第一話 仲間 8.体育祭(5)
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今日の体育祭の片付けは全て終わり、教室に集まった僕達はホームルームで担任の先生から労いの言葉と、冷えたジュースが配られた。
ホームルームが終われば皆それぞれに教室を出る。
クラスの打ち上げは後日にする予定だから、疲れていることだし今日は皆真っ直ぐ家に帰るのだろう。
クラス委員の仕事があったせいで、自分の荷物の片づけが済んでいなかった僕は、それをしてから少し皆に遅れて教室を出る。
その頃には廊下も人がまばらだった。
「白田。」
呼ばれて振り返る。そこに居たのは緑川だった。
「何?」
僕に声をかけた緑川の声があまりに明るかったから、最初は何の事か気付かなかった。
「私、もうこれからあんた達と口きかないって、タンカ切って来ちゃった。」
緑川の顔を見る。言葉の意味を掴むのに時間が掛かった。
「え?・・・それって、あの時?」
「あははっ。やっぱ気付いてたんだ。そういう事だから、皆によろしく言っておいて。」
緑川は僕を追い越してさっさと下駄箱の方へ行ってしまう。俺は不覚にも、彼女を引き留めるのに最適な言葉が思い浮かばなかった。
「そんなのあいつらが納得する訳ないだろ!」
緑川は笑って振り返り、柄にもなく大声を上げた僕にひらひらと右手を振っただけだった。僕はそれを見ている事しか出来ない。
何をやっているんだ、僕は。