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25話 炙り出し

  犠牲者が出る、前の夜。桜は、海咲の瞳を真っ直ぐに見据え、彼女に自身の推理を披露した。


 「海咲ちゃん、貴女が…獅子織様なんじゃない?」


  桜の言葉に、海咲はくすりと笑った。


 「何でそう思ったんです?」


 「ええと、その。海咲ちゃんに、金色の毛がついてて…」


 「ふんふん、ついてたかもしれない」


 「あと、お風呂の中に」


 「あちゃ~、バレちゃいましたか」


  海咲は快活に笑うと、勿体ぶったような顔をした。


 「如何にも。私が、シシガミ様です。ぶい」


  やっぱり、というような顔をした桜に、黒髪の少女が首を振ってみせた。騙されないで、というジェスチャーは桜に通じず、海咲は話を更に大きくしようとしたので、少女は諦めたように溜息をついた。


 「ちゃんみさ。桜さんが本気で信じちゃうから、やめて」


 「ええ~、もうちょっと神憑り少女したかったのに」


  海咲は桜に手を合わせると、彼女に向かって茶目っ気のあるウインクを複数回ぶつけるなどした。


 「嘘です嘘です。最初から言っているじゃないですか。私はぴーりかぴぴらら、魔女見習いです。獅子織様でもシシガミ様でもございません」


 「そう、なのね。ごめんなさい、私の方こそ…どうかしていたのかも」


  しゅんと肩を落とした桜に、海咲は微笑みかけた。そして彼女は自販機から追加でアイスクリームを購入すると、桜に差し出した。


 「大丈夫ですよ、いいことありますよ。ヒューマン万事念仏の耳にも馬です」


  困ったように笑いながら、これ以上は体が冷えてしまうと断った桜の姿を、海咲は思い出していた。


  あれから一日と数時間が経過した。桜が洞窟から出てくるところを遠巻きに眺めながら、海咲は退屈そうに、大きく欠伸をする。


 「出てきたね、桜さん」


 「そうだね」


  彼女たちの下には、死体の山。それは、数日の間で間引いた、村人たちの骸だった。文字通りの屍山血河を椅子替わりに、海咲たちは木陰で一休みしていた。


 「金色の毛だって。迂闊だったね、いなりちゃん」


  いなり、と呼ばれた娘は、既に桜の知る黒髪の少女ではなかった。一昨日の夜とは異なり、目の覚めるような金髪を靡かせた彼女は、人型でありながら九つの尾を持っていた。そして相変わらず外見年齢の割には落ち着いた深紅の視線で、値踏みするように桜の姿を射抜いていた。


 「迂闊なのはいつも…ちゃんみさの方でしょ。私悪くないもん」


 「ええ~」


  さて、といなりはまだ新鮮な死体の山から地上へと降り立った。死体は五体満足で、そのうち幾つかは心臓付近を一撃で穿たれていた。あるいは、腰付近を焼かれているものも散見される。


 「みさの人も慣れてきたね、人殺し」


 「まあね。さっさと出てきてくれると、こんな残虐非道な炙り出しはしなくて済むんだけどな~」


  くすりと笑う海咲の瞳の先には、動くものがあった。それは野ねずみほどの大きさの、妖魔。


 「ねえ、どうなの。桜さん?」


  海咲は桜に向けて、銃口を象った人差し指を向ける。


 「ばん」


  死体の中で蠢いていた人面の蛆を、海咲は容易く消し飛ばした。




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