94 ゴシップ
ノア達は、シシリーを囲んでギルドの長机に座り 激昂が下りて来るのを待っていた。
「リー師匠達 何の話かな、俺達の事?それとも全然関係ない話かな」
「トリル その師匠ってまだ続いてたんだ」
ボクが呆れて聞くと 少しムキになり「一度師匠と決めたら、一生師匠に決まってるだろ」と息巻く。
「でも、3年遅れのぼく達が追い付いたわけじゃない?かえって嫌味じゃないかなぁ」
スミスが、そう遠慮がちにボソッと言うとトリルの表情が少し曇る。
「大丈夫よ、彼等がそんな些細な事を気に掛けるほど 器が小さいと思う?だったら、あなた達をババールへ連れて行ったりなんて しないと思うけど」
「そっか、そうだよな!」
シシリーの言葉に勇気づけられたトリルは、満面の笑みを浮かべ「ありがとうシシリーさん、いいなーノア こんな優しい義姉さんが出来て」そう言って、羨ましそうな表情でボクの顔を見た。
「へへ でしょう?」得意げに笑うボクの横で トリルの不意打ちに合った義姉さんは、少し俯きはにかんでいた。
更に、シシリーを挟んで反対側に座ったラグも「俺の姉貴と大違いだ」と持ち上げ、スミスまで「楚々とした仕草も尊いですね」なんて、どこかのオタクのような言葉まで飛び出す始末だ。
だんだん 褒めているのか冷やかしなのか微妙な線になって来たところで、義姉さんがとうとう反撃に出た かも?
「あら シルフさんは、素敵な人よ。よく妹のカシュちゃんを連れてお店に買い物に来てくれるわよ」
「えっ!姉ちゃんを知ってるの?あの 今のは、内緒で」
焦って口止めするラグの様子が可笑しくて ボク達は、揶揄い笑った。
やられっ放しじゃ無いってところも イイネ!
気付くと、話を終えた激昂が傍まで来ていて「楽しそうだね、何の話?」と話の輪に加わる。
その時ラグが、さり気なく気を利かせ セルジュにシシリーの隣の席を譲っていて、少し感心したし負けたと感じたよ。
ラグロスは、出来るいい男に成長しつつあるんだなぁって。
まぁ もとから素質は、あったけどね。
サザンから「少し早いけど お祝いと慰労を兼ねて昼飯でも食いに行くか」と言われ、そのまま向かいの宿屋の1階にある食堂に移動した。
「改めて、Cランク昇格おめでとう。そしてババール遠征の成果に乾杯!」
「カンパーイ!」
ババ-ルでの冒険譚?や絡んで来たアレ等の事 塔から帰って来た激昂を出迎えたボクの失態?とか話は、尽きなかった。
天空の鷲の話もしたけど勘違い女の話しには、触れなかった。
あの女の話は、落ち着いた場所でセルジュの口から直接聞いた方が良いと、みんなも思ったんだろうな。
そんな盛り上がりの中、「もぅ やっぱりここにいた」「シシリーもいるじゃない、なら私達も呼んでよ」と店の入り口から 甘えの入ったむくれた声が聞こえた。
その声にビクッと反応したサザンとオルムの視線の先には、笑顔だったらきっと可愛らしんだろうなと思える女性が、腰に手を当て少し不機嫌な様子で二人を睨んでいた。
「悪い、色々あってさ 忘れていた訳じゃ無いよ」
「サザンの言う通りだよ。後でちゃんと会いに行こうって話してたさ」
「何で後でなの?シシリーだっているじゃない」「そうよ!」
「それは、セルジュが…」
「えっ 僕のせい?」
修羅場になるのか?と心配したが、会話の途中で彼女達がプッと吹き出し 折れた形で終わった。
余談だが、そのやり取りを見ていたトリルが青くなり「俺 ティナに声かけて来る」と、慌てて店から駆け出して行ったよ。
焦って彼女を迎えに行ったトリルを見送り「なんだ、弟子の癖に女がいるのか、破門だな破門」なんて憮然としているリー 傍から見てて面白かったことは、武士の情けだ黙っておこう。
しかし、女性陣も加わると12人 お昼時にこの人数で場所を占領すると、流石にお店に悪いので会計を済ませて、激昂の部屋へ移動する事になった。
女性陣と男手二人が飲食の手配 残った男性陣は、散らかった部屋の片付けと二手に分かれ 何とか落ち着いたところで、サザンの恋人ノエルが思わぬ発言をして 一同の度肝を抜いた。
「でも、まさかセルジュ君がこうなるなんて思わなかったわ。私達の間では、ミアちゃんと結婚するっていうのが、もっぱら評判だったもの」
それを聞いた男性陣は、ぶっと飲み物を吹き出し咳き込んだ。
セルジュも苦しそうに咳き込みながら涙目で「何でそんな話になってんの?妹だよ」と抗議するのが精一杯のようだ。
「ん~私もそう聞いていたけど、シシリー 聞いた事無かった?」
そして、オルムの彼女ミトまで そんな与太話を言い出す始末。
更にシシリーも「その噂は、知ってたけど わざわざセルジュに訊ねるのも」困った顔で言葉を濁しセルジュを見た。
慌ててセルジュが「断固としてそんな事は無い、誰がそんな噂流したんだ」と冷たい声で全否定して怒りを滲ませてたよ。
トリルもティナに「知ってる?」と聞いたら頷いたので、ボク達の世代までその噂が、まことしやかに囁かれているらしい。
ボク達の時もそうだったけど、何でだろう?噂って本人やその周りの人間には、伝わりにくいものなのかな。
彼女達に詳しく聞くと元になった逸話があって、北の海を渡った先にある孤島の少数民族に 兄弟姉妹や親戚と婚姻を結ぶ古い習慣があるので有り得ない事は無いなんて、馬鹿々々しい噂話しが発端になったらしい。
そこに、セルジュとの因果関係なんて全く無いのにね。
この時のボクは、想定外の事態に 弟として兄を守らなくちゃと気が急いて、つい強い口調で余計な事を口走ってしまい失敗したよ。
「呆れた 馬鹿々々しいにも程がある。だいたい近親相関なんて一つもいい事無いのに、血が濃くなる事で 稀にとんでもない天才が産まれる事があっても、ほとんどの場合 短命だったり何かしら障害が出るんだ」
「ノア落ち着けって、彼女達に怒っても仕方ないだろ」ラグが慌ててボクを諫めた。
「この先、もし噂を聞いたら否定しとくから 変な事言ってごめんね」とノエルとミトが申し訳なさそうに謝罪した。
二人が悪い訳じゃ無いので セルジュも「うん お願いするよ」と謝罪を受け入れ 苦笑いをしていたな。
ボクも「強く言い過ぎてごめんなさい」と謝ったよ。
この後セルジュが個人的に、噂の原因になった人物を徹底的に追い詰めるのは…
結婚前までに決着がつくとイイネ!兄さん。
最後までお読みいただきありがとうございます。
☆☆☆☆☆の評価と ご意見やご感想を寄せていただけたら嬉しいです。
続きが気になるな!と思ったらブックマークをお願いします。




