64 冬の冒険者etc
アジョンを出発してハサラ村と砂漠で野営、暗くなる前にババールへ到着予定だ。
---出発初日の移動中
「俺達をCランクにしたい奴って、誰だろうな?」
ラグが疑問を呈した、話を聞いた時から気になってみんなも色々考えた様だが、
全く思いつかないらしい…そいつに、どんな思惑があるのか見当も付かないけど
気になるな…。
「どっちにしても面倒な奴なんだろう、関わり合いになりたくないな。」
「でも用心する為、人物を特定しておく必要はあるかもね。」
トリルの言葉にそうスミスが返事を返すと「なるほど…」とボクやラグが頷く。
ここで考えても答えが出そうにないし、アジョンに戻ったら昇格の話を持ち出したチムニーに、詳しい事情が聞けるまで詰め寄る覚悟で挑むか!とボク達は決断した。
今頃チムニーの背筋に悪寒が走っているかも、フフフ。
---旅の途中
サラサラの砂が溢れるほどあるので、休憩になったらワン達が喜んで砂遊びすると思ったのに、拒絶された。
何故だろう…熱いのは砂浜も同じだから関係ないだろうし、乾燥し過ぎてるから
埋まるのが不快なのかな?試しにディメーションに運んで少し湿らせてみると…
小躍りしている様子が伝わって来た。
ピコピコピキュンとお遊戯してる様な仕草が可愛い…おもわずニマニマして
顔が緩むな~ここまで喜んでくれるなら、絶対この砂をお持ち帰りしないとね!
張り切って暗くなるのを待っていたのだが、激昂の目を盗みコソコソ運び込む作業に骨が折れた、本当に時間が掛かって苦労したよ。
---ウルフ任せで楽チン
激昂の幌馬車は馬を使っているので御者が必要になる、一人だと退屈なので2×2で交代しているそうだ…ご苦労様です。
クレッセントは基本ウルフ達が引くので、ボク達はそれぞれ好きな時間を
快適に過ごせる。
移動中の警戒もウルフ任せだからな、激昂もウルフが来てからそこは楽になったと喜んでいた。
しかしウルフは3匹なので、どうしても人手が必要になるようだ。
現状ボク達は狼手に事欠かないし、合わせて13匹いるからね!
勝手にローテーションを組んで仕事するウルフ達は色々頼りになる…
後、馬の世話もいらないし。
「ノア達って、本当に楽してるね。」
寝る時の見張りもウルフ任せなので、激昂メンバーから本当に呆れた顔をされた。
---昼休憩時
食事がいらないシャー達に警戒を任せ、8人で楕円になってご飯を食べる。
アイテムバックに頼っているので調理は必要ない。
激昂は、アイテムバック持ちのセルジュとサザン二人から食料を受け取り、
ボク達がそれぞれ自分のバックから取り出す様をジトっと見詰めた。
「お前等って、何か恵まれてるよな…。」
リーに同調して激昂メンバーが頷き、オルムが空を見つめ昔を思い返し呟いた。
「そういえば…シャー達を使役したのって、依頼初日だっけ?」
「最初からシャー達がいたのか…羨ましいな~。」
「こいつ等 ぜってぇ~初心者の苦労を知らないよな!」
変なノリでディスり出したので、いやちょっと待って…よく考えてみて、
見習いだったんだよ?右も左もわからない時に、あの大きいくて黒っぽい
荒々しいウルフと鉢合わせしたんだよ?牙剥き出しで襲われたんだよ!
簡単な事で無かったんだと、みんなで協力してシャーと戦い、ねじ伏せ使役した
苦労を必死に訴えかけた。
「そう言われれば、そうか…。」「スマン悪かった。」
「怖い目に遭ったんだね。」「シャー相手に頑張ったんだな。」
ボク達の力説を聞き入れ、納得してくれて良かったよ。
まぁ~初日の苦労なんて、その後の事を考えるとお釣りが来るけど…
それは、ボク達だけの秘密だよ。
---昼休憩以外の小休止
馬に水分補給させる為に、ちょくちょく休憩を入れる。
ウルフ達も幌に戻りディメーションの水場へ駆け込む、その様子を見ていた
セルジュが首を傾げ聞いてきた。
「その幌の中一体どうなってるの?あれだけいるウルフ達が余裕で入っていくし、そもそもノア達の馬車って影が薄いよね?中の様子が見えない事も不思議だよ。」
あっ…やっぱり気付いた?前もって考えてきたんだ。
「空間魔法で中を広くしてるからね、あと…ただでさえウルフが目立つから、
軽い隠ぺいを掛けてあるんだよ。」
「へぇ~メンバーの中に空間と隠蔽使いがいるんだ、どっちも珍しい魔法だから
是非詳しく話が聞きたいな。」
近くで話を耳にしたサザンが興味深い様子で訊ねてきた、魔法を主力としているからかな…。
自分の事だし後々面倒なので、『誰が』かは絶対に教えないと決めていた、
ここはきっぱり断るぞ!
「個人情報だから無理です、答えられません。」
「え~そんな事言わないで、頼むよ~。」
「ダーメッ!」
それでも何とか情報を引き出そうと暫く粘っていたが、
見かねたセルジュが窘めたので、恨めしそうな顔をして諦めてくれた。
その様子をクレッセントのメンバーは、生暖かい目で傍観していたけど。
---先輩風乙!
アジョンの冒険者ギルドは過保護だと、オルムが言っていた。
どういう事かと尋ねたら、見習い中は砦から外の壁までしか行動できない…が、
それは仕方ない許容範囲だ。
しかし、Dランクになっても成人していなければ、保護者が付かないと砂漠や
王都へ行く森越を許可しない、他の地域はそこまで厳しく管理しないんだって。
まぁ~アジョン出身の子供という注釈が付くらしいけど…
よそから来た人は、言っても聞かないらしいから。
それにCランクになってしまえば、未成年でも実力を認められて自由に行動できるようになるんだけどね。
オルムの話をフンフンと聞いた後、何か思う所があったようでスミスが答える。
「でも、ババールは12歳にならなきゃ冒険者になれないんでしょ?だったら早くから見習いになれるんだから、アジョンの方がいいかな。」
「まぁ~そうだけど、その代わり12歳になったらランクに関係無く自己責任で
どこだっていけるぞ。」
リーがニヤッと笑い、悪魔の囁きで唆す…が。
「あ~でも、それって逆に怖くないか?」
「そうだよね~自分の力量見間違うと、死と隣り合わせって事だもんね。」
「ある程度、指針があるって大事だよね。」
「ちゃんと理由があるんじゃないか?初めて行った森だって大蛇が出たしな。」
ボク達がことごとく、アジョンの過保護なシステムに肯定的な意見を言うので、
ここでも激昂に呆れられた。
その後、激昂の幌の中で…
「あいつ等、もうちょっとヤンチャでも良くないか?」
「全く優等生かよ、同期最速Dランクなんだからもっと浮かれろよ。」
「しかもCランク寄りな!」
「年誤魔化してないよな、じじむさい奴等だな。」
「先輩としてだな~調子に乗った所をビシッと締めたかったんだがな…。」
「まぁ~ノアとその友人だから。」
散々な言い方をするメンバーだったが、苦笑したセルジュの一言で話が終わったらしい…そこでボクを引き合いに出したのは何故だ?納得いかない。
---ポンコツノア
休憩場や人が多くなると、最近のシャー達は自主的に小さくなる。
この気遣い!本当に賢くて強くて可愛くてしかもカッコイイし頼れる奴等だと、親馬鹿丸出しで褒め称えるボクを見た他の従魔達に
「あ~ハイハイ。」「そうだね…。」「分かってるから!」などと、冷たくあしらわれ…アッ!やばい。
ドライも壊滅的に可愛いよ~それにゼクスやツヴァイも力強い所がカッコイイし、ワン達だって和むし癒されるよ~などと、拗ねてしまった従魔達をなだめるのに暫く苦労したのであった…深く反省、今後気を付けよう。
ラグ達?ラグ達はその様子を呆れた視線で眺め
「ノアって、やっぱり抜けてるね。」「たまにポンコツだよな。」「そうだな。」
なんて言いながら、ゲラゲラ笑ってたよ…くっそぅ~忘れないからね!
---ライフ発表します。
砂漠の体調管理は難しい、日が昇れば焼け付く太陽に苛まれ、日が沈めば凍り付くような寒さに晒される、そしてクーラー病の症状が出て気怠くなる…よね?普通。
ところがどっこい、ボク達にはライフがある!寒暖も日焼けも関係無い…。
万能過ぎて逆に怖いな。
そしてここからが問題…激昂に分けたいが、どう説明する?そこで走行中みんなとシンキングタイムに突入。
「遠征何回目だっけ?激昂の人達、疲れが出てるよな。」
「馬の世話とかぼく達より作業が多いし、大変そうだよね。」
「ライフ分けるのは無理なのか?充分な量を作って来たんだろ?」
「分けるのはいいけど、出所を聞かれると困るんだよね、材料とかほら…」
ボク達がどう説明するかライフの扱いに困っていると、ドライが名案を思い付いた。
((私達ピクシーが齎したと、言えばいいんじゃない?))
「おっ!流石ドライ賢い。」
ドライの案に乗り、詳しく聞かれても分からないし貴重品だよと話して、ライフを激昂に提供する。
引手と交代用の馬が4頭にウフル3匹そして激昂の4人、全部で11本×10日分を渡して、効果と継続時間の説明をした。
滞在中、馬には必要無いし足りるよね?往復分+αあるから考えて使ってね。
こんな貴重品、値段が付けられんと遠慮してたし、もっと早く欲しかったなっと恨みがましい声も聞こえたが、概ね感謝されたので良しとしよう。
それに、最初から出さなかった理由がある、様子見したかったんだ。
本当は、もし平気そうなら説明が面倒だったので渡す気が無かったからね。
そう思うと、ボクって都合の悪い事に蓋をする冷たい奴かもな…どうなんだ?
((やれやれ、ノアは何を心配しているんだか…。))
((本当よね、見て見ぬ振りできないから頭捻って考えてたのに。))
従魔達の呆れる声が聞こえて赤面してしまった、どうせポンコツだい。
((アッ…拗ねた。))
---旅の目的地
夕日が沈み冷気が忍び寄る、薄墨に景色が塗り変わる頃 ババールダンジョン前に到着した。
ここの印象は、町でも村でも無く冒険者や商人が混在した部落の様な集まりだった。
当然宿も無いので、思い思いのテントや即席の建物で体を休めるようだ。
ダンジョンを囲み幾重に重なるその光景は、圧巻であった。
「ノア、凄いでしょ驚いた?」「うん、兄さんビックリしたよ。」
丁度いい具合に空いている場所を見つけ、並列で空間を開けて幌馬車を停めた後、滑らないよう車輪に板を噛ませる。
二台並んだ幌馬車の空間に、風通しの良くなる細工を施したコの字型の土壁を作り、天幕を張る。
大きく余裕のある馬屋の完成だ…サザンやるなぁ~。
そして、歯噛みを外し馬を休ませる、大きめに作っているのは、留守番するウルフ達の日除けのためなんだろう。
前回も激昂は、テントを張らず幌で寝泊まりしていたようで、ボク達もそれに倣う。
その方が絶対安全だな、これだけ人が集まっているんだ中には悪人もいるだろう、けどウルフ達が見張っていれば安心だ。
それに並列で並んでいるのも好都合だったよ、コッソリ結界を張れるからね。
「クレッセントは、初めての場所で色々見て回りたいよな、だが今日は我慢して明日の為に旅の疲れを癒してもらいたい。」
夕食後、サザンがそう言って締めると「初ダンジョンだもんね。」「そうだね、楽しみだな。」「体調万全にしとかなきゃ!」「うんうん。」明日への期待と興奮で、異議なしと素直に頷く。
するとリーとオルムが薄目でボク達を見て何故か嘆いた。
「お前等、聞き分け良すぎ。」「本当にもう、この子たち何なの?」セルジュが、頬を掻いて苦笑いしていたな。
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