第一話 仲間 5.動物園(3)
翌日。教室に入り席にカバンを置くと、私は真っ先に詩織の元へ行って声をかけた。
「詩織!」
「あ、おはよう。」
「ねぇ、今週末空いてる?」
「日曜なら。どうしたの?」
「えーと、赤木と青山とさ、一緒に動物園行こうって言ってるんだけど、行かない?」
「え!本当に?」
「うん。昨日赤木と話しただけだから、まだ青山も来るか分からないけど。とりあえずどう?」
「行く!」
「良かった。赤木が動物園行きたいって言ってたんだけど、他にどこか希望ある?」
「ううん。いいよ。動物園で。近い所だと上野?」
「そうだね。」
「ふふっ。さっそく約束守ってくれるなんて、嬉しい!緑ちゃん、ありがとう。」
「いーえ。」
* * *
今日の主役達を押しのけて、真っ先にはしゃいでいるのは赤木だ。行き先を決める時に迷わず動物園を挙げた訳が分かる。単純に自分が行きたかったに違いない。
私も人のことは言えずに、赤木と一緒になってはしゃいでいるんだけど。動物園なんて久しぶりだし、とそんな自分に言い訳をする。
青山と詩織は私達の後からゆっくり動物を見ている。
今日の詩織は白のブラウスにシフォンのスカート。髪は花飾りつきのゴムで横にまとめていた。
彼女の可愛いファッションに、今日スカートをはいてこなくて良かったと思った。彼女の可愛らしさが目立つためでもあったが、比べられるもちょっと嫌だった。
赤木や青山がそんなことを気にするとは思えないけど、自分で自分のことを比べるのが嫌だったのだ。
赤木が嬉しそうに叫ぶ声に、私はそちらに目を向ける。
「フラミンゴ!!」
「うわー、色キレー。足長ー!!」
「なんであの足で大きな体を支えられるんだろうな。」
「すごいバランス感覚だよね。触りたいなー。あ、赤木前乗り出しすぎ!」
「触れるかもしれないじゃん。」
「ばか。危ないって。ふふっ。」
「何?」
「ガキ。」
「そっちもな。俺と同じレベルではしゃいでるくせに。」
「うるさいな。」
ちらりと後ろを振り返る。こちらに歩いてくる二人はどこからみてもカップルにしか見えない。二人の楽しそうな様子に安心する。
「上手くいってるみたい。」
「・・・・。」
(うーん。青山に後で殴られそうだな。)
でも、正直自分のペースについてきてくれる緑川と一緒に回れるのは楽しい。
(ま、広樹がついてこないのが悪いんだし。いいや。)
「赤木!トラがいる!!」
「まじで!!」