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95 家庭訪問

激昂の溜まり場で、あのゴシップが露呈した日。

遅くなったので、シシリーを送りがてら二人のお供をする事にした。

お邪魔虫だと分かっていたけど、話に聞いた小さな厨房の規模を見ておきたかったんだ。

ちゃんと遠慮して 少し後ろを歩きましたよ、ボクだってそれくらいの気遣い出来る もん。


中央通りを暫く進むと「住居とお店が同じ建物なのよ」そう言いながらシシリーが指で指し示し振り返ってボクを見た。

この時ボクは、さて ここまで付いて来たけど、店先で別れたら目当ての物が確認できない、どうやって中に入れて貰おうかな?なんて企んでいた。

すると「シシリーのご家族にも心配かけたようだから、ご挨拶しておきたいな」なんて、タイミングよく兄さんが言ったから、心の中でガッツポーズ ヤッターと喝采したよ(ファインプレーだよ 兄さん)


閉店していたお店の裏に回り、中に入ると厨房は甘い香りで充満していた。


「ただ今 セルジュとノア君が送ってくれたのよ」


「まぁ、いらっしゃい 送ってくれてありがとう。セルジュ君 無事で良かったわ」


シシリーとよく似た あ…シシリーが似ているのか、まぁ~優しそうな女性が出迎えてくれた。


「はい、ご心配かけてすみません。あ 弟のノアです」


「初めまして、ノアです。兄がお世話になっています。宜しくお願いします」


「ふふふ ご丁寧にありがとう。私はナデアよろしくね、後ろで作業してるのが夫のムトよ」


その人の後ろで筋肉もりもりの厳ついオジサンが、背中を丸め ちまちまと鉄板にクッキーを並べながら「よく来たな、ゆっくりしていってくれ」と少し不愛想な挨拶を返した。

その シュールな絵面に吹き出しそうになり、笑いを堪えるため拳で口元を抑える。


「ノア君、我慢しないで笑っていいのよ~」


シシリーさんを見ると悪戯っぽい笑みを浮かべ「父のあの姿を初めて見た人は、たいがい笑うわよ」そう言って楽しそうにクスクス笑った。


ボクは焦って否定したよ、その時 視線が泳いでムトさんとバッチリ目が合ってしまって、少し気まずかったけどさ。

(兄さん 母親と似た人を好きになるって聞くけど…義姉さんは、母さん同様 悪戯好きな人なんだね)


厨房を観察するとそこには、ボクの身長よりやや低め 1m50cmくらいのドーム型の石窯が2個備えられていた。

作業台の上の4枚の鉄板に整然とクッキーを並べ終え石窯に入れる所で、様子を窺っていると 一個の石窯の中に2枚の鉄板が用いられているようだ。

それを興味深く眺めていると「明日の出荷準備よ」と ナデアが教えてくれる。


「鉄板一枚50個のクッキーが焼けるの 一回で200個焼けるわね。お店で売る分は、明日の朝焼くのよ」


「朝も夜も繰り返しクッキーを焼き続けるって、大変なお仕事ですね」


ボクなら途中で飽きる自信がある。

厨房の隅に置かれた小さなテーブルでお茶を頂き、暫く歓談したあと「では、そろそろ失礼します」と 兄さんが帰るそぶりを見せたので、ボクも「シシリーさんまたね、お茶ご馳走様でした」と挨拶をしたら「あら、もう義姉さんと呼んでくれないの?」と 拗ねたような返事が返って来た。


「ぇ?流石にご両親の前で 気が早いって言うか…」


ボクがモジモジしていると「いいのよ、シシリーを家族と認めてくれているのね。嬉しいわ ありがとう」ナデアが満面の笑みでボクの肩に手を置いた。


「えっと それじゃ、義姉さんまたね」


そう言い切ったボクの言葉を笑顔で受け止めたナデアとシシリー。

その背後にいた父ムトは、相変わらず不愛想な顔だったけど よく見ると目じりに少し皺が寄って瞳が暖かだった。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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