97 噂が噂を呼ぶ さくら作戦ぶっ飛び
休息日 ボクとセルジュは、家族と夕食を取るようにしていた。
母が寂しがるからね、親孝行になってるといいな。
けれど今夜の夕食の席に セルジュの姿が無かった。
「セルジュ兄さんは?」と ミアが母に訊ねたら「シシリーさんの家に招かれたのよ、楽しんでると良いわね」と にっこり笑って答えた。
ムッとしたミアの眉間に深い皺が…そんなミアの様子を華麗にスルーする父と母。
「ノアの登録が上手くいくと良いんだが」とか「今日パン屋さんで新商品が並んでたの、明日の朝 楽しみにしててね」と通常運転だ。
ボクは、ピリピリしているミアの隣で黙々と食べてたよ。
気になった眉間の皺 あとで困った事になるよなんて、余計な口出ししなかった。
さて 困ったな、あの話をしたかったんだが きっとミアは、兄の帰りを待ち構えるだろうし。
家が駄目なら外で捕まえればいいか、そうだ そうしよう。
「ごちそうさま。父さん用事が残っているので外出します」
「明日じゃ駄目なのか?」
「今日中に済ませておきたい用事なので、駄目ですか?」
「そうか、外は暗いから気を付けて行きなさい」
「暖かくして行くのよ」
「はい、行って来ます」
飲み屋街や大人のお店は、宿屋の通りに集中しているので 夜の中央通りは、人通りもまばらだ。
これなら セルジュと行き違う事も無いだろう。
兄を見落とす事が無いよう注意しながら、シシリーの家を目指しのんびり歩いた。
そろそろ家に着くけど 迎えに来ましたってのも不自然だし、どうするかなぁ~と 悩んでいたが心配無用でした。
重なる二つの影が、そこにあったからね。
名残惜しんでるんだろうな 声かけるタイミング難しいな 熱々だなぁなんて、ごちゃごちゃ考えて躊躇していたら セルジュがボクに気付いた。
「ノア!いつからそこに?」
「あー今?」「今?」
「いやぁ ちょっと前?」「ちょっと 前?」
「ごめん 声かけづらくてさ」
「ハァ もういいよ。何か用事だったの」
「あ、うん。噂の事でちょっと」
「寒いし 立ち話もなんだから中へ入って」と 義姉さんに勧められお邪魔する事に。
「今 挨拶して出てきたばかりで、間抜けだな」と 兄が少し抵抗したけどね。
兄の気持ちを考え一階の厨房で話す事になった。
まずは、店で目撃したミアとお客のやり取りをそのまま話す。
「ミアがそんな事を 礎って何か凄いな。どこを突っ込んでいいか」
「その気持ちは、よく分かるよ。ボクも耳にした時クラっとしたよ」
「でも、ハッキリ「結婚します」と言って無いよな」
「だけど、普段兄と呼んでいるのにあの場では、セルジュと名前呼びしてたし さり気なく親密度をアピールしてるからな。あれは、確信犯だよ。でもミアを問い詰めても無駄だと思うけどね」
「あぁ、嫁に行かないと言っただけだし後は、受け取った側の解釈ってわけだ。流石ミアだな スキルとステータスを使いこなして誘導してるのか」
「それでボクから一つ提案がある。二人は、少し恥ずかしいかもしれないけどね。 噂は、新しい噂で塗り潰すのが一番じゃないかって、考えたんだけど」
ボクの計画を聞いた二人は、頭を抱え悶絶した。
最後は、覚悟を決め了解したけど。
明日は、朝から忙しくなるな ラグ達にも手伝ってもらって派手にやるぞ。
翌朝 仕事が休みなのに早起きしたボクを見て、家族が驚いていた。
用事があるからと、慌ただしく食事を済ませ飛び出す。
早くラグ達を捕まえないと、他に予定が無ければ良いけど。
ラグの家を目指し走っていると、ドライの声が頭に響いた。
((ノア お忘れのようだけど、そんなに慌てなくても 私が連絡すれば済む話じゃ無いのかしら?))
((そうだな、我もいるな))
「あ!」イヤホンを切ってるから直接話さなきゃって、思い込みって怖い。
まぁまぁな音量の声を発し突然足を止めたので、変に目立ってしまった。
周りの視線が痛くて、慌てて噴水広場まで引き返したよ。
((ドライお願いできるかな、フィーア アン センクに連絡してくれる?たまり場で待ってるって、伝えて欲しい))
((了解。ふふ抜けてるノアも素敵よ)) くっ 返す言葉が無い。
程なく メンバーが集まり昨日の話を聞かせる。
「以外じゃ無いな」「腑に落ちる」「うん、やっぱり」
ミアが何かしら関与している、みんなもそんな気がしていたらしい。
「お願いしたいのは、さくらになって欲しいんだ」
ざっと説明すると 二人には、いつも通り仲睦まじくデートしてもらって(人通りが多い場所を重点的に歩く。ここ大事)
ボク達4人は、二人を見掛けたら「デートですか?」とか「お似合いですね!」など、とにかく周りに聞かせるために大声で話しかける。
単純だが、月2~3回それを繰り返せば数か月後には、きっと街公認のカップルになってるだろう。
「こんな事に協力してもらって悪いね」
「大丈夫だよ。激昂には、日頃お世話になっているからね」
「そうだよ任せて」
「激昂は関係無いと思うんだが、まぁいいか」
「ノア ティナも一緒に参加していい?」
「はいはい ご自由に」
「ぼく孤児院のボランティアの日だから、教会の近くを散歩して貰えるとありがたいな。今日は、教会でバザーもやるし 他の人も参加してるから人目が多いよ」
「分かった。伝えとくよ」
「俺は、噴水前でいいか?行くとこ無いしな」
「ボク店の前でやらかそうと考えてたけど、ラグも一緒にやる?」
「おう それでいい」
わざわざ店の前を選んだのは、ミアに見せつける為。
これ以上馬鹿な真似をして欲しくないからね、セルジュとシシリーさんが結婚した時 恥をかくのはミアなんだから。
一度家に戻り 簡単なレクチャーをセルジュに施し、作戦開始だ。
二人が中央通りを歩いていると、早速トリルとティナに遭遇した。
「シシリー おはよう!シシリーもデートなの?」
「ええ、ティナも?」
「うん、気持ちのいい朝だしデート日和よね」
「そうね」
「せっかくだから、あそこのテラスでお茶しない?ダブルデートしようよ」
華やかな女性の話声で通りすがりの人達は、一瞬チラッと眼をやり通り過ぎる。
セルジュの性格からすると、人目に付くテラスなんて絶対避けるだろう。
今日は、特別だ。
そこで 暫くお茶とお喋りを楽しみ、店の前で別れた。
「大丈夫?セルジュ」
「うん 恥しかったけど何とかね。意外と道行く人が見るもんなんだね」
「あのお店デートスポットで有名なのよ。だからかな」
「そうだったんだ。次は、教会へいこうか」
「そうね」
教会の前は、様々な人や孤児院の子供等が集まり賑わいを見せていた。
中には、ギルドの職員もいる様だ。
「あ!セルジュさーん」
少し離れた場所から スミスが手を振り駆け寄る。
「デートですか?いいな」
スミスにしては、声を張り上げ頑張った。
そのスミスに纏わり付いていた子供たちが二人を囃し立て、その騒ぎに周りの人も振り返り 若いカップルを見て微笑む。
ギルドの職員も少し離れた場所からガン見してた、後で何か言われそうだ。
暫く子供達と遊んだ後、バザーで売っていた焼きたてのパンを買い 来た道を折り返す。
「ハァ」
「フフフ 子供の相手をするのが上手ね」
「弟や妹の面倒見てたからね、主にミアだけど」
「あら ノア君は?」
「ノアは、手が掛からなかったな。我がまま言ったり過度に甘えたりしなかったよ」
「そうなの、だからかな ノア君を構いたがるの」
「そうかな、そうかもな。ノアが成人するまで冒険者でいたいって思ったのも、ノアと一緒に狩りに行きたかったからだし」
「その口ぶりは、まるで父親みたいね」
「そうか?変かな」
「ん~ん 変じゃないわ。あ ほら、ノア君よ」
ノアが二人の姿を見つけ、手を振っていた。
「おーい 兄さん義姉さん」
店の職員やお客が「義姉さん?」と疑問に思いセルジュとシシリーを見た。
セルジュは「あー見られてる。引き返したいな」と 一瞬怯んだが、恥しそうに頬を染めたシシリーを見て母に諭されたことを思い出した。
「セルジュがこれからやるべき事は、シシリーさんを守る事よ。一番大切にしなければいけないわ」
繋いだ手に力がこもり、シシリーがハッとセルジュを見た。
優しくシシリーに微笑み手を引く。
「行こう、ノアが待ってる」
店の前に着くと開口一番 ノアが捲し立てた。
「義姉さんこんにちは、お昼もう食べた?良かったらこの間作ってくれたアレ 美味しかったからまた食べたいな」
えええええ、僕だってまだ食べた事無いぞノア。
何を言い出すんだとセルジュは焦ったが、シシリーはノアの意図を理解した。
「いいわよ。えっと なら今から作るわ、お邪魔してもいいかしら?」
店先で、接客していたミアが固まってボク達を見ていた。
接客されてたお客様も気まずそうな顔をしていたから、いつものアレをやっている最中だったかもしれないな。
ミアの射るような冷たい視線 背中にツーっと冷や汗が流れるんだが、家族に殺気を飛ばすとかどうかと思うよ ミア。
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