第11話 勧誘
5人のオカルト研究部員が朝の通学路を歩いている。
いつもよりもちょっと早い時間帯だ。
「みんな、今日がなんの日か、わかってるわね」
ゆうに3メートルは超えている、白い布に包まれた巨大な荷物を背負ったルリが、真面目な表情で問いかけた。
魔王以外の3人が頷く。
「なんだ? なにかあるのか?」
「えぇ、1年で最も大事な日と言っても過言ではないわ」
魔王は顎に手を当て、思案気な表情を浮かべる。
「ん~? 1年で最も大事な日か……脱皮でもするのか?」
「するわけないでしょ! 気持ち悪いな!」
「今日は……新入生勧誘の日よ!」
コメディ高校の巨大な正門をくぐると、校舎まで1直線に桜並木が続いている。
その距離、実に1キロメートル。
ここが本日の戦場である。
「わぁ~、みんな気合入ってるね~」
道の両脇では、さまざまな部活の部員たちが準備のために慌ただしくしている。
「あっ、あちらにソフトボール部の方たちがいらっしゃいますね」
少し歩いていくと、道の一角にユニフォーム姿のソフトボール部員たちが集まっていた。
「シゲミ、おはよう」
「おはよう、グッモーニン。オカリナ研究部のエブリワン」
「キャプテン、オカルト研究部のみなさんです」
「やっとうちに入部する気になったのね。あっ、入部のあれ持ってきて。入部届とお仕着せ」
「ちょっと待って、シゲミ。私たちは――」
「大丈夫、大丈夫。みんなキラッとね、持ってる。光るものをね。練習すればすぐに1人前の野球バカになれるよ」
サッ、パッ、ヒュッなどと言いながら素振りのジェスチャーをするシゲミ。
「ソフトボールです、キャプテン」
「私たちは挨拶に来ただけなのよ。それじゃあね、シゲミ」
「あら、そうなの? 残念ね。また今度来てね、助っ人に。うちは外国人でもウェルカムだからね」
5人は逃げるようにその場から離れていった。
「さ、この辺りに陣取りましょう」
ルリはそう言うと、荷物を地面に降ろした。
「やけに大きい荷物だな。なにが入ってるのだ?」
「あとでわかるわ。それじゃあちょっと教室に行って着替えてくるから。魔王、荷物ここで見張っててくれる?」
「まぁ、よかろう」
「私も教室行くよ。着替えないと」
「あっ、私もご一緒いたします」
「あたしはここで待ってるよ~。行ってらっしゃ~い」
ルリとミツコ、レイの3人が校舎へ向かい、魔王とココがその場に残って荷物番をすることになった。
「お前は着替えなくてもよいのか? ココよ」
「あたしはもうこの下に着てるからいいの~」
ココは魔法使いが着ているような、全身を覆い隠すローブを羽織っている。
その裾は地面まで達していてぼろぼろだ。
「ふむ。なにをするのか知らんが、お手並み拝見といこうか」
「だから、新入生勧誘だって~」
「意味がわからん。したければすればよいではないか」
「堂々と勧誘できるのは今日だけって決まってるの~。魔王も勧誘するんだからね~」
「……なんだと?」
「魔王も勧誘す~る~の」
「ふざけたことを。我が勧誘されることはあっても、勧誘するなどということができるはずがない。このオカルト研究部とやらにいてやっているだけで感謝してほしいものだ」
「あ~ぁ、知らないよ~? ミッちゃんに聞かれたら怒られるよ~? あはははは」
「フンッ、ミツコがなんだというのだ。我には関係ないわ」
15分後。
「あっ、みんな帰ってきた~。お~~~~い」
着物に着替えたルリを先頭に、ナース姿のミツコと、白いシーツを頭からかぶって全身を覆い隠したレイが戻ってきた。
「ミっちゃん! 魔王がね~んぐっ」
魔王が慌ててココの口を押さえた。
「なによ、どうしたの?」
「どうもしない。我も今日という日が来るのを心待ちにしていたのだ。血沸き肉躍るとはまさにこのこと」
「あんた、今日なんの日か知らなかったじゃん」
「それよりも……」
魔王は、着替えた3人を怪訝そうな顔で見ている。
「日本人形もナースも意味がわからんが、お前が1番わからんぞ」
全身を隠している白いシーツをぴらっとめくる魔王。
中には制服姿のレイが見えた。
「あっ、なにするんですか、魔王さん。恥ずかしいじゃないですか……」
「……布かぶっただけではないか。わざわざ教室まで行く必要があったのか。それでなにがしたいのだ、お前は」
「おばけです。頑張りますよ~、ふふふふ」
レイはシーツをかぶったままバッと両手を広げ、人を脅かすような仕草をした。
すると、視界を確保するために開けた穴がずれて「あぁっ、見えなくなりました」などと聞こえてきた。
「ルリはまるっきり日本人形だな」
ルリは巨大な荷物の口を開けると、中から大小さまざまな日本人形を取り出しだした。
「お、おい……なんだそれは……」
「日本人形よ。これをいっぱい並べて真ん中に私が立つのよ。ウフフフフ、面白くなるわよ」
一心不乱に日本人形を並べるルリを見て、若干引く魔王。
「な、なにがしたいのかさっぱりわからん……それで、お前はなぜナースなのだ?」
「なんかゲームの中にナースのゾンビみたいのがいて、それが一部のマニアに大受けなの」
「ふむ」
ところどころが血で汚れた丈の短いワンピースのナース服と、ナースキャップを着用しているミツコ。
魔王は、ミツコの体のある一点で視線を止めた。
「お前は胸がないが、それはいいのか?」
「し、失礼ね! ちゃんとあるし! ビ……C! Cカップあるんだから!」
「いつもより多めに詰め物をし――」
「でやああああああああ!」
ミツコの鋭い蹴りが、魔王を捉える。
物理法則を無視して空までぶっ飛び、星のようにキラリと光った。
「さぁ、みんな! そろそろ時間よ! 準備はいいわね!」
新入生勧誘争奪戦が始まった。
「ぬぅ……どこだ……ここは……」
なぜかストレッチャーに乗せられ、点滴を打っていた魔王が起き上がる。
「とりあえず、あいつらを探すか」
正門から校舎へと続く道は、勧誘する者とされる者でごった返していた。
「君、わがワンダーフォーゲル部に入らないか? 自然と友達になるんだ」
「そこの君! 君はもうボディビル部に入っているといってもいいんじゃないのか?」
「あなた、人生を輝かせたくない? 超体操部に入部して一緒に輝きましょう!」
「待ちなさい! 彼女はアウフヘーベン部にこそふさわしいわ! 私たちと一緒に高め合うのよ!」
「わがインターネットテクノロジー部は、君のようなイマジネーション豊かなヒューマンリソースをリクエストしている」
「男なら、誰しも喧嘩に強くなりたいと思うもの。喧嘩最強の格闘技、骨法部へ来たれ!」
あちこちで勧誘合戦が行われている中、魔王はオカルト研究部のいる一角を見つける。
しかし、なぜかその辺り一帯だけ人が避けているようだった。
「ここにいたか」
「あっ、魔王! 遅いわね、なにやってたのよ」
「ぐっ、お前が……まぁいい。お前たちこそなにしているのだ」
「頑張って勧誘してるの。見ればわかるでしょ」
大量の日本人形に囲まれた、完全に日本人形になりきっているルリ。
白いシーツをかぶり、通る人たちを脅かすレイ。
袈裟を着て坊主のズラをかぶり、ブツブツと般若心経を呟いて木魚を叩くココ。
ナース姿で、オカルト研究部と書かれた看板を持ったミツコ。
「どうしたいのだ……お前たちは……」
「なかなか入部したいって人、来ないんだよね~。すっごく雰囲気出てるのに、なんでだろ」
「……やれやれ、しょうがない。我が少し手本を見せてやろう」
「本当? でも強制的に入部させるのはダメだからね」
「わかっている」
突如、道を遮るように巨大な壁が出現した。
壁には、〇と×と書かれたパネルが埋め込まれている。
「えっ? なにこれ? 先進めないんだけど?」
1人の新入生の男子が壁の前で困惑している。
「ようこそ、オカルト横断ウルトラクイズへ」
白いスーツを着た魔王が、壁の前でマイクを持っている。
「オカルト研究部に、行きたいか~!」
「……」
テンション高めの魔王とは対称的に、しらけた様子の新入生男子。
「第1問! 貴様はオカルト研究部に入りたいと思っている。〇か×か」
「……クイズでもなんでもないと思うんですけど……×で」
「さぁ、では×のパネルに飛び込むのだ。勇気ある者よ」
新入生が首を傾げながら×のパネルに向かって走り出す。
パネルを破るとそこには泥のプールができており、新入生はなすすべなく飛び込んでしまった。
「フハハハハ! 不正解!」
「ちょっと、魔王。入らないからって泥まみれにしたらダメだって。違うのにして」
傍らで見ていたミツコが抗議の声を上げた。
「なんだ、そうなのか? 仕方ない。別のものにするか」
魔王がそう言うと、跡形もなく壁も泥のプールも消えていった。
「そこのお前、新入生だな。こっちへ来い」
サングラスと付け髭をつけ、グレーのスーツに身を纏った魔王が新入生の1人に声をかけた。
パイプ椅子に座り、長机の上には1枚の紙が置いてある。
「はぁ……なんですか? ……先生?」
「そこへ座れ」
魔王は机を挟んだ1脚のパイプ椅子に座るように勧めた。
新入生の女子はおずおずと椅子に座る。
「その誓約書にサインするのだ」
「えっ? 誓約書?」
誓約書と書かれた紙は1番から50番まで列記してあり、小さな文字でびっしりと埋め尽くされていた。
「うわ~、これ全部読むんですか?」
「読まなくてよい。当たり前のことが書いてあるだけだ。適当に目を通してサインすればよい」
「はあ……」
「新入生は全員提出しなければならない書類だ。さぁ、早くサインせよ。後もつかえているのだぞ」
「わ、わかりました」
女子がそばに置いてあったボールペンを取り、サインしようとしたが動きがピタッと止まる。
「……えっ、なんですかこの『オカルト研究部に入部する』って……?」
埋め尽くされた文字の中ほどには、私はオカルト研究部に入部いたしますという1文が書かれていた。
「なに騙そうとしてんの、あんた!」
そばで見ていたミツコが抗議の声を上げた。
「フハハハハ! よく気がついたな! あっぱれ! フハハハハハハハハ!」
「あっぱれじゃないし! 騙して入部させようとするな!」
「なんだこれもダメなのか?」
「ダメに決まってるでしょ! もっと自然に勧誘して!」
今度は黒縁眼鏡を掛け、蛍光ピンクのジャンパーに着替えた魔王が、クリップボードを片手に道の真ん中でキョロキョロしだした。
なぜか身長が150センチほどまで縮んでいる。
「あっ、すいません。そこの方。ちょっとよろしいですか?」
「えっ? はい」
通りがかった1人の新入生の男子に声をかけた。
「今、このコメディ高校のアンケートを行っておりまして。できれば協力のほう、お願いいたします~」
「う~ん、すいません。ちょっと急いでますので――」
「ありがとうございます~。ではまず――」
「ちょっと! 急いでるんですけど!?」
「わかりました。では早口で質問させていただきます。まずあなたのお名前を――」
「そういうこと言ってるんじゃないんですって! アンケートなんて答えたくないって言ってるんですけど!」
「えぇ~~~~!?」
「いや、驚きすぎでしょ……なんでそんな信じられないもの見たみたいな顔してるの。答えませんよ、アンケートなんて」
「あぁ、そうかい! どうせお前みたいな奴はこんな簡単なアンケートにも答えられない人生送ってきたんだろ! クソみたいな人生なんだろどうせ!」
「なんでそこまで言われないといけないんですか! そんなこと言うんだったら答えますよ! ……とはならないですよ。見え見えですもん」
「お願いします! 私もこの仕事を頑張って女房と子供にいいものを食べさせてあげたいんです!」
「……わかりました。そんな事情なら――」
「そうおっしゃっていた方に、さきほどアンケートしたところなんです」
「あんたのことじゃなかったのね!? 紛らわしいなもう!」
「お願いします。すぐに終わりますから」
「本当にすぐ終わるんでしょうね?」
「2分! 2分で終わりますから」
「2分? わかりました。2分経ったら行きますからね」
「ありがとうございます~。ではまず……いや、3分くらいはかかっちゃうかなぁ……」
「それはもういいから早く始めてよ」
「ありがとうございます~。では、まずあなたのお名前を教えてください」
「一条三四郎です」
「……う~ん」
「えっ? なんですか? いきなり考え込んで」
「やっぱり3分はかかっちゃうかなぁ、どうしても」
「だから! それはもういいから話進めてって言ってんの!」
「はい、ありがとうございます~。では、まずはあなたのお名前を教えてください」
「一条三四郎!」
「あっ、次の1、2、3の中からお選びください。1、三宮太郎。2、二宮花子。3、ジョン・ドゥ」
「いや、だから一条三四郎だって。なんで名前が3択なの?」
「1番の三宮太郎ですね」
「違うって! 1じゃなくて一条!」
「三宮太郎ですか? 3の宮太郎ですか? どっちですか? 3番はジョン・ドゥなんですけれども」
「どっちでもないし! 一条三四郎だって!」
「あっ、失礼しました。3にしろ……3番ですね」
「だから違うって! 三四郎! なに3にしろって……君聞いたことあるの? 名前が文章になってる奴。一条三四郎!」
「1と3にしろ……三宮ジョン・ドゥ太郎ですね」
「一条三四郎だって言ってるの! 1番でも3番でもないんだって!」
「というと2番ですね」
「だから! 全部違うって! なんで名前が3択なの。おかしいでしょ」
「次に、あなたの年齢を教えてください」
「15歳です」
「次の中からお選びください。1、15歳。2、お年頃。3、ひとよひとよにひとみごろ」
「だから15歳だって。2番と3番おかしいでしょ。なにお年頃とひとよひとよにひとみごろって。ごろが合ってるから言いたかっただけでしょそれ」
「これがほんとの語呂合わせですね」
「うるさいよ」
「あっ、すいません。えっと、1、2、3の中からお選びください」
「1! もう~めんどくさいな~このアンケート」
「はい、では次です。あなたは、オカルト研究部に入部したいと思っていますか?」
「えっ? オカルト研究部ですか? いえ……思ってません」
「1、是非入部したい。2、入部したいと思っている。3、どちらともいえない」
「思ってませんって。選択肢にないんですけどおかしくないですか、それ」
「あっ、1、2、3でお答えください」
「だから! ないんだって!」
「えっ、ないん……9番ですか?」
「なんでいきなり英語なの。違うって! 入部したいと思ってないって言ってんの!」
「あっ、1、2、3の中からお選びください」
「あ~もう~! めんどくさいな! じゃあ3番!」
「ありがとうございます~。じゃあこちらの入部届にサインを――」
「ちょっと待って! なんでそうなるの! どちらともいえないって選びましたよね?」
「はい。だから1番と2番のどちらともいえないということですので――」
「えっ、違っ! そういう意味のどちらともいえないじゃないんだって! 入部したいかしたくないかのどちらともいえないって意味だって!」
「まぁまぁ、そう興奮しないで、花子さん」
「誰だよ! 一条だっつの! しかも、なにいきなり下の名前で呼んでるの。もうアンケートなんか答えませんよ!」
新入生の男子は肩を怒らせて去っていった。
「ちょっと、魔王。そんな強引に勧誘したってダメに決まってるじゃん」
「そのようだな」
魔王は眼鏡を放り投げ、ジャンパーを脱ぎ捨てると元の身長と姿に戻った。
「仕方ない。この手だけは使いたくなかったが、最終手段に出るしかないようだな」
「最終手段? なにそれ。普通に勧誘してくれるだけでいいんだけど?」
「バカめ。我が普通に勧誘するなど……超一流のスナイパーが、祭りに出ている射的屋の銃を使えと言われているようなもの」
「えっ? スナイパー? なんの話?」
「超一流のコックが、腐った食材でうまい料理を作れと言われているようなもの」
「わかったようなわからないような……でも普通に勧誘してくれればいいんだって」
「バカめ。我が普通に勧誘するなど……超一流のスナイパーが、祭りに出ている射的屋の銃を使えと言われているようなもの」
「だから、それはもういいって! 他人に迷惑かからないようにやってよね」
「……なんだと? 他人に迷惑がかからないようにか……となると別の手段を考えねば」
「あんた、なにしようとしたの……」
魔王は顎に手を当てて考えるポーズをとる。
ふとなにか閃いたように左の掌に右の拳をポンと叩くと、なぜか頭の上に豆電球のようなものが灯った。
「わっ、なに今の?」
「フフフフ、思いついたぞ。誰にも迷惑をかけずに済む方法をな」
「本当でしょうね? 信用できないんだけど」
「ふん、黙っておとなしくしているがいい。夢見心地にしてくれるわ」
魔王はミツコに向かって一瞬手を翳したかと思えば、すぐにスタスタとどこかへ行ってしまった。
「ちょっと! どこ行くの魔王! も~、なんなのあいつ。大丈夫でしょうね」
ミツコがしばらく看板を持ったまま立っていると、なにやら正門のほうが騒がしくなってきた。
怒号や地鳴りがだんだんと近づいてくる。
道いっぱいに広がった新入生の群れだ。
「うわっ、なにあれ」
1本の槍のようになった群れは、なぜかミツコに向かってきているようだった。
「えっ、えっ、なんで……?」
あっという間にミツコは新入生たちに囲まれてしまった。
「オカルト研究部に入部したいです!」
「俺も!」
「私も!」
「ちょっと待て! オカルト研究部に入部するのは俺が1番だぞ!」
「ふざけるな! 誰が決めたんだ、そんなこと!」
「レディーファーストでしょ! 男は女性の後ろに並びなさい!」
「なんだそれ! じゃあ俺だって心は女だからいいよな!」
「うそおっしゃい! あなたからは同類の気配を感じられないわ!」
「あ、あははは……これ全部うちに入部したいって人たちなの……? うそでしょ……なんで……?」
「すべてはお前の功績によるものだ」
呆然としているミツコの後ろに、いつの間にか立っていた魔王。
ミツコの肩にそっと手を置いて話しかける。
「お前がオカルト研究部に一生懸命に取り組み、努力していた姿を見て集まったのだ、この者たちは。なにを隠そう、我がこのオカルト研究部に入部したのも……その……なんだ……お前のそばにいたいと思ったからなのだ」
「ま、魔王……いきなりなに言ってんの」
場面は唐突に切り替わる。
魔王が、大の字で寝ているミツコを見下ろしていた。
「もう……なんなの魔王……気持ち悪い……」
にやけ顔でブツブツと寝言をいうミツコ。
「フフフ、大量の入部希望者に囲まれてよかったではないか。たとえ虚構であったとしても、お前の中では現実の出来事なのだ。そう、夢が覚めるまではな。人の夢とは、なんとも儚いものよ」
踵を返して魔王が立ち去る。
この後、怒ったミツコにボコボコにされてしまったのは言うまでもない。