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第七話 泣き虫


 チカチカと、さっきの爆球が原因で、まだ付近に火が少し残っている。


「先生呼んだ方がいいのかな……?」


 俺がポシェットの中から、使えるアイテムがないか探していると、鳥の羽のような模様が入った球体を見つけた。


「なになに? これは、風球。どうやら球という名前がつくアイテムは比較的簡単な素材で錬金できるようだな……」


 コミヤちゃんの記憶を確認しつつ、さっきは爆球の火力を完全になめていたので、スキルを確認する。


「竜巻の奥義、防御力ダウン(大)、広範囲攻撃(中)、斬撃……こ、コミヤちゃんは一体何と戦う気だったんだ……? とてつもなく穏やかじゃない……」


 俺は、未だ火が残っている木々から少し離れて、風球を振りかぶる。


「誰もいませんね〜⁉︎ 行きますよ〜!」


 ポンっと投げると、風球が地面についた瞬間に、三日月状の風刃が渦巻き、火もろとも森林伐採! ゴトーン! と巨大な木の幹が次々と滑り落ちていく。


「お、怒られないよね……?」


 こんなアイテムを気軽に使っていたら、森の生態系が破壊されてしまうぞ!

 コミヤちゃんが震えていると、背後から声をかけられた。


「あ、あなた!」

「わひゃっ!」


 ガクブル。恐る恐る振り向くと、そこには木の幹に半分隠れた、黒髪美少女が立っていた。切長の瞳をしていて、お嬢様っぽい衣装の上に黒外套を羽織っている。

 って、お隣の席の子だ。


 彼女はジト目でこちらを見ながら訊ねてくる。


「い、今のアイテムはなんだ! あんなものどこで手に入れた!」

「ど、どこでというか、コミヤちゃんが錬金したんですけど〜」

「コミヤちゃんとは誰だ!」

「あ、おれ……わたしです」

「あなたは自分のことをちゃんづけで呼ぶのか!」

「ひえー、スミマセンスミマセン!」


 彼女、完全に涙目で怯えきっている。

 どうしようか……?


「聞きたい! さっきのドコーン! バヒューン! を自分の手で錬金したのは、本当か!」

「え、爆球と風球のこと?」

「そ、そんなの知っている! あなたは天才なの? あんなアイテム、わたし見たことがない! 噂に聞く高難易度のダンジョンで使うようなすんごいアイテムだった! 本当に自分の手で作ったのか!」

「え、えっと、はい」

「しゅ、しゅごい……」


 あの、この子かわいいんですけど。

 それから、彼女はジリジリと近づいてくる。


「わ、わたし、ものすんごーい! 錬金術師になりたいんだ。だから、その、できたら友ダチに……、錬金術のことを教えてほしい! わ、わたし、錬金術がうまくできなくて、……グスッ。だ、だから、わたしにものすんごい錬金術のことを教えてほちい……。えぇええん……」

「わ、ちょっと! なんで泣くの! ほら、頭撫でてあげるからーっ!」


 ほんと、この年頃の女の子のことはよくわからん。

 それにしても、この子はずっと不器用な自分について悩んでいたようだ。力になれたらいいけれど。


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