80 アレな奴、再び
翌日 ババールのギルドへみんなで赴き、肉だけ残して他のドロップアイテムや魔石を清算する。
ついでにそれぞれギルドカードを提出して、記録を残した。
全てやり終えその場を離れたのに何故かサザンだけカウンターへ引き返し、笑顔で対応するギルド職員に、殊更声を潜め「3番目の地下ダンジョンを三日以内で攻略終了と、アジョンへ報告してください」とコソコソお願いをしていた。
その言葉を偶然耳にしたボクは、敢えて連絡する事に疑問を持ち「何でわざわざ?」と兄さんに聞いたが「大丈夫、気にしなくていいよ」と笑顔で言葉を濁す…小骨が喉に引っかかったような違和感を感じた。
そんな僕の様子に気付いたラグが「どうしたノア?」と聞いてきた。
脳内会話に切り替えて「激昂が、何か企んでいる気がする」と話したら「企むって?」と3人同時に聞き返したので、さっき耳にした話とサザンやセルジュの様子を説明しようとした時、突然糾弾する喚き声がギルド内に大きく響いた。
「こいつ等だ!こいつ等が24階層で俺達の道具を奪って海を渡ったんだ!」
何だ トラブルか?と思い声の主を探し当てると少し距離を置いた場所で、醜く顔を歪めボク達を指差す男がいた。
「えっと、誰?」キョトンとした顔で思わず訪ねてしまう。
咄嗟の事で本当に誰だかわからなかったが、ラグに「ほら、海の」と耳打ちされやっと気付いた。
「あぁ~ずぶ濡れだった」「ちゃんと戻ってこれたんだ。良かったね」ボク達が、無表情なうえ棒読みで答えると
「はぁーん!お前等が俺達の道具を盗んだんだろうが」等々
その男が、がなり声を張り上げ理不尽な主張を繰り広げたので、周りの冒険者達も何事かとこちらの様子を窺い出した。
「言い掛かりも大概にしろよ!」
憤るトリルを宥め、ラグが平然と前に出て言い返す。
「トリル落ち着けって、俺達が何を盗んだんだ?お前等が俺達の道具を取り上げようとして断っただけだろ」
「いぃや、お前達が、俺達のスキをついて、掠め取ったんだ!」
そいつは、自信満々でワザと周りに言い聞かせるように一語一句区切り大声で言い放つので、事の行方を興味本位で見ていた冒険者達は、奴の言い分に乗せられ徐々にボク達に避難の目を向けだした。
それなのに、ボク達に助け舟を出すつもりも無い激昂は、出口付近に陣取り高みの見物と洒落込むようだ。
「これって、自分達で何とかしろって事だよね」
「おいおい、激昂メンバー面白がってないか?」
「チッ、このまま押し問答しても埒が明かないぞ」
「マジ相手にしたくないんですけど!」
「こっちが感情的になると、拗らせそうだな…」
「そうだな…よし、仕方ないここはノアに任せよう」
「チョット!」
「大丈夫、俺達も応援するから」
「何が大丈夫なんだ?」
そんな感じで押し切られ、ボクが対応する事となった(あ~ぁ…)
「盗まれた道具って、これの事ですか?」そう言いながらボクは、裏面をステンレスコーティングして表面にマットを貼った板を取り出した。
「それだ、それは俺達の道具だ」
「うわぁぁ…」
「よくぬけぬけと嘘をつけるな」
「面の皮厚!」みんなの思いが漏れ出て苦笑し、肩の力が抜けた。
笑んだボクを見て馬鹿にされたと勘違いした奴がイラつき熱り立つ。
「何笑ってんだ何とか言え!俺を馬鹿にしてるのか?」
「じゃ~聞くけど、これを何処で買ったんですか?」
「何処だっていいだろ!お前に教える義理は無い」
それを聞いたラグは、ニヤッと笑い他の冒険者の顔をゆっくり見回し声を張り上げた。
「あれ?おかしいな、この板売り物じゃないから買える筈無いんだが」
「へっ?」
その言葉を聞き、間の抜けた顔のそいつにボクが駄目押しで丁寧に説明する。
「だから これは、ボクが作った物で売って無いんですよ。それにボク達の名前とパーティーのエンブレムも入ってるし」
ボクがそう説明すると、最初の勢いを失い言い訳がましく「そんなの盗んでから何とでもなるだろ」と言い返す。
「いや無理ですよ、よく見て編み込んでるでしょ?」そう言って、マットの部分の狼と月の絵そして名前を指さして見せた。
堂々と渡り合うボク達の態度と、そいつが何も言い返せない状況を鑑みて「何だ言い掛かりかよ」「恥ずかしい奴だな」と、周りの冒険者達もざわざわしだす。
やがて難癖をつけたが結局言い負けてしまった男は、真っ赤な顔をして拳を握り締め俯いていた。
ボクが、困った…どう決着を付ければいいんだ?別に謝ってほしくも無ければ、糾弾したい訳でも無いぞ、それにこれ以上関わりたくないし面倒くさい…そう思いこの状況を持て余していると、そこに「何の騒ぎですか?」と、ギルド職員が割って入ったので肩の荷が下りてホッとした。
ラグが事の顛末を説明し他の冒険者からも事情を聞いたギルド職員は、そいつを連れて奥の部屋へ消えた…結局誰だったんだろう?名乗りもしなかったな。
気が付くと激昂はサッサと表に向かっていたので、ボク達も後を追った。
帰り道「災難だったな」なんて苦笑いで労ってくれたけど
ボク達は、文句を口にせず冷ややかな視線を向けるに留めた。
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