81 思春期BOMって…笑止
幌に戻ったら いよいよ帰宅の準備かと思い、少し残念な気持ちになったが違った。
サザンがこれからの予定を話すと言って、ボク達を集める。
「アジョンを出発して今日で12日経った。そしてクレッセントがダンジョン攻略を試みて九日か、みんなよく頑張ったな。いつもならそろそろ一度戻るんだが、あいにく俺達の用事がまだ終わってないんだ、悪いがもう暫くここに滞在したい」
「用事って何ですか?」ラグが率直に訊ねた。
「俺達は、塔の攻略途中なんだ」
「折角ここまで来たんだから 少しでも進めたくてね」
オルムとセルジュが、代わる代わる答える。
「ボク達も一緒に連れて行って下さい」思い切ってボクがそう聞くと
「悪いなあそこは、Dランク以下不可だ」リーが飄々と返事を返した。
全然悪いと思って無いじゃん…でも ランク制限なら仕方ないやぁ。
激昂は、明日から早くて五日長くとも一週間塔ダンジョンへ挑むので、それまで待つようにと厳命し、準備のためそれぞれ忙しく動き出す。
そして翌朝 ボク達が見送ると「地下ダンジョンなら好きにしていいぞ」
「お前達なら心配ないしな」「だからって、油断しちゃだめだよ!」「気を付けてね」なんて勝手な事を言い、笑顔で塔ダンジョンへ出発した。
アジョンのギルドで言われたよね?保護者付きでだったらって条件は、すっかり忘れ去られたな。
半ば呆れながら見送った後「俺も行きたかったな」ぽつんとトリルが言葉を零しボク達も頷く。
「さて 取り敢えず五日間をどう消化する?」
不満を吹っ切るように、明るい声でラグが問いかけた。
「初心者ダンジョンをソロで回ってみるのはどう?」
「いいな、それやろうぜ」
「あっ ボクこの間の休みに済ませた」
「ノア…遅く帰って来たと思ってたら、そんな事してたのか」
呆れ顔の3人に見詰められ、あれ?駄目だったと聞きたい気持ちを堪える。
結局3人は、それぞれダンジョンへ行き ボクは、香辛料の実を手に入れる為ババールの町へと別行動する事になった。
初心者ダンジョンなら3人がソロで回っても昼過ぎまでに終わるよね、そしたらボクも留守番のウルフ達を連れ出そう、午後の予定を考えながらシャーの背に揺られニッコリ笑う。
((楽しそうですね、ノア))
「うん シャー達やみんなとダンジョンへ遊びにいけるかもって考えたら、なんだかね」
((それはきっと、楽しいでしょうね))
そう答えた後の、シャーの歩調もウキウキだった。
何軒か店があったので、ババールの門番や道行く町の人に話を聞くと どうやら"バッグトの店"の評判が一番いいようだ。
場所を聞いて目指す店を見つけ中に入ると、スパイシーな刺激に鼻がムズムズしたので、慌てて口を塞いだ。
一度店を出て往来で思いっきりくしゃみをしてから、改めて扉を開くと先程の様子を見ていた店主が「いらっしゃいませ」とにこやかに語り掛けた。
「どのような物をお探しでしょうか?」
人当たりが良さそうで日焼けしたノッポな店主は、ターバンを巻いたらカレーのCMに出てきそうな風体で 笑いを堪えた。
「粉じゃ無くて実のままの 出来れば生の状態で欲しいんですが」
「すみません 日持ちしないので乾燥した物しか置いて無いんですよ」
「じゃ 乾燥したもので構いません」
店内を見回すと、香辛料だけじゃ無くハーブなども取り扱っている。
丹念に商品を見て回るとそこには、黒コショウ 白コショウ ターメリック クミン セージ カルダモン バジル シナモンそして何とバニラまであった。
ボクは嬉しくなってつい舞い上がってしまい、目に付く全ての商品を片っ端から一種類につき10kg買い、金貨4枚も消費してしまった。
これには、店主も呆れて「冒険者とお見受けしますが、お店でも始めるんですか?」と尋ねてきたぐらいだ。
「2年後に何か商売をと考えてます」いらぬ疑いを掛けられると面倒なので、正直に答えた。
「お買い上げいただいたお荷物は、どちらにお届けすればいいのでしょう」と問われ「持ち帰ります」と明るく返事を返し思案する。
商売人だし顧客の情報は漏らさないだろう…だが ディメーションは、特殊だしな…やっぱり見せるのは不味いか。
それに、見ただけでアイテムバックへ片付ける方法もセルジュに注意されている。
あの方法は便利だけど、傍から見ると泥棒にも見えるしな。
仕方ないので アイテムバックを商品に近付け一つ一つ仕舞った。
それでも膨大な量だったので、店主は目を白黒させていたけどね。
「はぁ 随分容量の大きいアイテムバックですね。羨ましい」
商人からしたら、きっと喉から手が出るほど欲しくなる物なんだろう。
手あたり次第大人買いしてホクホク顔で幌に戻り、ディメーションに荷を移す途中 ドライから待ったがかかる。
((ノア ここがいくら広いからって、これだけ大量にあると色々なにおいが混じって充満するから、スパイス部屋を作ってから運び入れて))
ドライの苦情を聞き入れ、激昂の帰りを待つ間に作る事を決意した。
ついでに風呂を作るか…旅の間水場で水浴びしてるけど、暖かい風呂に浸かりたい欲求がそろそろ限界に達してるなぁ。
部屋より風呂が先だなと思い立ち、早速ステンレスのインゴットをいくつかスタンバイ。
さて 西洋風の置き式バスタブでも作ってみるか。
細長い卵の半円を思い浮かべ、じっくり魔力を練りインゴットに満たす。
ゆっくりとインゴットが一つの塊に戻り、底は平たく楕円の円柱が姿を現す。
既に額には、玉のような汗が幾つも浮かんでいた。
更に手を加える為魔力を練り込み やがて側面は、美しい丸みを帯び滑らかなフォルムが造形され、銀色の輝きを放つバスタブが完成した。
10分程で作業をやり終え、全身から汗が噴き出しグッタリと床に伏したが、SFっぽい出来上がりに大満足だ。
「しかし 魔力はさほど消耗してないのに、疲労が激しいな。ディメーションの空間を広げるより固形の方が簡単だと思うが、慣れ?もっと色々試して躰を慣らした方が良いかな」
そんな反省をしつつ、バスタブに魔法で水を張り温めてからのんびり浸かった。
「あぁ~やっぱ風呂最高~!そうだ スパイスを片付ける部屋より間口の広いアイテムボックスを作って設置すればいいか、魔獣用とか薬草用とかいくつか作ってもいいな、練習になるしそうしよう」
眼を閉じ鼻歌交じりでつい口ずさむのは、土曜夜の8時だよのエンディングだ。
自分でも親父臭いなと思うのだが、気が付くと歌ってしまっているし、前世の年齢を足せば既に40近いし、精神的親父ってやつだなっと気付いてからは、諦めていた。
そんなノアは、最近 たまにもう一つ思い悩む事がある。
いよいよ思春期に突入し、ノアのノアが当然の事なんだが変化?進化?してきた事だ。
前世でそれなりに経験も積んでいたけど 女だったからな、知っていたけど知らなかった方の事が多かったと思い知った。
実際 邪魔だなと思う事が多々ある、だって前は無かったんだもん…ぷらぷらしてるし 少しの衝撃でめっちゃ痛いし、まぁ~女の子の日が無いのは有り難い、辛かったもんな~ミア大変だな~とか。
何の事はない 下らない事をアレコレ考え時間を潰しているだけなんだろう、この13年間と少しで、今の自分を受け入れている事も事実なのだから。
風呂から上がり、キョホン片手に生命樹の根元に座り寄りかかる。
「そろそろみんな戻ってくるかな、帰って来たら留守番を交代して貰って、シャー達やドライにワン達も連れて散歩しよう」
考えるだけでワクワクして 自然と頬が緩んだ。
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