宇宙の果て
不思議な気持ちだった
アーリンたち最後の実行役の12人は鉱山の深い穴の奥で輪になって座り、ストークを送ることに集中していた
離れていく仲間たちの船のストークを感じながら、ゆっくりと近づいてくるベイダーたちのストークも察知していた
いろんな思いが交錯して、心が乱れる
ライラ星との別れ、仲間たちの旅立ち
これまでの日々、カイルの死
憎しみ、悲しみ、怒り
涙が込み上げる
集中しなければ、最後の仕上げだ
目を閉じて、深呼吸をする
周りの皆も同じ気持ちなのが伝わってくる
ライラ星の太陽、ブラーバのエネルギーを取り入れて放出する
心の平静を取り戻し、皆のエネルギーに同調する
温かく穏やかな、心の底から深くて優しい、幸せな気持ち
愛を感じる
光り輝く、強いエネルギー
地面の下から感じる、星の中心部のエネルギーに繋がる
あぁ、ライラのエネルギーだ
ライラ星の大きな包み込むような愛のストークが、アーリンの中に流れ込んでくる
ライラ、ありがとう
私たちと共に旅立つことを受け入れてくれてありがとう
ライラ星の穏やかな大きな許しのストークを感じて、胸が熱くなる
全てに感謝します
全てに愛を
愛と平和の祈りを捧げます
どうか、私たちライラの未来に祝福を!
瞼の奥に強い閃光が放たれ、ライラ星のコアのエネルギーが小さく爆発を起こしたストークを感知した
アーリンたち12人の仲間は目を開き、立ち上がると頷きあい、小型船へと乗り込んだ
鉱山の深い穴から小型船で飛び立つ
空高く浮かび上がると、鉱山の麓の辺りにベイダーたちが集まって来ているのが見えた
サラバ、悪しき者たちよ
爆発に巻き込まれないよう、高く浮かび上がらなければ
どんどんと高度を上げてライラ星から離れていく
ベイダーたちを葬り去ったところで、本当に悪を断ち切ることなどできるのだろうか?
自分の心に芽生えた、憎悪を消し去ることができる日が来るのだろうか?
アーリンは全体像が見えるようになったライラ星を見つめながら、ぼんやりと思った
次の瞬間、眩しい光が視界全てを真っ白に覆い、アーリンたちは気を失った
ここは、宇宙の果てだろうか?
何も感じない、何も見えない
ハッキリとしない頭で、記憶がまとまらない
あれから、どうなったのか?
仲間たちは?
どのくらい経過したのか?
ar…
arn…arn…
何か心の中に響いてくる
アァ?ァルン?
もしかして、私の名前を呼んでる?
私の名前?って何だっけ…
また、気が遠くなる
何も思い出せない…
心の中に流れ込んでくる
誰かがコンタクトしてくる
映像が浮かぶ
私たちの乗った小型船?
壊れて漂っている
仲間たちは?
誰もいない
あれは、何?
クリスタルの髪飾りが光って反射している
皆、消滅…?
arn、arn…
呼ばれている?
(我々はカークサス)
(肉体を持たないエネルギー体)
(そなたらの肉体は滅していた)
一度に情報が入ってきて、混乱した
え?死んだってこと?
私、そう、アーリンは死んだの?
(クリスタルに宿っていた)
(アーリンと呼ばれた魂は、無事だ)
(全てクリスタルから読み取った)
また一気に入ってくる
クリスタル?髪飾りのこと?
(クリスタルは記憶、記録をする)
(そなたの魂も保持されていた)
(故郷を失い悼みし者よ)
仲間たちは?他の皆は?
(我々が見つけたのはそなただけ)
(我々と同じエネルギー体で漂流していた)
ここは?カークサス?
(この星はカークトゥ)
(我々はこの星の民カークサス)
カークサスは物質的な体を持たないエネルギー的存在
高い精神性を極めており、宇宙の中でも豊富な知識、叡智を誇り、宇宙全体の研究者、探求者のような星人
平和を願う、宇宙の片隅の隠者のような人々だと、アーリンは後に知ることになる
カークサスはアーリンに様々なことを教えてくれた
ベイダーたちは、リザギアンと呼ばれる宇宙賊で宇宙の星のあちこちで侵略行為や戦争を起こしている厄介な宇宙人
被害を受けていたのは、ライラ星だけではなかった
宇宙には、善なる宇宙人と悪なる宇宙人が存在して、互いに主張し合い争いが絶えないこと
宇宙の平和のために、たくさんの星の種族で連合を組み、模索して活動していること
宇宙の始まりはひとつであり、全ては皆繋がっている、という話はライラ星の根源的思想と同じで、アーリンは感動して幸せな気持ちになった
故郷のライラ星は消滅したけれど、私は独りじゃない
こうしてまた、カークサスという仲間ができて、宇宙には平和を願う善なる宇宙人が星の数ほどいる
カークサスの情報によると、ライラ星から旅立った二隻の船は、無事に他の星へと降り立ったらしい
新しい地で、仲間たちも生きている
自分も、まだ存在している
小型船の仲間たちが、爆発時の強い放射能光線により消滅してしまったのはショックだったが、大勢のライラ星人たちを救うことができた
仲間たちを誇りに思う
彼らの想いを胸に、アーリンは宇宙の平和の実現を固く心に誓った