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第三話 カラーレンジャー 前編 4.動き(3)
(あ~ぁ。やっぱりか。)
相馬は緑川狙いだった訳だ。そんなに空気読めない奴じゃないし、これ以上緑川にアプローチはしてこないだろうが。
(問題は・・・)
桃井はちらりと横を見る。
俺の隣では黒沢が看板に釘を打っている。だが、緑川と相馬が話している時にはその手が止まっていた。教室の廊下側で作業している俺の耳には緑川達の会話が聞こえていた。当然、それは黒沢の耳にも届いている筈だ。
黒沢は何を考えているのかほとんど表情に出ない。だが、今黒沢を取り巻く空気が変わった気がするのは気のせいではないだろう。
(盗られたくなければさっさと動けよな。)
人の恋愛事に口を挟むような真似はしたくないが、こいつらを見ているとじれったくなってくる。
(全く・・)
なんで俺が溜息つかなかきゃならないんだよ。
二人に聞こえないように、俺はそう一人で毒づいた。