右足に激痛が襲った。あまりの痛さに強盗は勢いよくその場で転げ落ちる。
警官ロボットは突き飛ばされた後、万が一ようにと腰に付属してある”ロボット犯罪”用の”レーザー型銃”を倒れた状態で強盗に向けて撃ったのだ。
強盗は痛みに耐えながら、その場から逃げようともがく。
突き飛ばされたろう警官ロボットは何事もなかったように立ち上がり、まだ逃げようとする強盗に近づく。
「ど、どうなってんだよ……どうしてロボットが」
「ご同行願います」
「ひっ……!」
強盗は自分に近づいてくるロボットに怯えだす。
警官ロボットが強盗の足元近くにまで来ると、強盗の左足に向けてレーザー型銃を向ける。
強盗は懇願するように警官ロボットに言う。
「わ、わかりました!出頭します!だからっ!」
「ご同行願います」
「へ!?だから出頭するっていー」
言い終わらないうちに左足から熱い感覚と後の激痛が走る。
強盗の右足を”撃った”のだ。
強盗はあまりの痛さに叫びだす。叫んだのは痛みか?または恐怖か……強盗はそれを判断出来る程余裕がなく何度も懇願するように言い続ける。
「出頭します!罪を償いますから!だから、だからお願いします!」
ー殺さないでー。
これが彼の最後の一言になった。
人混みを掻き分け警官ロボットの居る狭い路地裏に坂本が着くとー。
「……おい、嘘だろ」
そこにあったのは一体の警官ロボットともう動くこともない抜け空となった遺体だけであった。
その遺体は自分が追いかけていた”強盗本人”であることは間違いではなかった。いや、間違いであってほしいとも坂本は思った。
遺体の傍にいる警官ロボットは動かなくなった遺体をただ眺め続けている。
坂本は頭を抱え込みたい気持ちでいっぱいであった。坂本はただずっと眺め続けている警官ロボットに呆れながら聞いた。
「おい、一体何があった」
「……お疲れ様です坂本刑事、残念な結果になってしまいましたー」
ー強盗犯は消息不明になってしまいましたー。
「……は?」
「先ほど追っていた強盗犯に取り付けられている保険チップの信号が無くなったのです。すみません、私の責任です。犯人は圏外に逃げたか、またはー」
「お前、一体……何言ってるんだ?」
坂本は改めて遺体の容姿を見た。
服装は今流行りだろう若者向けのフード付きスポーツ型の形無し洋服にラインの入ったスポーツ型のズボン、そして名ブランドのマークの入った靴。
人相についてはカラー染めしただろう入れ込みが入ったツーブロックの金髪にサングラス、目からは怯えるような形相をしていて目元からは恐怖で出たであろう涙の後が残っていた。
坂本が目についたのは強盗犯の左右の足であった。強盗犯の足には10㎝程の穴が焼け目つけて空いてある。
坂本はこの形状を知っている。
そうこの形状は”レーザー型銃”でしがつけられないもので、レーザー型銃はバッテリーの消費が激しく一発を撃つのにリロードの時間が掛かる。リロードの時間が掛かるのは旧式型の多くだが、今の最新型のレーザー型銃は五発まで連続的に撃てる仕様になっている。
つまりだ、この強盗犯は数分も経たないうちに両足を撃たれたことになる。
しかも、このレーザー型銃は制限されていて一定の許可を得られない場合使用は固く禁じられている。
その許可条件とは”ロボット犯罪”、または”特殊的事件”であったケースの場合でのみでありそれ以外での事件で使用した場合……”処分”は免れないだろう。
そして今自分が使っているのは小型銃と警棒のみ……大体の半グレが使っていたとしてもレーザー型銃のようなものを持って歩いたりはしないし、レーザー型銃はバッテリーも含み重量があり持ち運ぶには向いていない。
……つまり、このレーザー型銃を使えた者はただ一人、いや……一体しかいないのだ。
ー目の前にいるこの機械、以外ー。
坂本は腰のポケットに入ってあった無線機を取り出し、現在の状況を報告した。
「こちら5地区刑事課の坂本だ。追っていた強盗犯を見つけた……」
もう二度と動くことはないが……。
数分後、5地区に配属されていた警察達が集まり遺体の処理が行われた。
この事件は強盗犯の”事故死”という形で収束を迎えた。