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90 嬉し恥し 義姉さん

「初めて朝を迎えた日なのに、二人っきりじゃ無くて悪いね」


少し寝過ごした朝 食べ物を漁りに台所へ下りると仲睦まじい二人の姿が目に留まり、つい悪戯心が湧いて冷やかしてしまう。

それを聞いたセルジュは、照れる事無く無表情で言い返した。


「それ 今朝母さんにも言われたからな、まったく似た物親子だな」


「なんだ二番煎じだったか、どうりで照れて焦らない訳だ」


肩透かしに合ったボクが残念そうな顔で返事をすると、シシリーさんが可笑しそうにクスクス笑っていた。

それを見て…あ~今朝母さんに言われた時は、相当焦って取り乱したんだろうなと察しがつき、少し溜飲が下がる。


改めて朝の挨拶を交わし、すでに仕事へ出かけた3人 特に昨夜は姿を見せなかったミアの様子をさり気なく尋ねたが(地雷だと分かっているんだけど、怖いもの見たさで踏んでみたいじゃ無いか)


「あっミアか…ミアぅむ 終始硬い表情だった以外は、冷静だったよ」セルジュからは、歯切れの悪い返事しか返ってこなかった。

ミアにしてみれば、朝から天敵がいたんだからそうなるわな。


そんな話をボクと兄が交わしている間に、シシリーさんが手際よくボクの朝食の支度を整えてくれて感激したよ。

良ぃ 優しい姉さん最高!


だから思わず「ありがとう、義姉さん。義姉さんって呼んでいい?」とお礼を言ったが、流石にあざとかったかな?

当人となぜかセルジュまで真っ赤に茹でって、コクンと頷いたので悪い気はしてないと思う。


食事を取りながら、留守にしていた間の話を聞いた。

日常のシシリーもとい義姉さんは、午前中は家業を手伝い 午後から割と自由だが、頼まれた時だけギルドの雑務を手伝っていた。

だから ギルドから情報を手にしやすかったのかとそこで納得。


冒険者はその日暮らしなので、セルジュとの時間を作るために、激昂の都合に合わせて休みを取っていると少しはにかむ。

今日もそうなんだろうね、いやぁ~愛されてますな~兄さん。

ほわほわしている二人を頬杖ついて眺めていた時、頭の中でカチッと音がしてハッと気づいた時には「そういえば義姉さんの実家って、クッキー焼いてるんだったっけ?」そう聞いていた。


内心シマッタ 口が滑ったと焦ったよ。

まだ バニラを生産する目処も立ってないのに…ボクってどうしてこう先走っちゃうかなと、自問自答してそっと溜息をもらす。


「ノアがそんな事に興味を持つなんて、一体どういう風の吹き回し?」


余程意表を突いた質問だったのか、セルジュがキョトンとした顔で聞いてきた。

そうですよね~脈絡なかったですもんね~疑問に思いますよね。


「アーえっと ボクだってお菓子好きだし、アマパンとか売りに出された時も買いに走ってたでしょ?美味しい物には関心があるよ」 


「そうよね、男の子だって甘くて美味しい物が好きでもおかしくないわよ」


義姉さんが優しくとりなしてくれる、くぅぅ良いな!いっその事 お義姉様と呼ぼうか?駄目だ多分気味悪がられる。


「家は、家族経営の小さな厨房で焼いているから 大した事無いのよ、でも アマパンと言えば最近そのレシピを公開してね、商業ギルドで欲しい人は買う事が出来るようになったの、あと バターとかいう物のレシピも出たのよ」


何ですとぉ~!遂にやったか、あっ バター やっぱり日本人?

その疑問は、取り敢えず棚上げにして詳しく話を聞くと、アマパンの売れ行きが良すぎて、一職人では追い付かなくなったので、広く知らしめようと決意したらしい。


「そのレシピは、是非手に入れた方が良いと思うよ」


興奮してそう言い切るボクは、兄が奇妙な目でロックオンしていた事にも気付かない。


義姉さんは「凄く高いのよ、家みたいな小さな厨房じゃ…」と言い淀んだが「そういう事ならボクが買うよ、試したい事があるんだ」


今にも飛び出して行きそうな勢いのボクの袖を引っ張り「落ち着けノア 昼前にギルドへ行くんだぞ!」と兄さんに引き留められ「あっ!」気まずい沈黙が…。


「何を考えているか知らないけど、この話はまた後にしよう。そろそろ朝の混雑も解消しているだろうしギルドへ行こうか」


兄に促され大人しく後について行く、当然義姉さんも一緒だ。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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