50 箱庭の箱②
シロリンを包み込む繭が脈打つように、ぐぅうと膨らんだり、ぐらぐらと激しく揺れている。
呼吸するのを忘れて見守っていたマリサは、酸欠になり咳き込んだ。
「かはっ、はーっ……。シロリン?」
繭に手を触れようとした瞬間、強烈な真珠色の光に、マリサは目を開けていられなくなった。
マリサは目を閉じながら繭へと手を伸ばした。
「シロリン、早く出ておいでー」
繭から放たれた温もりは、次第に熱を帯びて行き、ドクドクと脈打つ音が手に伝わってくる。
ミシッ、パリパリッ、バリリッ!
「ワフォーーーン!」
ボスッ!
「うわっ!」
残像でまだ見ることはできないが、もっふもふの大きな塊がマリサに覆い被さってきた。
「わわわっ」
ひっくり返って衝撃を覚悟するものの、思ったほどの重さがやってこなかった。
(あれ? もしかして、シロリン痩せちゃったのかな?)
眩しさが落ち着きやっと開いたマリサの目が点になった。
幼い人の子が、マリサを見つめていたからだ。
「ええっ?」
青味がかったシルバーホワイトのフサフサの毛皮を着た、なんとも可愛らしい男の子だ。
よく見ると、男の子の身体は少し空に浮いている。
(何? このかわいい子は、天使?)
だが、幼児にしてはガタイが大きすぎだった。
目をごしごしとこすってもう一度見ると、そこには、シロリンがいて、眩しいシロリンスマイルをうかべていた。
「シロリーン!」
はしっとシロリンに抱きついて、もふもふの毛皮に顔を埋めた途端、涙が止まらなくなるマリサだったが、
「あははっ、くすぐったいよ~」
シロリンに顔中嘗められて、泣き笑いになった。
「ワフッ!」
「わーん、寂しかったよ~。寂し過ぎたせいで、さっきは人間のシロリンの幻覚まで見ちゃったよ~」
「アフゥ、ワフワフ、ワフッワフッ……」
「そう、シロリンも寂しかったのね、うんうん……。って、えっ? さっきのは、人の姿に見える幻覚の魔法って? え、ちょっと待って。私、シロリンの気持ちがわかっちゃうみたいなんだけど???」
マリサはまじまじとシロリンを見つめる。
どや顔のシロリンの額に薄っすらと、金色の模様が見えた気がした。
そっと額の毛を掻き分けると、花の蕾のような模様が煌めいていた。
「あらまあ……。シロリン、カッコいいねぇ!」
「ワフゥ……?」
「そっか、シロリンには見えないか」
神獣に進化中だったからだろうか、それと、女神の加護もあるのかしらと、マリサは改めて畏怖のようなものを感じるのだった。
(えーっと、私、シロリンの足手纏いにならない? なんだか少し不安……)
「……そうだわ」
思いついて、シロリンに掌をかざす。
(オープン!)
『S・神獣(進化率十パーセント) イヌ科・?(幼体) サイズ・? 強さ・S 色・シルバーホワイト&ブルー』
「進化十パーセント? まだ進化するってことかな」
画面をスクロールする。
『名前・シロリン レベル・20 攻撃力・1000 体力・1000 防御力・1000 瞬発力・1000 スキル・爪刃 威嚇(対象を蹴散らす) 遠吠え(対象をフリーズさせる) 幻覚 発光 土魔法(土木) 水魔法 風魔法(浮遊) 身体強化 物理攻撃回避率80% 魔法攻撃回避率80% 備考・大好き=「マリサ」 マリサの守護神獣 加護・豊穣の女神セレース 浄化の女神サルース 大地の女神オプス 水の女神ユートゥルナ 癒しの女神パナケイア 他』
「はーっ。シロリン、君、めっちゃ強くなってるし、女神様方のお墨付きみたいなの沢山頂いちゃってるよ」
鳥肌がゾワゾワと立ち、苦笑いになるマリサだった。
(やっぱりって思ったけど、想像以上にシロリンの人気? が凄いことになってるわ。シロリンがかわいいせいだったりして?)
マリサは自分の推理が的を射ていることを知らないが、実際、女神達のバックアップが盛りに盛られているのは、シロリンの可愛さ故のことだった。
「ちょっ、ここ、『マリサの守護神獣』ってあるよ⁉」
(まって、まって、シロリンが私をかばってまた怪我なんかしたら困るんだけど? シロリンは大切な家族で相棒って思っていたけど、私、真面目にシロリンと一緒にいていいのかな。シロリンは私のこと大好きでいてくれてるみたいだけど……)
「まさかね……」
そう言いつつ、ついでに自分のステイタスをスマホで確認することにする。
(シロリンのお荷物になるのはわかってるけど、これからどうしたいか、どうするべきか、考えるためにもね)
心を決めてスマホを起動させるのだった。
お待たせしてしまい申し訳ありません。
予定のところまでは辿り着けませんでしたが、大晦日ギリギリになんとか更新できてほっとしています。
仕事と試験をクリアし、緊張感のある日々を過ごしておりました。
2026年が皆様にとって輝かしい年となりますように。




