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78 試される適応力 2

―28階層

切り立った崖の上から眺める絶景に、思わず息をのんだ。

足元の遥か下に広がる深い森の中央を大きな川が流れ、見上げればキラキラ瞬く星空そして銀色に輝く月…これで血走った眼と鋭い牙を持つ、ペンシルバニアの伯爵が潜んでいたら完璧!(ないない、虚しい自分突っ込み)はぁ~。

馬鹿々々しい考えに耽っていると、三人のボヤキ声が聞こえ我に返る。


「切り立った崖と書いてあったけど、こんな説明なかったよ」


「出た場所が崖の上って…ノアさっきからぼーっとしてるけど何かいい案でも浮かんだか」


「ギルドの手引書ってさ、ちょいちょい抜けてるよな。ワザとなのか?」


「ごめん、景色に見とれていた」


「呑気だなぁ。何か手だてが無いか手分けして探そう、二人一組で行動する」


ラグの指示に従い左右二手に分かれ、ここから下りる方法を探す。

壁沿いに細い道を進むと道が途切れ、壁に目をやると穴が開いていた。

人一人通れる余裕があり、ライトを照らし少し奥に進むと階段を見つけた。

これ以上勝手に進むのは悪手だ、みんなの所に戻って相談しよう。

そうトリルと話し合い元の場所に戻った。

ラグとスミスが行った先には何も無く、ボクとトリルが見つけた階段へ向かう。

その途中ラグが緊張した面持ちで喚いた。


「探知に反応が…走れ!」


崖の際の細い道全力疾走できる訳がない、ギリギリ間に合い穴に飛び込むと背後で甲高くギョゲエェェと鳴きバサバサと羽ばたく音がした。


「えっと、この階層何がいたっけ?」


「フクロウ鷲と、中ボスがフォレドラゴンだったかな」


「あの感じだと、フクロウ鷲?」


「多分そっちだと思う、中まで入って来れないようだし先に進もう」


そこから、延々と続く長い階段を下りやっと出口に出たと思ったら、さっきより低い位置の崖だった。

違いは、壁に沿った細い道が反対側に一本延びている事だった。


「俺この細い足場で、フクロウ鷲に襲われる未来しか見えないわ」


「やめてくれよ、不吉な事言うの」


そんなトリルとスミスのやり取りにラグは、細めた視線を森に向け水を差す。


「諦めろ、こっちを窺っているぞ」


この場で戦った方がましだと合意して、此処で迎え撃つと決意。

スミスの強化を受け、ボクとトリルが翼を落としラグが頭と胸を狙う計画だ。


因みに…ドラゴンの相手をする場合は、トルネード雷神解禁の許しを既に得ています。

「小型といえど、ドラゴンだしな」「手を抜けと言えないわな」「まぁそうだね、でも加減も必要だと思うよ」だそうです。


少し待つと、フクロウ鷲が森の中から飛び立ち暫く上空を旋回していたが、急降下し襲い掛かってきた。

ボクとトリルで左右の翼を切り裂きラグがファイヤーアローを射ると、瞬く間に火達磨になり落下した。

余談だが、羽根を毟らず焼くと、獣臭い不味そうな焼き鳥の臭いなんだなと、微妙な感想が頭によぎった。


フクロウ鷲の焼けた臭いが呼び水となり、他のフクロウ鷲…最悪フォレドラゴンが寄ってくる可能性がある、ただちにその場を離れ急いで崖の反対側を目指した。

反対側には、やはり同じような穴があり奥に階段があった。

あと何回繰り返すのかと少しウンザリしてへこんだけれど、士気に関わるので口には出さないでおこう。

さて、気持ちを切り替え「よっし!」気合を入れ直し前を向く。


総合すると階段下り繰り返す事10回、フクロウ鷲と対峙する事7回、危惧したフォレドラゴンとの鉢合わせも無く地上に降り立ち一安心です。

資料を見た時延々と…の予感を回避できたと思ったのに、こんな場面で実現するなんて…。


そして、広い森を抜ける途中幾度もフクロウ鷲に襲われ、やっとの思いで目的の出口が遠くに見えた場所で、ホッとしたのもつかの間フォレドラゴンに見つかる…神様は意地悪だな。

探索の網の目の外にいたのに、一瞬で距離を詰め現れた事に驚きを隠せなかった。

あの速さは、卑怯だよ!


ボクは咄嗟に、トルネード雷神を放った。

渦巻く風と電撃に晒されたフォレドラゴンは、翼を広げ竜巻を押し返そうとしたが電撃に触れ痺れ引き攣り、思うように動けず翼が変な方向に湾曲した。

そして、ものすごい勢いでズズンと落下し、地面に大きな亀裂が入った。

地に落ちたフォレドラゴンにウォータースプラッシュで追い打ちをかけ、更に水濡れた体めがけプラズマショットを続けて数十発撃ち込む。

もうもうと立ち上る土煙が収まると、フォレドラゴンの姿は無く肉の塊と青緑色の鱗が幾重にも重なり落ちていた。


「ゲホゲホ、派手にやらかしやがったな…ゴホ」


「ノア、加減憶えようって言ったじゃん…コンコンゲホ」


「俺も戦いたかったな…ゲッゲホゲホ」


ボクはドロップアイテムを拾い集め、そそくさと出口に向かった。


「出来れば29階層で野営してラスト30階層に挑みたいと考えていたが、どうするお前達」


「感覚的に、そろそろ晩飯の頃合いだろうね」


そうサザン達に聞かれ迷う。

確かにお腹がペコペコだけど…29階で野営するという提案が正しい気がした。

生命樹の実を食べれば体力に問題はない、けど気力精神力となるとどうかな…

4人で色々話し合った結果をラグが報告する。


「お腹が空いたので、まず食事してから判断しても良いですか?」


「わかった、じゃ~飯にするか」


ドロップした肉はダンジョン制覇した後のお祝いに使おうという事になり、手持ちの食料を食べる。

ババールに来た時から恒例となった反省もとい検証会、初日は厳しい事も言われたが、労い褒められることも多くなり、和やかに食事が進んだ。


「そろそろ食べ終わるぞ、どうする?」


誰も即答する事が出来ず黙り込む、その流れでつい念話してしまった。


「どうする?」「お腹ふくれて眠い」「あー俺も」「うんボクも」

「けど俺は、29階層まで行った方が良い気がする」


驚いた表情で、3人同時にラグの顔をまじまじ見てしまい「なんで?」と聞いて、しまったと思った。

だって、無言のまま考え込んでいた3人が揃ってラグに注目するって、傍から見てかなり不自然だよね。

ボクの焦りに気づかず、ラグが話し続けた。


「サザンさんがわざわざ尋ねたんだ。何かある気がするんだよな」

「それも一理あるかぁ 11階層の時もそうだったね」

「じゃ~行きますか」「おぅ!」


「サザンさん、29階層まで頑張ります」


「えっと、みんなの意見は聞かなくていいのか?」


「大丈夫です!みんな同じ気持ちなんで」


サザンは「何が大丈夫かよくわからんが…」と苦笑いして了承した。

セーフティーゾーンから出る前に、準備のため4人で固まりコソコソしていたので、不審がられた。


―29階層

この階層の最初の敵は、沼だ。濡れた靴は重くなる泥を含むとなおさら

そして靴の中は、ぐしゃぐしゃに…足元の不快感が破滅的になる予感がしてたので、ドライと相談してマットでブーツを編む方向で試行錯誤した結果。

最終的に得た答えは、魔法で何とかなるんじゃないかと言う事でした。

いやぁ~無駄な時間過ごしたとドライの機嫌が…アハハ。

そして現在、泥水に触れる事無く結界で快適です。

激昂は、防水効果のある魔物の皮を靴の上から包み込んでいた、そんな便利グッズが有ったなんて知らなかったな。


足を踏み入れる前の沼は、鏡のようだったので澄んだ水なのだろう。

葦に似た水草や清楚な水芭蕉に似た花も咲いており、静かな心洗われる光景の中、歩を進める。

日本に舞い戻った?と、錯覚を起こしそうな馴染みのある景色だ…戻りたい?と問われれば答えはNOだけど、つい無口になっちゃう。

風景なんて何処にいても、さほど変わりないって事かぁ。


沼を1時間程歩いたが、景色に大した変化がなく魔獣の襲撃も無い。

少し不安になりボク達は足を止めた。


「なんか変だな」


「あの白い花さっきもあった気がするな、あれ?激昂がいないよ」


「もしかして、迷った?さっきまで後ろにいたのに」


「こんな見晴らしのいい場所、見失う訳無いぞ…」


「資料に誘いの沼って書いてあったけど、こういう事かな」


「こういう事って?」


「だから、出口に辿り着けなくていつまでも徘徊する」


「げっ!また説明洩れかよ…調べる意味あるのか?」


「資料に嘘の記載は無いが、最初に情報提供した冒険者が意図的に隠している可能性があるよな」


「わざわざ情報を訂正する奴もいないって事か」


「それ、激昂も含まれるのな」


「今までは無かったけど、ランクが上がるとこういう事もあるのか~」


「これからは、予備知識を入れた上でプラス何かがあると覚悟するしかないな」


「そういう事か。で、経験者の激昂はこの状況を回避して先行してるな」


「そして、ここに何かがいるって訳か、けど…探知にかからない」


ラグが両手を肩まで上げ降参のポーズで溜息を吐く、ボクも網を広げているが反応が無い、ボクの探索を上回る隠蔽持ち?


「確か、ここに棲む魔獣はパーソン、中ボスの情報は無かったよ」


「隠れるのが上手い魔獣って事だよな、誘き出すしかないか」


「仕方ない、ボクが道に迷ってはぐれた振りするから、みんな後の事頼んだよ」


「えっ、何でノアが?」


ボクは、ニンマリ笑い詳細を説明した。


4人で暫く固まって移動する、次第に足を引きずりボクがノロノロ歩き出す。

そして、徐々に仲間から距離を置く。


「ラグー トリルー スミスーみんなどこー!」


敵の知能が高いかもしれないので、分かりやすい状況を演出してっと、ハァ~深くため息をつき、その場にしゃがみ込んだ。

敵が出て来るのを待つ間、ボクを中心に魔力の網を張る、探索の要領だ。

探索は距離が短いほど精度が高まるので、これなら引っかかるかも知れないと望みを掛けた。

ラグ達には、魔力で作ったただの網だと話したけどね。

前に魔法で捕縛するのを見た事はあるが、初めての試みだ…イメージは投網かな、それとも地に広げ包み込むから…風呂敷?

途方に暮れ、つま先をじっと見つめる振りをしてイメージを固めた。


少し待つと、網の端に違和感を感じ『来た』思わず振り返りたくなるのを我慢して「どこ行ったんだよぉもう」なんて心細い声で呟き謀る。

警戒しつつソロリソロリと近寄るそれ、水音も無く波紋だけが水面に広がり『あと少し…もうちょっと我慢…よし、ここだ!』低い体制のままランナーの如くスタートダッシュして、茶巾を意識して網を絞り上げた。

水しぶきが上がり、何かがそこに居る事は分かる…が。


「捕まえたのかな?」


「バシャバシャ音はするけど、これ…見えない」


「よくわからんが、適当にぶっ刺せばやれるんじゃないか?」


リーが大剣の柄をつかみそう言うと、それの動きがピタッと止まった。


「会話を理解してるみたいだね、取り敢えず話ずらいし姿現してもらおうか」


暫く待ったが隠れたままなので、しびれを切らしたトリルが「もう、やっちまおうぜ」と言ったら慌てて姿を現した。


「へぇ~これがパーソンか初めて見た」


その姿は、子犬サイズのウーパールーパー、間抜けな顔が可愛い。

全体的に透けていてココア色、背中に白い線が縦に3本、そして内臓が見えない…内臓も透明なのか?それとも無いのか?


「スライム感満載だな、こいつ」「形が全然違うけどね」


「目と口がある…鼻がないな」「あーこれ欲しい…」


3人の瞳が一斉に僕を射抜いた。

ダンジョンの魔物はさすがに無理だと諭されその場は諦めたけど、生息地を探して絶対捕獲しようと心に留める。

パーソンを脅し透かし宥め案内させ何とか沼地を抜け出し出口に着くと、所在なさげに佇み待つ激昂が、ホッとした表情で手を振り出迎えた。

ボク達と激昂が捕まえたパーソン2匹があまりにあざと可愛かったので、その場で逃がしたよ。

長い一日が終わった。


「これで、今日の予定は終了した、みんなよく頑張ったな」


セーフティーゾーンを入ったところで、サザンの労いの言葉を聞いた。

それから、ここのルールを教えてくれる。


30階層に続くこのセーフティーゾーンにだけ、入り口と同じ認証板が壁にありここで登録を済ませる。

このままこの場に留まればボスに挑む順番が記憶されるが、地上に戻る魔法陣もあるので戻ると順番待ちの記録が抹消される。

ここで一度登録すれば、次回ここに転移して開始できるが、新たな順番が記憶され、ボス部屋に入る時も認証するので割り込みされたとしても扉が開かないシステムだ


「30階層は、ボス部屋の外に魔獣がいないから登録したら下の様子を見て決めるか」


そう促され30階層に足を踏み入れると、ドーム3個分の広さがある原っぱだった。

一番奥にでんと構える大きな扉があり、その付近に適当な距離を保った4組の冒険者達がいた。


「俺達5番目かぁ、広さを考えると今日は少ないのか?」


「戻って拠点でゆっくり休んで出直すのもありだけど、どうする?」


「ん~明日戻った時、もっと人がいたら後悔するな…多分」


「硬い岩の上じゃ無い事だけが、救いか」


「俺達はどっちでもいいぞ。どっちにしろ早く決めないと寝る時間が減ると思うけどな」


リーの突き放した言い方に少しムッとしながら、残る事にする。

昨夜より人も多いし場所も広い。おまけに今朝は、横暴な冒険者にも遭遇したので万全を期してシャー達5匹呼び寄せた。

その場が一瞬どよめいたけど…気にしない、安全第一だ!


野営の準備の途中に扉が開き、一組のパーティーが中へ入った。

これで4番目か…シャー達に見張りを任せ横になると、ものの数分で意識を手放した。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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