第一話 夢の中の少女
夢の中で、俺はとある女の子の一生を見ていた。
両親から愛されて育った彼女は、十二歳になると錬金術師になるため、大都市に引っ越して一人暮らしを始めた。
故郷では、家族や友人、優しい大人たちに囲まれて、伸び伸びと生活していた。
けれども、彼女は引っ越した先で自分が一人では何もできない人間なのだと痛感した。
錬金術師の育成を専門とする学園には、一か月通ったが友達はできなかった。
故郷の村には一緒に育った家族みたいな友人たちがいた。
けれども、自分が友達になれたのは、生まれた頃から一緒だったから。そして、自分の小さな世界の中に敵対者がいなかったからだと知った。
村の中では一番勉強ができた。体を動かすことだって大好きだった。
しかし大都市では、誰とも馴染むことができず、その内学園も休みがちになった。
錬金術師になることを目標にしたら、家族も、友人も、大人たちも、大変喜んでくれた。村から有名人が出てしまうかもしれない、と冗談半分に語って応援してくれた。
村を出る日、みんな寂しがっていた。
自分は世界一幸せ者だ、と本気で思っていた。
しかし、今の自分のそばには誰もいない。
教師からは、『これ以上休んだら学校にいられなくなる。せっかく錬金術師の学校に入学できたんだから、勇気を出して』と何度も説得された。
彼女には錬金術師になるという夢があった。
誰かに憧れていたわけではなく、ただ錬金術師という職業のことを知った瞬間、自分はこの道を歩んでいくんだ、と理解したような気がしていた。
錬金術師は国家資格。
だから、専門の学校を卒業しよう。
……もう、後がない。
彼女は、入学する時に購入した錬金釜の中を覗き込んでいる。
そして――。
「ハッ!」
俺はその夢から目覚めて、手を見て、足を見て、むにっと胸を押さえた。
「ぱ、パイがある……」
なぜだ。
狭い入れ物の中にいた。
上から夕陽が差し込んでいる。
「よいしょ……」
出てみると、小綺麗な小屋の中みたいな場所へ出た。
どうやら、自分は大きな釜の中にいたようだ。
「これ、錬金釜……⁉︎」
なぜか、錬金術についての知識がある。
姿見があったので、見ると、十代前半の美少女が寝巻き姿で立っていた。
「夢の中の……女の子になってる……⁉︎」