猫の行く先は
チリン
鈴の音が聞こえた。
みゃぁー
そのあとすぐ、小さな猫の鳴き声も聞こえてきた。
カサカサと音がしたと思ったら先ほどの猫が正体を現した。どこかで見覚えのある茶色はちわれの猫、毛並みがきれいに整っていて、首元には紫色のリボンがついていて誰かの飼い猫というのが見て取れた。
みゃぁ
まるで「ついてこい」とでもいうように鳴いたその八割れ猫は草原の中に紛れていった。そんな確信もないのに私はその八割れ猫に誘われてついていくことにした。
八割れ猫が入っていった草原を抜けるとそこにはたくさんの猫がいた。真っ白な毛並みを持つ猫や、靴下をはいている猫などがいた。だけどその猫たちは八割れ猫と違いリボンや首輪などをつけておらず、耳の先が不妊治療をされていることを示す桜型になっておりどこかの地域猫なのが分かった。
ほかの猫たちを見ているあいだにいつの間にか私が追っかけてきた茶白の八割れ猫はいなくなっていた。
にゃ
鳴き声のしたほうに目を向けると、さっきの八割れ猫とは違う茶虎の猫がいた。茶虎猫は自分の前足で私の足をちょんちょん突ついている。この猫もやはり「僕についてきて」と言っているようだった。
茶虎の猫について行くと辿り着いたのは花が沢山育っていてカラフルな場所だった。
その中でも一際紫色のラベンダーが目立つ場所があった。
そのラベンダーの中心に立っていたのは黒に白のメッシュが入っていて、街中ではいい意味で人目を引きそうな風貌の男がいた。その男は私と目が合うと
「やぁ。猫好きのお姉さん。やっと君を見つけることができたよ。」
と私に声をかけてきた。だけど私はそんな男の容姿や声には見覚えも、聞き覚えもなくまた、「猫好き」という身内や親友など親しい人にしか教えていない情報を知っていることからストーカーかなんかかと考えたが、どれほど記憶を遡ってもおtこのような特徴的な風貌の男とすれ違ったこともなく頭を悩ませた。
みゃぁ
茶虎猫の元まで連れてきた紫異色のリボンをつけたハチワレ猫の鳴き声が聞こえた。
鳴き声がきっこえた方に目を向けると先ほどの男はおらず、いたのは紫
リボンをつけたハチワレ猫だった。
私が猫の方に向けた目と猫の目が合うと途端に猫は人の姿になり私に声をかけてきた。
「我がどちら様かわかっていいただけたかね?」
「わかりましたがなぜ私の元に?」
猫が人間になることに違和感を持つことはなかった。
何かと私は昔からおかしかったようで近所のトイプードルが、周りにはちゃんと犬に見えているのに私には幼いふわふわの髪を持つ女の子に見えたり、生き物以外にもぬいぐるみが本当にお喋りしているのを聞いたりおかしいことがなん度もあった。
だから私は目の前の紫リボンのハチワレ猫が人間になったことに驚くことは何一つなかった。
「おや、覚えていないのかい?そなたがこの紫リボンをくれたのではないか。」
確かに昔、小学生の頃ボロボロの子猫の足元に紫のリボンをあげた事はあるが、こんなに綺麗な猫にあげた記憶はないということを彼に話すと
「確かに我はその時の子猫じゃ。我はあの時捨て猫でなぁ。自分でご飯を用意する術もなかったのじゃ。だけどそなたにあった後人間に拾われてなぁ。だけどこのリボンをそなたにどうしてもお返ししたくずっと探していたんだ。」
そう言った目の前の彼は自分の首元からリボンを外し、私の腕を取り、私の腕に結んだ。
その後彼は猫の姿に戻ったと思ったらその猫はその場に倒れていて、もう息をしていなかった。
多分自分が死んでしまうのをわかっていて私にこのリボンを返しに来たのだと思う。
「ハチー?」
若い男の声が聞こえた。
ハチという名を呼ぶ若い男の風貌は先ほどまで私の前にいた男にどこか似ていた。
若い男は私の足元で倒れているハチワレ猫を見つけると急いで駆け寄ってきて、私の腕を見ると
「君は……もしかしてハチワレ猫に紫リボンをあげた子?」
「そうですけど」
そういう会話をすると彼は納得した表情をして私に頭を下げてきた。
「ありがとう。ずっとそのハチワレ猫はリボンの持ち主を探していたんだ。彼は寿命が近いにもかかわらず持ち主を探すまでずっと死ねないと言っていたよ。ありがとう。」
そう言って彼は先来た道を戻っていった。ハチワレ猫をその場に置いて行ったのでその場に穴を掘って、木を立てて簡易的なお墓を作ってから私もその場を去った。
ハチワレ猫の飼い主と思われる若い彼が猫を置いて行った理由にもなんとなく気がついている。
多分彼は
生きていなかったんだろうな。
これはある春に体験した不思議なお話し。
いかがでしたでしょうか。
SSとしていつか書きたいと思っていたお話でした。少し非日常を過ごした少女の話。
今年の小説はこれで描き納めとなります。来年もよろしくお願いします!