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第三話 甘卵焼き

 

『一大事! こんな形で生徒が豹変するところは初めて見ました! だって、ついこの間来た時は「家の周りに育っている花の蜜を味わう時だけ生きてるって感じがするんです……♡」なんて可愛らしい妖精さんみたいなことを喋っていたのに! あわやあわや……!』


 という言葉を残すと、学園の教師は『無理しないでくださいね。でも、約束ですからね……!』と俺ことクロネ・コミヤの手をギュッ握って、小屋から出ていった。


 俺は寝巻き姿の自分のぺったんこなお腹に手を当てて、呟く。


「腹、減ったな……」


 たしか、さっき教師はコミヤのことを『家の周りに育っている花の蜜を味わう可愛らしい妖精さん』と表現していた。


 今なら、コミヤの気持ちがわかる。


 花の蜜でもいいから養分を摂取したい!


 俺は小屋の外に出る。

 どうやら、小高い丘の上にあったようで、草原が揺れていた。夜風、寒い。

 小屋の周囲には、確かに花が咲いていた。


「どれどれ……」


 さすがは錬金術師見習いといったところか。花々を見ただけで、その品質が理解できた。


「メイフラワー。どうやら蜜を吸えそうだな……」


 しかし、これだけではどうにもさみしい感じがするし、クロネ・コミヤは錬金術師見習いだ。恐らく、このメイフラワーと他のアイテムを錬金して、モグモグと食していた可能性が高い。


 少し家の周囲を探索すると、切り株の上に卵を見つけた。手に取って確認する。


「ミワトリの卵。これだ」


 早速、メイフラワーとミワトリの卵を家の中に持ち帰って、錬金釜の中に入れた。


 錬金術のすごいところは、スキルをつけられることだ。

 普通に調理してしまってもいいが、面倒だし、素材についていたスキルが崩れてしまう可能性もある。新しいスキルを生み出すこともできない。

 メイフラワーとミワトリの卵にはスキルがついていないようだが、錬金釜に魔力を流して、スキルを生み出せないか感覚的に調べる。

 錬金術は、素材にしたアイテムの形状や性質に依存することが多い。中には素材とは全くちがう形のものを錬成することもあるのだが、今回は無形物の卵の黄身の形状に依存したものを錬成するつもりだ。


 ま、要するに錬金術師とは手間を省き、スキルを加えたアイテムを錬成する者のことだ。省ける手間の数は、連勤釜に流した魔力量で決まり、付与できるスキルは錬金術師の器用さにかかっている。


 どうやら、クロネ・コミヤは才能があるようで、【スキル:栄養満点】がついた甘卵の素を簡単に作ることができた。


「自分の思い描いた通りのアイテムを生み出すなんて、すごいじゃん! コミヤちゃん天才」


 たぶん、マッチで火を点けて甘卵の素と錬金すると、錬金素材の性質に依存して、甘卵焼きを作ることができると思うのだけど、台所があるのでそこへ魔力を流してフライパンで焼いた。新しくスキルはつかないが、これはこれで楽しい。

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