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第一話 仲間 2.勉強(2)

 * * *


 グラウンドから見て2階の右から2番目の教室。

 つまり自分の教室を見上げた。そこには窓際に座る二人の生徒の姿が見える。

 今日担任に数学の課題を与えられた緑川と、彼女に数学を教えるよう命令された黒沢だ。


 練習の合間の10分休憩中、俺は気になってとうとう彼らの様子を見てしまった。

 内心では気にしないようにしていたが、思うようにはいかずに練習に身が入らない。ならば休憩中なら良いだろうと自分に言い聞かせて、二人の様子を伺った。

 二人は、いや緑川は笑っていた。

 黒沢は人前でそれほど笑う奴ではないし、実際に笑った所をまださほど見たことが無い。この高校に入ってまだ1ヶ月程しか経っていないのだから、仕方の無いことかもしれないが。

 けど緑川は笑っている。それが俺にとっては大きな意味があった。

 確かに緑川とも知り合ってからそれ程経っていない。それなのに本当に好きなのかと聞かれたら正直分からない。

 けど、


(気になるんだからしょうがないじゃないか。)


 心の中で誰ともなしに言い訳する。

 緑川はなんというか、今まで会ったどの女子とも違っていた。

 俺から見れば女子って言うのはなんとなく分類できるのだ。

 おしゃれに積極的で明るく異性にも積極的なグループ。それとなくおとなしい地味なグループという具合に。

 だけど緑川は違った。どこの誰とも違うのだ。緑川に似ている女子なんてどこにも居ない。沢山いる女子生徒の中で何故か緑川だけが目立って見える。



 もう一度教室を見上げて、楽しそうに話をしている二人を再確認して溜息をついた。

 そしてグラウンドの反対側で楽しそうにサッカーをしている翔に目を向ける。

 おとなしく翔があの教室で勉強してくれていれば、俺だって緑川と話ができたかもしれないのに。

 けど、あいつが大人しく勉強しない事なんて十分過ぎる程分かっている。


(俺の気持ちに気付いてるんだったら、もっと気を利かせろよな。)


 心の中で毒ついて、マネージャーが手渡してくれたスポーツドリンクに口をつけた。走り込みで熱くなった体に、冷たいドリンクが染みるように体の中に入っていく。


(黒沢が緑川に興味なさそうなのが救いかもな。)


 休憩終了のホイッスルが鳴る。

 「次はパス練」というキャプテンの声に返事をして、グラウンドから体育館に練習の場所を移した。

 最後にもう一度二人を見たが、もう二人は教室に居なかった。

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