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第二話 恋愛 4.夏休み(4)

 * * *


 平日毎日会っていたのに、夏休みに入ってそれがなくなると顔が見たくなる。けど、彼女に前に話したバイト先に誘う気にはなれない。店に来れば外人だらけだし、あいつらを連れてきたとしても他の男と一緒の所を好んで見たくはない。全員で来るなら問題ないが、誰か一人だけ連れてきたりしたら自滅するようなものだ。


 先日の花火の時、青山と緑川の二人が川辺で話をしていた時の光景が蘇る。あの時、俺は緑川が一人で川辺に歩いていく所から見ていた。川を覗き込んで転んで、緑川の所へ行こうとしたら先に青山が立ち上がった。桃井と赤木は二人が手を繋いでいると騒いでいたが、転んだ緑川を起こす為に手を差し伸べた延長なのも分かってる。でも、立ち上がった後も手を握ったままだったのは確かだ。

 以前聞いた同中の男の事もあるのに、青山もライバルとなれば諦めるしかないのだろうか。自分を好きになってくれない相手をいつまでも気にしていてもしょうがないとは思う。


 携帯を見る。何か前進する為には自分から連絡をすればいい。けど、理由は?急に誘って変に思われたら?

 そんなことばかり考えていて結局手は動かない。






「Kurosawa! Girl will be calling you.」

「は?Girl? Do alone?」

「Yes. her of you?」


 昼のバイト中、女が俺を呼んでいると聞いて驚く。

 この店を知っている女の知り合いなんて緑川だけだ。あれほど一人で来てはいけないと言ったのに、どうしたんだ?

 俺は急いでキッチンからフロアへ出ると、そこに居たのは緑川ではなかった。


「あ、黒沢君。」

「・・早瀬さん。なんでこの店に?」

「ごめんね、バイト中に。外から黒沢君が見えたから入ってきちゃった。そうしたらね、さっきの外人のスタッフさんに話しかけられたから、黒沢君のいますかって訊いてみたの。」

「あ、・・そう。悪いんだけど、ここ女の人一人で来るのはあんまり勧められないから、できれば帰った方がいいよ。」

「えー、せっかく会えたのにぃ。黒沢君がお店にいれば大丈夫でしょ?」


 溜め息が出そうになるのをなんとか堪える。どうしたものか。


「今日は何時までバイトなの?」

「18時。」

「じゃ、それまで待ってよっかな。」


 居座る気満々で彼女はメニューを見始めた。何を言ってもすぐに帰ってくれそうにはない。だが、周りを見ると彼女の事をチラチラ見ている奴等が何人かいた。多分最初に彼女に声を掛けたスタッフもそのつもりだったのだろう。自分で居座るのなら自己責任かもしれないが、知り合いである以上放っておく訳にも行かない。


「この店外人の出入りが多いんだ。ナンパも多いから気をつけて。」

「え?心配してくれるの?ありがとう。」


 彼女はとびっきりの笑顔を見せるが、俺の言いたい事はちっとも伝わっていない。

 仕方なく、店の奥に戻るとロッカールームに行って自分の荷物から携帯を取り出す。この店の場所と、直ぐに来て欲しい旨をメールに打ち込んで緑川以外のメンバーに送った。ついでに来てくれれば奢る、と一言つけて。

 誰か、空いてる奴が居ればいいんだが。

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