89 リア充は爆発しません 癒しです
三日後 やっとの思いでアジョンへ辿り着いたが、凍てついた月明かりに照らされた街の門は、固く閉ざされていた。
そして今、それを 白い息を吐き困惑した表情で見詰めている。
「だよねぇ、冬の閉門が早いのをうっかり忘れていたわ」
「そこまで遅い時間じゃ無いし、まだ起きてるだろ?ちょっと通用口叩いてみろよ」
アジョンは二重防壁で守られているから、比較的安全なので門前で野営しても構わないが、久々に帰って来たホーム 出来れば快適に過ごしたい。
街の住民や顔馴染みの商人などは、割と融通が利くので、脇に設えた通用門から門番に声を掛けてみる。
「リー 飲めなかった酒を差し入れろよ、迷惑かけるんだから」
「うぇ~い」
渋々酒を鞄から取り出し反対の手で鉄扉をガンガン叩くと、門番のジンダンが顰めた顔を覗かせたが、酒を見て相好を崩し門を開けてくれた。
危機管理大丈夫か?と疑問も浮かんだが、ここは何も言うまい「ありがとう」「助かりました」笑顔で口々に礼を述べ中に入りほっと息をつく。
その時 ギルドを目視したサザンが「取り敢えずここで解散でいいかな?詳しい報告は明日にして、帰った事だけ告げて来る」そう言ってラグを顧みた。
「俺もクレッセントのリーダーなので、一緒に行きます」
ラグがそう返事を返した後、ボク達に「悪いけど 荷物とか溜まり場に置いてから帰ってもらっていいか?」と告げた。
二人を見送った後、激昂 クレッセントそれぞれの溜まり場に一旦戻る。
それは、ボクとしても都合が良かった。
幌をディメーションへ収納したかったからな、多分 その辺の事をラグは気遣ってくれたんだろう。
溜まり場に戻り用事を済ませたが、すぐ帰る気になれず何と無くみんなも もたついていた。
放心したままソファーに横たわり、そう言えばみんなの声 漏れて来なくなったな…と気付き「ねぇ、アジョン帰って来たから忘れないうちに、イヤホンオフにしておこうか」そう声を掛ける。
「言われてみれば…忘れていたよ」「そうだったな、随分慣れたな」
スミスはさておき、あとの二人は色々と漏れてたからな。
その会話が引き金となり自然とババールの話題に…あれこれ話しているうちに収拾がつかなくって、帰るどころか名残惜しい空気になっていた時、ドアをノックする音が響いて 近くにいたスミスが戸を開けると、笑顔のセルジュが立っていた。
「良かった、まだ残ってたんだね」
迎えに来たセルジュの後ろから、ギルドに報告し終わったラグが、荷物の整理をするために部屋へ寄り「何だまだいたのか?家族が心配してるぞ早く帰れよ」なんて、凄くまともなリーダーっぽい台詞を吐いてボク達を驚愕させた事は、旅の最後を飾るに相応しい思い出になるだろう。
セルジュに伴われ家に帰ると、驚きの状況が待ち構えていた。
「えっ、何でこんな時間にシシリーが?いゃ 会えて嬉しいけど…」
久し振りの再会、安堵と喜びに溢れ微笑むシシリーが出迎える横で、してやったりと得意げで満面の笑みを浮かべ隣に立つ母ソフィア。
本当 こういう悪戯が大好きで、いくつになっても可愛い人だな。
その反面、いつも真っ先にセルジュを迎えるミアの姿が見当たらない。
何このサプライズ!でも まぁ~ボクには関係無いか…。
とにかく 予想外の展開で状況が読めないまま家に入り、居間のソファに座るよう勧められ、落ち着いたところで父から状況説明を聞いた
いつものババール遠征なら2週間程度で帰って来るのに、なかなか戻らない事に不安を感じたシシリーは、ギルドへ顔を出し話を聞いて安堵した。
その時 トーマスやソフィアも同じ様に心配しているんじゃないかと気付き、その日から毎日無事を知らせるために、家へ通ってたそうだ。
そして 三日前ババールを発ったと聞いたので、今日あたり帰って来ると予想して待ちわびていたという訳だ。
しかも 両家とも親に紹介済みなので、遅くなった場合泊まる事も了解済みなんだって。
話を聞き終えたセルジュは、隣に座っていたシシリーの手を取り真剣な眼差しで「ありがとう」と感謝していた。
家族を差し置いていい雰囲気だったのに「仲が良いのは微笑ましいけど、結婚前の同衾は許しませんからね」なんて 母さんが言ったもんだからぶち壊しだよ。
典型的な幸せ家族の笑い声が響く ミアの部屋まで届いているんだろうか?少し気になった。
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