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第5話 自作の模型鉄道

自分の家は、この辺りではまあまあ広い家だ。


かつて、織物工場だった木造の建屋。

ノコギリ屋根の下が、自分の部屋。

だからこそ、かなりの大きさの鉄道模型のジオラマが創れたのだ。


元々、織物業や製糸業が盛んだったこの町には、かつての工場をリノベーションした店や住宅が多く、自分の家もその一つに過ぎない。祖父の代で織物工場は閉め、その祖父母も他界し、ノコギリ屋根の建屋だけがそのまま残っているだけだ。


そして、そんな町が好きだから、自作のジオラマの中でも、それを再現した部分はある。

だけど、このジオラマのテーマは銀河鉄道の夜の世界。


町の駅を出て少し、と言ってもすぐにカーブに入るが、そのカーブに入ってまもなくトンネルに入る。そのトンネルから先は、一部、自分のオリジナルの部分もあるが、銀河鉄道の夜の世界を出来る限り再現した物だ。


白鳥座の北十字の駅は、プリオシン海岸の河原に向かう引き込み線の分岐駅、鷲の駅は信号所。タイタニック号の沈没事故のシーンから、さそり座のあたりは秋の星座になっている等のオリジナルの部分も取り入れた自分の理想とする、銀河鉄道。


だけど、誰かに写真で見せたり、家に来た奴に見せたりしたらこんな事を言われる。


「蒸気機関車は居ないのか?」


と。


理由を言っても理解されない。


試しにイギリス製蒸気機関車3950「グリーンブリーズ」号がマッチ箱のような客車を牽かせる列車を嫌々ながら走らせたら、「銀河鉄道はこれだよ!」と言う反応。


一体どこの誰が、「銀河鉄道の夜の列車は蒸気機関車の牽引する列車でないといけない」と言う定義を決めたのだろう?


だからこそ、敢えて「銀河鉄道の夜」には登場しない、ペガスス座やみずがめ座と言った秋の星座の部分を取り入れたオリジナルの銀河鉄道にしてしまったのだ。


銀河鉄道の夜の、鷲の駅で、宮沢賢治の描いた「銀河鉄道」と、自分のオリジナルの銀河鉄道が分岐する形にし、宮沢賢治の描いた銀河鉄道の路線を「南十字サザンクロス線」と言う名前にし、こちらは非電化のためこれに乗り入れるため、蒸気機関車が町の駅の機関区に蒸気機関車が僅かにいると言う不本意な設定にしたのだ。


最も、非電化路線など、元からあるDD53ディーゼル機関車に加え、今日買って来たDD51ディーゼル機関車があれば何も嫌々ながら蒸気機関車を走らせる理由なんて無いのだが。


そして、蒸気機関車に気を取られているがもう一つ、この世界には電車や気動車の数が極端に少ないのだ。


走っている電車は当初、自分の住む町を走るいわゆるみかん電車のカラーリングを纏う電車だったのだが、ジオラマの雰囲気にそぐわず、別の急行型電車や旧型電車に置き換え、気動車も、一般型気動車キハ35系やキハ20系が数両。だが、これもジオラマの雰囲気に合わず、基本的に留置線や、扇形庫の中で寝ている。


しかし、銀河鉄道の夜の世界には蒸気機関車が居ないと言う理由から蒸気機関車を排除して、電車や気動車も雰囲気に合わないと排除するのはいささか極端な話しだと自分でも思う。

いや、極端と言うより矛盾。蒸気機関車の時は、「一体どこの誰が、「銀河鉄道の夜の列車は蒸気機関車の牽引する列車でないといけない」と言う定義を決めたのだ?国会で仕事もせずにアホ面こいて寝ているだけで大金が貰え、税金でタダ飯食って、キャバ嬢で遊んでる国会議員が決めたのか!?」とか言っておきながら、「電車や気動車は雰囲気に合わない。」と言う。

結局のところ、人それぞれの捉え方次第で、中には「銀河鉄道は気動車だ」「電車だ」と言う人だっているかもしれない。


考えてみれば「アルコールか電気で走る」なら、電車や気動車の可能性もあり、また、窓が開くと思われる描写や車内の様子からクロスシートの車両と見れば、特急型や通勤型は考え難いが、今では全く見なくなった急行型電車や急行型気動車ではないかとも言える。また、近郊型電車に関してはロングシートとクロスシートを組み合わせたセミクロスシートの車両だってある。


そうした車両ではないか?と言う考えを持つ人の主張を否定する権利は誰にも無い。


もちろん自分にも。


ただ、蒸気機関車に関しては、学校や周りの人の反応から、もはや押し付けのように感じてしまう。


確かにアルコールで走る蒸気機関車と言う説も否定は出来ないし、人の主張を否定する権利は無いから、蒸気機関車が走っていたとしても、文句は言えない。それがその人が捉えた、銀河鉄道の姿なのであれば。


結局のところ、この問題に正解は無いのだろう。


ただ一つ、肝心なのは、「銀河鉄道の夜の列車は蒸気機関車の牽引する列車でないといけない」と言うような、誰が決めたわけでも無い定義を、他人にまで押し付けないことだ。


押し付けられたら、こちらも押し付けなければならなくなるから。


今日のような事を幾度もされては、今に蒸気機関車自体を嫌いになってしまいそうだ。


蒸気機関車に罪は無いのに。


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