第五話 実習
王立錬金学園。それがクロネ・コミヤの通っている学校の名前だ。
この学校では、国で唯一錬金術師の国家資格を手に入れることができる。
入学も困難だし、まあ、資格を入手して卒業することもなかなか困難だ。
そんな学校を、クロネ・コミヤは一か月半も休んでしまっている。他の生徒よりもかなり遅れを取っているだろう。
赤いワンピースの上に黒外套を羽織った小柄な美少女が校門を見上げているところを、学校についた生徒たちは興味深そうに見ている。コミヤちゃん、かわいいからな〜。
俺は校門から、学園の中に入る。
この学校では、錬金術以外のことも学ぶことができる。サークルだってある。自分が錬金術師に向いていないと悟った生徒たちは、そちらに励むことになる。なにせ、錬金術師は競争率がめちゃ高いからだ。
王立錬金学園は入学することさえ難しいので、錬金術以外の道も拓けている。
俺は博物館みたいな昇降口を通ると、自分の教室に入った。中にいた生徒たちは、「あの子は……!」「入学早々不登校になった美少女……⁉︎」みたいな表情でこちらを見ている。気にしちゃダメだよね。
とりあえず、記憶の中にある席につくと、俺はババナをバッグから取り出して、食べ始めた。
すると、前の出入り口から一人の美少女が入ってくる。お嬢様みたいな雰囲気で、黒髪だ。瞳はキリッとしていて、背はコミヤちゃんと同じくらいで小柄だ。
彼女は隣の席に座ると、教科書を取り出してノートを開く。他の生徒たちが談笑している中、さっそく自習を始めた。
まじめな子なんだな〜。
俺がババナを小さなお口で食べながらそちらを見ていると、切長の瞳がこちらを向く。
すると、彼女はプイッとそっぽを向いた。
……ツンデレなのかな?
しばらくして、この間家に来た深い青緑の髪色をした眼鏡美人さんが教室に入ってきた。
「みなさん、おはようございます〜。早速、今日は錬金の実習を行います。錬金素材は裏山から採ってきてもらいます。スライムも出てきますので気をつけてください。中にはコボルトもいます。皆さんのレベルだと戦って勝つのは難しいと思うので、遭遇したら逃げる訓練をしてもらいます。パーティーを組んでもいいですよ。ただ、パーティーを作るとパーティーの難しさを体感すると思うので、自分に合った形で実習を開始してください。今日錬金してもらうのは品質75以上の薬球です。はい、それではがんばってください」
矢継ぎ早にいうと、学園の教師は教室を出ていってしまう。ひえー、あの人学校ではこんな感じなんだ。恐らく、実習の内容を汲み取るのも授業の一環なのだろう。パーティーを作ってもいいと言われていたけれど、コミヤちゃん腕っぷしはぜんぜんだからなー。
お隣を見ると、黒髪のお嬢様が石像のようになっている。
俺は困惑しつつも声をかけた。
「おーい、君、大丈夫?」
「……はっ! だ、大丈夫に決まってるじゃん。い、行かなきゃ……」
黒髪のお嬢様はいち早く裏山に向かってしまった。
「大丈夫かな〜」
同級生たちも準備を整えながら、パーティーを組む者は組んで、裏山に向かっていく。俺もパーティーに入れてもらおうか迷ったが、とりあえず自由にやらせてもらおう。コミヤちゃんには知識があるし、と気合を入れて、席を立った。




