85 uneasy 2
二度寝から昼過ぎに目覚め、寝すぎたせいだろう全身が重怠い。
スッキリしたいなと思い、水場へ足を向け軽くストレッチをした。
ディメーションの水槽に、爪先からチャポンと頭まで浸かり やっと覚醒する。
立ち泳ぎで水面から顔を出し「はぁ~」と長いため息をついた。
「ノアおはよう。ここにいたのか、俺も入るぞ」
「おはよう。二人は、まだ寝てるの?」
「おぅ 余程疲れたんだな、あいつらも早く起きて水浴びすれば 疲れも取れるのにな」
「そうだね」
生命樹効果でワン達が喜んでいたが、砂だけでなく水にも何かしらご利益があるようだ。
実際 ドライ達があれを育ててから、水の入れ替えを必要としなくなった。
ここにある作物も腐り落ちるが、次から次へと実り絶える事を知らない。
腐葉土の中の微生物も元気なんだろうな、くらいに思っていた。
水から上がり頭がスッキリしたところで、ドライに一つ仕事を頼む。
((おーい、ドライ))呼びかけると、生命樹の枝の間からドライが飛んできた。
((どうしたの?))
((頼みがあるんだ))
((沢山仕入れてきた 実の事ね))
((正解))バニラを1つ取り出し手渡す。
((優しい香りね))顔を近づけスンスンとかいで笑顔に…そして 少し顔を顰め((これ、発酵しているのね))と呟く。
((また正解 今はこれしか無いんだ、どうだろう 発酵していても何とかなるかな?))
う~んと言ったっきり 両手にのせたバニラを見つめ、たまに((うんうん))((ふ~ん))なんて声を漏らしたが、まさか会話してるのか?
((わかった))
((えっ?何が))
((あれだけたくさんの種類を買ってきて、一番にこれを選んだんだから 必要なんでしょ))
((あ…ぁぁ だけど大丈夫なのか、無理しなくてもいいぞ))
((私を誰だと思っているの、今この実の過程をおぼろげながら読み取っていたの、発酵しているから難しいけど 多分何とかなるわ))
「うちの子優秀!」
嬉しさのあまり 突然大声を張り上げたせいで、近くにいたラグがビクッとして、呆れた目を向けた。
((多分だからね))とドライに釘を刺され
((まず小さなポットで苗木を作るから、ポット10個作って))
((土は、生命樹の腐葉土を分けてもらいましょう))
テキパキ指示するドライに従い、木片をくり抜きポットを作り土を入れて渡した。
あとはもう ドライに丸投げだ。
水場に戻り汚れを落としていると、所在なさげに座っていたラグが「ノアは、ダンジョンへ行かなくても出来る事があるんだな」少し羨ましそうな顔をした。
「あるよ 片付けとかね」そう言って反対側を指差すと「そうだな」と笑った。
「そう言えばノア 今日で最短の5日だったよな」
「あ そうだったね、思ってたより早く感じるよ」
「楽しかったしな」
「帰って来たら バスタブを外に出して激昂を労おう」
「喜ぶんじゃないか」
他愛ない会話をしていると、トリルとスミスも起きて「食事まだなんだろ?」「話しながら食べない?」と誘われたので、二人が水浴びして身ぎれいにするのを待った。
トリルとスミスに促され ボクとラグの2番ダンジョン攻略を話し終えた頃、あらかた食べ終え生命樹の側に場所を移した。
「さて トリルとスミスの番だ。何があったんだ?」
二人は、肩を竦め顔を見合わせ 溜息をついた。
「ぼく達がどう攻略したかを説明するには、蒼の楯の説明からしなくちゃならないから それは、後回しで」
「俺達が遅くなった理由が、ダンジョンと全然関係無いからな」
「もったいぶるなよ」
「あぁ悪い 実は天空の鷲の女に追い掛け回されていたんだよ」
「ハァ?どういう事だよ」
「ボク達も居なくて良かったって チラッと考えたけど…」
「いや 会ったからって何で追い掛け回されるんだ?何かしたのか」
「えぇー何もしてないよ、ぃや したのかなぁ…とにかく 16階層で天空の鷲と会っちゃってさぁ、ぼく達の顔を見るなり「セルジュが何で一緒じゃ無いのよ?」って いきなりだよ?」
「それで俺がカチンと来て、お前みたいな女は、セルジュさんの好みのじゃ無いから諦めたら?って言い返したら「何であんたが、セルジュの好みを知ってるのよ」って言われて、そりゃって言いかけた時に スミスに止められたんだ」
「止めて正解だろ、あの時止めなきゃシシリーさんの名前言ってたでしょ」
「もぅトリル勘弁してよ、彼女の名前漏らしたら いくら温厚な兄さんでも怒るよ」
「ぉぅ悪い、スミスもありがとな」
「トリルが何か言いかけて ぼくが止めた事を不自然に感じた…えっと あの女の名前何だっけ?まぁいいや とにかくあの女が、何かあると気付いたみたいで…これが巷で噂の女の勘ってやつ?」
「俺達は、相手をするのが面倒くさくなって逃げ回って撒いたんだ。本当しつこい女だよ」
「魔物はいるわ あの女はいるわ もう滅茶苦茶だったよ。その後も見つかる前に隠れて回避してたんだ、そのうち諦めると思ってさ」
「そしたらあの女、ボス部屋の前に張り付いて待ち伏せしてるんだぜ」
ボス部屋の扉の前で あの女と呼ばれるタリアを見て絶望し、ボクが渡したアイテムを使いダンジョンを離脱しようかと一瞬考えたらしい。
だが タリアのせいでダンジョン攻略失敗で終わるのも癪に障ると思い直し、彼女が諦めるまで待つ事にした。
しかし 天空の鷲の仲間は、タリアの暴走を何で止めないんだろ…言っても無駄なのかな。
待つあいだ暇なので、18~19階層を隅から隅まで探索して 行き止まりの空間とか細い横道で宝箱を見つけたと喜んでいたから、苦労した甲斐はあったようだ。
そして 横道の細い通路から出ようとしたら、女の声がしたので隠れると 天空の鷲が上に戻って行くところを目撃した。
それをやり過ごし、今がチャンスだとボス部屋まで走ったそうだ。
事の顛末を聞いた感想は「まるで、コントだな」の一言だった。
総括すると、タリアに問題があるのは間違いない。
けど トリルの迂闊さにも落ち度があった…口は禍の元ってね。
天空の鷲が、ボス部屋の前で待ち伏せしたり引き返したのは、まだボスを倒してないんだろう。
ボスを倒して 地上で待ち伏せした方が確実なのに、それをやらないんだから。
時間があれば あの階層へまた行きたいと思っていたけど、避けた方が良さそうだな。
周回を重ね、マッピングを済ませた初心者じゃ物足りなくなってきたのに 宝箱もボス部屋のみだったし。
2番の代わりに3番目と言う訳にいかない あそこは、日を跨ぐからなぁ。
今日で5日目だし、激昂がいつ帰って来るかわからない。
こうなると、初日に3番目に行けばよかったなぁと 少し後悔した。
思わぬ宝箱の発見情報に興奮して、次回ここに来れたら最短ルート以外の場所を見て回ろう、なんて話で盛り上がり、結局2番目の攻略とスミスの蒼の楯の話を聞きそびれた。
精神年齢おっさんの ボクが言うのも気恥しいんだけど…。
あーしたい こーしたいって、夢や希望の話って 楽しくてつい夢中になっても仕方ないでしょ。
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