第16話 夜明けの風
ただひたすらに、DD51のヘッドライトの灯りが前方を照らす。
ようやっと、夜空が白み始めた。
「ピーッ」と、暗く寂し気な汽笛が夜明けの空の下に響く。
鈴の音を鳴らす踏切を通過。
速度制限の標識と勾配標を通過して、大きくカーブを描きながら、列車は脱線防止ガード付きの下り勾配。いわゆる、ループ線をゆっくりと進んで行き、ループ線の終端部でトンネルと小さな橋を渡った時、日が昇って周囲は朝の景色になった。
食堂車では、影法師の姿の給仕長や給仕役が、朝の営業開始に向けて用意を始める。
給仕役の彼女も目を覚まし、食堂車の給仕役用の寝台から身体を起こし、顔を洗って身なりを整えて、朝の仕事に向かう。
影法師の姿の給仕長も給仕役の皆も、彼女が昨夜、あの旅客とどうだったか聞く事もない。影法師の姿の給仕役達は、何も物を言わない。
彼女もそうだった。
昨夜の人の姿の旅客と話すまでは。
食堂車の厨房では、ちょうど仕込みが終わったところだ。
ーーーーーー
自分は目を開いた。
悪い夢を見たと思って、跳ね起きると身体が何かにぶつかった。
そして、周りを見るとそこは自分の家の部屋では無く、あのマッチ箱のように狭いオロネ25のA寝台個室だった。
(死んだのか。信じられないけど。)
と、自分は思う。とにかく、顔を洗うため、窓際の小さくて使い難いく、水がすぐ外に溢れる洗面台を使う。
そして、自分は本当に死んだのか確かめようとして、頭をどこかにぶつけてみたり、自分で自分の急所を殴って見るが、前者はちゃんと痛みを感じ、後者もまた痛みは感じた。つまり、夢ではなくこれが現実。
列車の窓の外は片田舎の景色。
昨夜見た車窓を思い出す。
(自分で創ったジオラマの世界ー。自分で自分の死後の世界を作ったのか。)
自分は死んだと言う実感が無い。
だけど、今の今までのことを思い出すと、転移転生が有力。そして、その原因として考えられることは、自身の死。
自分がこの列車に乗る直前、目の前が真っ暗になったと思ったら、一気に頭痛が襲って来たところへ吐き気、めまい、視力の障害、痙攣などが現れ、ジオラマのテーブルに倒れた。この一連の症状は、一酸化炭素中毒の症状。そして、自宅が放火された事により火災が発生したならば、一酸化炭素中毒になりうる。一酸化炭素中毒により、自分が死んだと言う可能性は大だ。
(どうすればいいー。死んだ?ならば自分はどうなるか。死んで、この世界に転移した自分はどうなるかー。)
自分は、狭苦しいA寝台個室の中でウロウロ考える。だけど、答えは見つからない。
ただ一つ、ヒントが貰えそうな場所に行ってみようと思った。
それは、食堂車だ。




