92 父達の苦悩
時は遡り ノア達がアジョンを発って三日後のお昼時。
ギルドの一室でギルマス チムニーとトーマス ドアロス ハーネル ミスド4人の父親が顔を揃えていた。
「わざわざ お呼び立てして申し訳ありません。実は、ご子息のババール行きについて ご報告がありまして」
「まさか 事故でもあったんですか?」
急き込んで問い質すミスドの勢いに 少し背を逸らしたチムニーは、苦笑いを浮かべ否定をしてから話を続ける。
「今回のババール行きに、Cランク昇格試験の設定を設けてまして、クリアした場合の処遇についてのお話を…」
「ちょっと待て」それまで黙って聞いていたドアロスが話を遮り「倅達は、断ったと言っていたぞ」と少し怒っているようだった。
続けて ハーネルが「お前さんも憂慮していたんじゃなかったのか?」と強い口調で責めた。
二人に責められ おもわず渋面になったチムニーを助ける形になったトーマスが「まぁ 最後まで話を聞きましょう」と取り成し、続きを促すよう視線をチムニーに送った。
「昇格を断った事で、低ランク内の格差問題が起こりそうになっててな、お前達も何か気付いて無いか?」
ドアロス ハーネルに話を振ると「あぁ~そういえば、たまたまウルフを拾ったから なんて噂しているのを聞いた気がするな まぁ妬み嫉みは、何処にでもあるし気にしなかったが」
「ハーネルお前もか、俺も耳にしたぞ ウルフがいなけりゃどうって事無いなんてな」
「そんな事が 私は、目の前に住んでいながら、全くき気付きませんでしたよ」
「私も息子からそんな話は、聞いた事も無いです」
父達が、状況を理解するのを待つあいだ「大丈夫です。息子さん達も気付いて無いようでしたから」と 場を和ませるつもりで軽口を叩いたのが、余分だった。
それを聞いた父達は、それはそれでどうなんだと思い悩む。
チムニーは、その失敗をうやむやにするためか、畳みかける様に続けて話し始めた。
「話がそれたな それでだ、早い昇格を気にしていた事も本当だが、もう一つ気になる件があったんでな それだけでも省いておこうと思ってババールへ行かせたんだ」
チムニーの言葉に何かを感じた父達は「どういう事だ?」と顔を見合わせた。
去年のクレッセントの昇格に 王都のある商会が関与していたと、チムニーが明かした。
多分 話が漏れたのも、思惑が外れた商会の嫌がらせだろうと言う事も。
「なるほどなぁ いち早く噂のパーティーを抱え込みたいが、未成年でDランクだった。せめてCランクだったら呼び寄せることも出来たって事か」
「アジョンは、その辺のルールが厳しいからな」
「えっ 噂って?」
ドアロスの推理に驚きを隠せないトーマスとミスド、二人とも商人の端くれなので 他の事なら情報通だが息子の事となるとからっきしらしい。
「多分 その理由で合っていると俺も思う。だから そういう紐を抜きにしたかったのとギルドの安寧のため 今回の試験に繋がるわけだ」
ギルマス チムニーの説明に不承不承頷くしかないドアロス ハーネルの二人と理解が追い付かないトーマス ミスドも何と無く納得したようだ。
「今回の試験では、ウルフを外して4人の実力のみで行うという縛りも付けた。これで文句を言う奴も減るだろう」
チムニーのその言葉で、父達の杞憂が多少晴れた。
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