第1話 プロローグ
その鉄道から、蒸気機関車の姿が少なくなったのはつい最近のことらしい。
いや、この鉄道が創られた際も当初から、蒸気機関車は極小数。機関区に居るのは、貨客用のD51と入換兼貨物、及び南十字線の旅客列車用のイギリス製蒸気機関車3950「グリーンブリーズ」号。元からその鉄道には、蒸気機関車は居ないと言う理由からだ。
最近電化されたばかりと言う設定で、駅の機関区には、EF58や EF53と言った旅客列車用の電気機関車。EF15といった貨物列車用の電気機関車の姿が多い。
そして、その中に混じって、入換用ディーゼル機関車の姿がある。転車台と扇形庫を用いる機関区故に、扇形庫から電気機関車が出る際には、入換用の小型ディーゼル機関車の助けを借りる事もあるが、この鉄道の主力として、電気機関車は今日も活躍している。
どこかで橋の工事をするのか、ソ300がディーゼル機関車DD53に牽引されて留置線に入って来たのを尻目に、隣接する駅のホームでは、機関車をEF53からEF58に交換するマイネ40やオハユニ61で編成された夜行列車が、出発の用意をしている。
食堂車や一等展望車も連結した堂々たる夜行急行列車だ。
牽引するEF58が出区点検を終え、扇形庫から出て来る。
EF58は、特急列車から急行列車、普通列車に至るまで、旅客列車牽引の主力として活躍する電気機関車だ。
影法師の姿の機関士が、影法師の姿の誘導員の指示で、EF58を駅のホームに停車中の客車の元へ向かい、入換信号機に従って、隣接する単式・島式複合ホーム2面3線を持つ駅のホームに入線する。
その隣の留置線には、今日入ったばかりのピカピカの最新鋭、DD51ディーゼル機関車と24系寝台車が入線している。
10系寝台車の寝台列車とは比べ物にならない程ピカピカの24系寝台車を横目に、EF58の牽引する夜行列車は、発車を待つ。
対向列車の、EF15に牽引される荷物列車がやって来た。EF15は、電気機器などの多くがEF58と共通設計されていて、外見こそ異なるが、EF15とEF58は兄弟形式と言える存在だ。
EF15の後ろにはスニ30 が1両と車掌車のヨ3500と言う短い列車が駅のホームに着くと、EF58の牽引する夜行列車の方の出発信号機が進行を示すと、EF58の短い汽笛と共に、夜行列車は夕闇の駅を発車した。