第三話 カラーレンジャー 前編 4.動き(4)
* * *
クラスの文化祭の準備はこれから当日まで毎日続く。一先今日はキリのいい所まで終えると、それぞれ解散した。
僕も帰ろうと下駄箱へ行く。自分の下駄箱を開くと靴の上に折られた紙切れが載っていたのに直ぐ気がついた。
(早いな。)
見なくても、それが何であるかは予想がつく。周囲を見てからそっと紙を開いた。
“警告”
紙に書いてある文字はそれだけだった。文章にもなっていない。紙の裏にも何もなく、とりあえず靴を取り出した。すると自分の靴を持つ手に違和感を覚える。靴は冷たかった。靴を見ればびっしょりと濡れている。
(古典的。)
靴を濡らすなんて、いじめにしては古い手だ。そんな事を他人事のように思う。前回のように机の中ではなく下駄箱を選んだのは、今文化祭の為に、生徒達が放課後も教室に居る為だろう。西ノ宮さんに対して僕の方が圧倒的に嫌がらせが少ないのは、僕がまだ立候補していなかったからだと推測していた。そして立候補を決めたとたんこれだ。
だが、
(思ったより早かったな・・)
僕が先生に立候補すると言ったのは今朝のことだ。動くにしても早すぎる気がする。それにこの事はカラーレンジャーのメンバーと担任、顧問にしか話していない。メンバーには動きがあるまで誰にも言わないように打ち合わせしてある。ならば、担任か顧問の先生から犯人へこの事が伝わったことになる。
「・・・・。」
担任はまだクラスでも僕のことは話していなかった。あの担任なら誰かに立候補のことを話したか自然に訊くことは可能だろう。
(高橋先生にわざわざそんな質問するのは不自然か・・・。)
高橋先生が誰かに話すとしたら誰だろう。顧問なら生徒会の人間には話すかもしれないが・・。
(まずは明日担任に確認するか。)
その日はとりあえず、体育用の運動靴を履いて帰る事にした。