第一話 仲間 4.高校生(2)
(いつの間にそんな仲良くなったんだ?)
青山は緑川と黒沢のやりとりを見て固まった。
黒沢が人に何かを貸すという行為もそうだが、何より緑川がその本を読みたい事を知っていることに驚きを覚えた。
いつ二人はそんな話をしたのだろうか。もしかしたら、先日の居残りの時?
あの時は思いもしなかったが、部活動をしていない二人はもしかしたら一緒に帰ったのかもしれない。
(いやいや、本の貸し借りぐらい・・)
そうだ。それぐらい誰だってする。
しかし問題は緑川ではなく、黒沢の方だった。緑川は誰とだってそれなりに知った仲なら物を貸すぐらいのことはするだろう。
だが、俺も含め周囲の認識では黒沢は貸し借りするぐらい仲のいい奴なんてそれ程居ないんじゃないだろうか。
つまり、黒沢にとって緑川は他の女子より特別・・・・。
(・・・考え過ぎか?)
チラリと黒沢の横顔を見る。
黒沢は口数は少ないが、誰もが無視できないような存在感があった。最近分かってきたのだが、こちらから話しかければちゃんと答えるし、勉強だってスポーツだってそれなりに出来る。責任感はあるし、高校生にしては周りの生徒達よりも随分大人だと思う。
正直な所知り合ってまだ間もないが、俺だって一目置いていた。
俺はただ、黒沢が男として緑川に興味を抱いていないことを祈るしかなかった。