69 秘密の宝物
夕食をセルジュと二人で済ませて幌に戻り、早速説明書に目を通した。
宝箱から出たソレは、マイク付きイヤホン!ぴっと人差し指を立てて説明したくなるじゃないか。
ざっと説明書に目を通すと、電力代わりに魔力で動く優れモノなんだって。
はやる気持ちを我慢して、もう一度説明書をじっくり読み込んでみると、ここで一つ問題を発見した。
ボクはラグ達が見守る中、例の綺麗な紙に難しい顔で見入ってしまった。
「ノア…その紙に何が書いてあるのか、理解してるのか?」
ラグの問いに素直に頷く。
「うん、この紙は宝物の説明書で、ボクには書かれてある事が読み取れるんだ。」
3人は、紙を覗き込みそれから僕の顔を凝視したが、「何故?」とは聞き返さない。
お互い目配せをして、納得しているようだ…どう気持ちの整理をつけたか、それはそれで気になるところだな。
ボクは、もう一度説明書に目を落としてからみんなの顔を見て口を開いた。
「まず、この宝物はマイク付きイヤホンで、魔力を通すと装備している人同士で会話が出来るモノだ…ただ、一度装備すると二度と外せないと書いてある。」
「えっ!どういう事?」「付けっぱなしかぁ~。」「邪魔だな。」
「いや、肉体と同化する魔道具と書いてあるから、邪魔にはならないと思うけど…あと、オンとオフの設定が出来るから、繋がりっぱなしって事は無い。」
宝箱でこれを見た時「ヤッター!」と内心小躍りしていたが、取り外し不可となると話が変わる、いや、ボクはそれでもいいけど、みんながどう思うかが気になった。
「一生装備するのか…じゃ~使うか使わないか、どっちだ?それを決めないとな。」
ラグがボク達を見て問いかけ、「使った場合、連絡が密になってイイネ。」「四六時中繋がるのは、キツイ。」「ルールを決めよう。」「仕事中だけ…」等々、ひとしきり意見が出揃い…。
「コレを使用する、みんな賛成で良いんだな!」
ラグの言葉にボク達は力強く頷いた。
それに伴ったルールは、仕事中は常にオン、アジョンに戻ったらオフ。
アジョンでの休日はオフ、外に仕事に出た時は、休日でもオン。
使用中弊害があった場合、その都度ルールを補う事に決まった。
「でっノア、針金の先っぽに丸と少しづつ太くなった半月型のコレ、どう装備するんだ?」
ボクは、説明書どおり小さい球を耳に反対側を喉に当てて見せた。
ラグ達も真似して装着し、お互い確認し合っていたら、輪郭が揺らいでスッと消えてしまった。
同化すると知っていたけど、一瞬の出来事に驚きアタフタしてしまったよ。
ラグが「声を出すな、考えろ。」と、みんなを落ち着かせる。
すると今度は、みんなの意識が濁流のように渦巻いて、酔った状態になってしまう。
少し落ち着いてから、自分だけの心とみんなで共有する考えを隔てる練習に取り掛かる。
これが出来ないと、心がダダ洩れになってしまうので、みんな必死だった。
ラグとトリルは、この手の精神的試練に慣れていないのか、随分苦労しているみたいだ、額に玉のような脂汗が浮かんで半端無い。
早い段階で心と情報の乖離に慣れたボクとスミスは、「へぇ~トリル、キスしたんだ。」「ラグ…まだまだ子供だな。」などと、チラチラ盗み見えた心に含み笑いをしていた。
このイヤホンの情報量が凄い、耳で聞くだけじゃ無くその背景まで見える。
プライバシーも何もあったもんじゃないな…棲み分けをキッチリ出来ないと危ない。
「チョット待って。」「一旦オフにして!」
二人が悲鳴を上げたので、ラグとトリルが慣れるまで、今暫くはオフにする事となる。
精神的に疲弊した二人を休ませ、スミスとイヤホンについて話し合った。
「肉体と同化して取り外し不可なんて魔道具、ぼく聞いたことが無いよ。」
「多分、複製出来ないようにするためかな…例えばピクシー達の歴史を考えると、戦争利用できる道具になるからとか?」
「それはそうだけど、ダンジョンがそんな事気にする?」
「あ~どうだろう…」
神様は、気にするだろうなとボクの心の声。
ここで疲れた表情のラグとトリルが、話に加わった。
「紛失したり盗まれたりしないし、かえって良かったじゃん。」
「そうだなーティナに「これ何?」なんて聞かれないしな。」
「何その個人的な意見。」「尻に敷かれてんな!」「本当だね。」
余計な事を口走ったと、後悔をするトリルが顔を赤らめた。
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