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67 初ダンジョン挑戦―ババール初心者向け 2

激昂は、ババールの少年達を送りがてら、好奇心から踏み込んだ質問をした。

F~Eランクの主な依頼は、薬草採取と1~4階層の魔物の間引きだ。

最初の数回はギルド職員が引率して指導すると聞いて、そこは先輩冒険者じゃ無いんだと疑問を感じた。


魔物は小型ばかりで大した稼ぎにならず、5階層の薬草採取の方が危険度が高いので、売値が高く稼げると話す、アジョンと真逆だな。


回避アイテムで中型を避けながらの採取だが、今日のように運悪く襲われて命を落としたり怪我をする人も多く、ババール出身の冒険者の人数は少ないそうだ。

だから初心者の育成に人手が足りず、緊急要請の場合もダンジョン前の冒険者を頼るしかないらしい。


「僕たちは、そんな現状を何とかしたくて冒険者になったんです。」


少し前のめりな感じで、少年は語った。

最初は恐縮して口数少なかった少年達だが、慣れて来ると逆に聞いてきた。


「さっき僕たちを助けてくれた子達は、いくつなんですか?」


「確か13歳だったな。」「今年14歳だよ。」


「えっ、俺達とかわらない…」「マジか…」「何であんなに強いんだ…」


同年代と知り、余りの実力差を目の当たりにした少年達に動揺が走る。


「俺達もだけどアジョンの子等は、10歳から経験を積んでるからさ。」


「そうそう、比較しても仕方ないよ。」


なんて、慰めるも…それでもクレッセントは、10歳くらいでシャーをやり込めたんだけどねっと、多分激昂メンバーは心の中だけで呟いただろう。


4階層へ続く階段に着くと少年達が「ここで大丈夫です。ありがとうございました。」と、ホッとした表情で別れを告げたので「無理すんなよ、気を付けて。」と声を掛け折り返す。


「暇すぎて体が鈍るよな、クレッセントが待つ階段まで、ジョギングするか。」


サザンの号令で、軽い足取りで走り出す。


「中型スクロもあっさり片付けちまうから、俺達の出る幕ないな。」


「でもあれを難なく討伐できるのに、クロバネで動揺するって…ぶぶぅ。」


「本当だよな、なんちゅうポンコツぶりだよ。」


「G~って、叫んだ意味がいまだに理解不能だけど。」


笑い交じりの会話をしながら走る、程無く待たせた階段に戻り激昂も昼食を取った。

ボク達が激昂を待っている間、スミスがアジョンの不死依頼が殆ど皆無なので、ここでホーリーカペルトの検証をしたいなどと言い出した。

スミスがこういった自己主張をする事が珍しいので驚いたが、確かにチャンスだと考え次の階層を任す事にした。


―6階層

長方形の石が積み上がった通路…おぅ!ハ〇ナプ〇ラで見た遺跡のセットみたいだな、砂漠が舞台だった映画で、こんなシチュエーションがあった気がする…リアルプトラにちょっとした感動を覚えた。

何だろう、たまに思い出とかち合う前世の記憶で、盛り上がる相手がいない事が少し寂しいかな。


スミスは早速ホーリーカペルトを繰り広げ歩く、通路の奥から無機質なスカルがカクカク近づき、腐臭を纏うデッターも不用意に近寄るが、敢え無くジュッと溶ける。

毎晩寝る前に練習してると聞いていたが、実際目の当たりにして前より広くなっているなと感じた。


「Lvが上がって、威力と輝きが増した気がするんだ。」


スミスが落ち着いた声で、嬉しそうに語る。

静かに歩を進め穢れが浄化されて逝く様は、厳かで儀式のような雰囲気を醸し出す。

スミスが別人に見えた瞬間だった。


6階層を出た階段で「俺も一人でやってみたい!」と、トリルが力強く主張したので、ならば順番にチャレンジしようという事になり、次がトリル8をラグ9がボク、そして10階層のボスは皆で挑むという運びになった。

激昂をチラッと見て確認したが、注意を受ける事無く静かに見守っている。


―7階層

古びた遺跡、聖属性と身体強化付与を受けたトリルが一人前に出る。

「ウォォォー!」と、雄叫びを上げ大剣を横に薙ぎ払い、不死軍団に果敢に挑む。

ボク達は、念の為ホーリーカペルトを展開した場所から、苦笑を漏らしそれを眺めていた。


「おぅ~吠えてるな。」「さっきとは大違いだね。」「トリルらしい。」


付与の継続を数回受け、トリルの勇ましい雄叫びに飽きた頃、無事出口に着いた。

階段で肩で息をするトリルは「ちょっと待って…」と言った切り、言葉を失っていた。

だが、さっきからウズウズしていたラグは「次は俺の番だな!」と宣言して、サッサと階段を下りて行く。


―8階層

古びた遺跡がさっきより崩れた感じで、石壁は所々崩れ石畳に亀裂が走っている。

さしずめ廃墟と呼ぶ方が相応しい佇まいだ。


静かな闘志を胸に秘めたラグが、スッと前に出る。

6・7層の不死軍団は、奥から群れて襲って来たが、この階層の不死は、天井壁床からフワッと飛び出し襲い掛かって来た。


上下左右に気を配り次々矢を射るが、多方面からの攻撃は今のラグには荷が重い様だ…多分この手の攻められ方は、トリルも苦手だろうな。


ラグが通り過ぎた後で沸いて出る不死は、どうしても打ち漏らしてしまうけど、後ろにホーリーカペルトが展開されて、フォローも完璧だから問題無いけどね。

でも「あ~!」「クッソ~!」と己を叱咤するラグが気の毒であった。


―9階層

古びた廃墟となった遺跡、さぁ~て僕の番だ。

ホーリーレインを前面に展開するか、ボクを中心に展開するか迷っていたが、さっきの階層で方針が決まった。


ボクを中心に前後左右満遍なく、ホーリーレインの光の雨が降り注ぐ。

全ての面が光の粒の効果で滴り落ち濡れ、その場所から湧き出る不死は同時に浄化される。


全方向展開する予定じゃ無かったから、防水の準備を怠ったな…漏れなくボクもずぶ濡れです。

でも…気分は悪くない、光の粒は暖かで人が触れると穏やかな気持ちになる。

フンフンと鼻歌交じりで散歩を楽しんでたら、出口に到着していた。


―10階層

髪と服を温風魔法で乾かし終わってから、階段を下りる。

そこには、高く広い空間とやたらとデッカイ扉が閉ざされていた。


「この先にボスがいるのか…」「どう攻める?」


「俺、ホーリーカペルトとレインで終わる気がするわ。」「あー。」


重い扉を協力して押し開くと、そこにダンジョンボス・スカーリーレジェントが座して待つ。

落ち窪んだ眼孔の奥にチラチラゆらめく紅い炎が、ボク達の姿を敵とみなし捉えた。


禍々しい気配を纏うスカーリーレジェントが玉座から立ち上がると、その気配が色濃く押し寄せ背中に冷たい汗が流れる。


「ノア、奴より先にホーリーレインをかませ!」


ラグの指示に従い、直ぐ前方にレインを展開した。

「ヴゥガァ~」と地の底から湧き出たような呻き声をあげるが、光の雫に当たった場所から骨が溶けるように霧散すると同時に、奴の驚くべき回復力で修復され決定打にならない。


「回復力が半端無いよ、どうする?」


思わず情けない声を上げたボクをラグが励ます。


「大丈夫だ、あれはあれでジワジワ削られウザいと思うぞ。」


光の雨が降り注ぐ中、ラグが右から矢を射り注意を逸らすと、左から聖属性と強化付与を受けたトリルが大剣を振りかざす。

片腕でラグの矢を防ぎ、もう片方の腕でトリルの大剣を受け流そうとしたが、ガシッと骨をとらえた場所を切り落とした。


骨を断たれ狼狽えたのか、スカーリーレジェントが後ずさる。

多分、普段なら骨を失っても修復できるので何て事無いのだろう…が、今は違う。

切られた骨の先で光の雫と修復が拮抗を保ち、新たな骨が生える邪魔をしてた。

怒ったスカーリーレジェントが、残った手に真っ黒い禍々しい魔力を集める。


「アレ何か、やばくない?」「トリル、早くあっちの腕も落として!」


ボクとスミスが叫ぶと、思い切り地を蹴り上から切りかかる。


「うぉぉぉぉー!」


必死の形相で吠え大剣を振るうトリルを嘲笑うかの如く、黒い魔力をボクとスミスに向け僅差で放つ、ボクは咄嗟に結界でシールドを張った。

ドゥゥン!黒い魔力の激しい衝撃で、部屋全体が揺れ視界が遮られる。


「ノアー、スミスー!」「大丈夫だ、レインがまた展開してる。」


「生きてるぞ!」「あの周りに纏わり付く黒い魔力を霧散させるんだ。」


激昂のアドバイスを耳にしたスミスが、黒い魔力なら浄化だと思い付きホーリーカペルトを繰り広げた。

スミスの考察が功を奏し、ボク達の周りに纏わり付いてた黒い魔力は、霧散した。


黒い魔球を投げる事を優先したスカーリーレジェントは、両腕を失い立ち尽くしていた。

ラグが太もも辺りの骨を凍らしトリルが砕く、その衝撃で前のめりに倒れ晒された首を、更にトリルが追撃し打ち砕いた。

そのまま骨が再生される事は無く、光の雫で浄化され消え去る。


「やったー!」「何とかなったね。」


「あの黒い球がノア達に当たった時は、肝が冷えたぜ。」


部屋の隅で見守っていた激昂が、祝いと労いの声を上げ駆け寄る。


「おめでとう。」「よく頑張ったね!」


帰りは、玉座の裏に人が通れる通路があり、1階入り口まで戻れる仕掛けだ。

そんなナイスなシステムがあって、本当に良かったよ。


「おっと、帰る前にボス部屋の宝箱確認、忘れんなよ!」


そう言ってリーが指差す先に、ボク達は駆け寄った。

期待を胸に開けると


「何だこれ?4個あるぞ。」「見た事無い形だね。」「外れかな…」


「取り敢えず持って帰ろう、せっかく宝箱から出たんだから。」


そう言いながら、ボクは全てバックにしまった。

みんなは知らないだろうが、コレの事をボクはよく知ってるよ。

あとで説明するにしても、知っている事をどう説明すればいいのか悩む。


何でこんな物がと思って少し考えたら、多分神様の気遣いかな?なんて考えが浮かんで、小さくクスリと笑った。

だったら、ありがとう神様。大切に活用します。


拠点の幌に戻ると、サザンが明日の予定を話す。

午前中は今日の反省会で、午後から半休だと口にした途端「やったー!」「ヒャッホ~」と、

主にリーとトリルの声が響いた。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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