第一話 仲間 5.動物園(2)
「緑川ってさ、黒沢と仲いーよな。」
「そう?」
広樹の為ってワケじゃないけど、単純に最近の二人の様子が気になって、赤木は緑川にそう聞いてみた。
「黒沢って、なんか面白いんだよね。本人が聞いたら絶対怒るだろうけど。」
誰に関しても無関心そうに見える黒沢が、誰かに対して怒ること事態すげーと思うんだけど。それにあの無愛想を面白いってどういうことだろう。
すると緑川がいつもの顔で予想外の言葉を口にした。
「あ、赤木。青山って彼女とかいるの?」
「へ?・・気になる?」
あれ?俺は黒沢と緑川が怪しいと思ってたんだけど、これはひょっとして・・
「うーん、言わないで欲しいんだけどさ。詩織がね、青山のこと気になるから一度一緒に遊びに行けるようにして欲しいって。」
期待はすぐに崩れ去った。その後で俺はちょっと頭をかしげる。
「あー・・、そういうことね。しおりって誰だっけ?」
「あ、分かんない?花田詩織。」
「緑川と一緒にいる奴か。」
「そう。」
花田って、ちょっと派手目の綺麗な女子だったっけ。よく男子が可愛いとか話してるのを聞く。気が強そうだが、確かに男ウケしそうな感じだった。
「仲介頼まれたんだ?」
「そうなの。青山のってくれるかな?」
「どうだろ。いきなり二人だけじゃ嫌がるかもな。べつに広樹は花田と仲良いわけじゃないし。」
「そっかぁ。どうしようかなー。」
そこで俺は素晴らしい機転を利かせた。
「んじゃあさ。俺と緑川入れて四人でどっか行こうぜ。」
「あ、成る程。助かる。どこ行こうか?」
よし。食いついた。
緑川の質問に、俺は真っ先に頭に思い浮かんだ場所を口にした。
「動物園行きたい!」
「行きたーい!」
「今週末行ける?土日のどっちか。」
「どっちでも。あ、しおりに聞いてみるよ。」
「俺も広樹に聞いてみるな。」
緑川と遊びに行くって行ったら絶対来るだろうけどな。
俺が緑川と一緒に遊べるようにしたって言って、マック奢らせよう。
俺は広樹がどんな反応するのか想像しながら、早く言いたくて堪らなくなっていた。
「は?なんで?」
「だから、俺緑川と今週末遊びに行くから。」
広樹は予想通りのリアクションを返してくる。ここで笑ったら駄目だ、と俺は平静を装った。
そこに広樹はなんとも言えない顔で質問を重ねた。
「だから何で?」
「なんでってなんだよ。」
「・・二人で行くのか?」
「そう。動物園。一緒に来るか?」
「・・・・・。いいのか?」
少し期待に胸を膨らます広樹の表情に、俺は心の中だけでガッツポーズを取る。
「いいんじゃね?もしかしたら緑川も友達連れてくるかもって言ってたし。」
「・・じゃあ、行く。」
俺から目線を外して、少しトーンを押さえた声を出した広樹の態度に、俺は我慢ができずに声を漏らした。
「んふっふっふっふっ。」
「なんだよ。気持ち悪りぃな。」
「嬉しいだろ?」
「・・・・お前なぁ。」
「なんだよ。嬉しくないのか?」
「そんなことより、なんでお前が緑川と遊びに行くって話になったんだよ!」
「いーじゃん別に。因みに緑川には最初から広樹も行くって言ってあるから。」
「マジで?」
広樹の顔が赤くなる。ついでに隠しているが顔が嬉しそうだ。
「まじで。俺に感謝しろよ。」
「する。」
「んじゃ、マックな。」
「は?」
「奢ってくれるだろ?」
「・・・・今回だけだからな。」
「やりぃ!」
今度は心の中だけでなく、俺は大きくガッツポーズをとった。