63 冬の冒険者+π
「それでさ~朝飯作ったら母ちゃんが叫ぶんだぜ、いくら俺でも傷付くよ。」
「それは災難だったね。」
「俺は久しぶりにニールの相手してたよ。」
休日二日目、ボクは溜まり場でディメーションの拡張に勤しんでいた。
ようは、ミアを避けて逃げたのだ。
あの後、母とミアが仕事に戻ったタイミングで父が食事に来てシシリーと会い、
その日の夕食の席でも、シシリーの話題で賑わった…一人を除いて。
終始不機嫌で無言を貫くミアを示し合わせたかのようにスルーしていたな…
あれワザとだろ、ミアがいつ爆発するかと思って内心ヒヤヒヤだったよ。
でも…まぁ~ミアに遠慮するのもおかしな話だからな、仕方ないか…。
「でさ~孤児院の子供達が凄く可愛くてね…」
別に約束した訳じゃ無いのに、いつの間にかチームが揃って寛いでる。
些細な事だが、そんな状況が何だか嬉しくなってニマニマと顔がほころぶ
背を向け作業をしているから、バレてないけどね…さて、一息入れよう。
ボクも輪に交わりセルジュとシシリーの話でもするか、みんなどんな顔するかな。
「そろそろ昼だな、飯どうする?」
ラグがそう言ったタイミングで、トントンとドアを叩く音がした。
スミスが返事をしてドアを開けるとサザンが苦い顔をして立っている。
「お前等チョット話がある、激昂の部屋に来てくれ。」
そう言うと、ボク達の返事も聞かず背を向け行ってしまう、慌ててボク達も後を追った。
「俺達なんかやったか?」「いや…」「ノア何か聞いてる?」
サザンの後を追いつつ、顔を寄せ小声でお互い探り合うが何も思い当らない。
激昂の部屋に入るとテーブルに軽食の用意がされて、兄さん達が座っていた。
「お前達も座ってくれ、話しながら食べよう。」
サザンに促され座ったが、呼び出された理由が分からなくて料理に手を伸ばす雰囲気じゃない。
ボク達がモジモジしていると、セルジュが笑顔で「食べていいんだよ。」と声をかけたので、不安を抑え込んで手を伸ばした。
最近の依頼の傾向や新人の話、怪しげな噂話などを交えた話題で盛り上がり、気が緩み場が和んだ頃…サザンが突然切り込んだ質問を投げかけた。
「ところでお前達、Cランク昇格断ったんだって?」
あ~そのことが聞きたかったのか…納得。
何で知ってるの?と、驚いたボク達の表情が素直な反応を示していたんだろう、激昂があ~やっぱりという顔をしている。
「ノア達の耳には届いて無かったんだね、チラホラ噂になっているよ。」
この噂はギルドから漏れたわけでなく、ボク達をCランクに上げたかった人物が断られた腹いせに流したらしい…何なんだ?本当に迷惑この上ない。
ショックを受けていたボク達を気遣うように、セルジュがそう説明した。
人の口に戸を立てられないって事だね…ふぅ~。
「でっ、断った理由はなんだ?まさか俺達に遠慮したんじゃ無いよな!」
リーがイラっとした声できつく問い質す。
「違うよ。」
まぁ~確かにチラッと頭の隅に浮かんだけどさ…咄嗟にボクが否定した後、ラグが椅子に座り直し真剣な表情で続けた。
「俺達がその話を受けた時、それぞれ3日間真剣に考えて、まだ経験が足りないと答えを出したんです。」
ラグの真摯な態度を暫く見詰めた後、一応納得したようだ。
「経験か~それならそうと相談してくれれば、俺達がもっと協力したのに。」
オルムが不満気に呟く、いや…ババール遠征で忙しそうだったでしょ?
そんな事より誰だ?ボク達の昇格に固執した奴って…いや追及しない方がいいのかな?きっと面倒事だ。
「普通昇格って聞いたら飛び付くもんだけどな、お前等どんだけ出来が良いんだ。」
「ハァ~無いわ~かわいげないわ~」
リーとオルムが大袈裟なポーズでからかって来たが、そんな二人の横で眉間にしわを寄せ考え込んでいたサザンが意を決したように全員に問いかけた。
「なら、経験を積ませるか?クレッセントと一緒にババールへ行くってのはどうだ。」
「ノア達と一緒か、嬉しいな。」
セルジュがそう答えると、リーとオルムも「問題ない」「いいよ」と、軽く返事を返す。
突然の提案で驚いたが、ボク達には願っても無い話だ。
激昂の予定は、明日にでもババールへ立つ筈だったが、ボク達の準備を考慮して明後日出発する事にした。
そこから、それぞれ家に帰りババールへ行く事を告げ準備に取り掛かる。
ババール迄3日かかると聞いていたので、話し相手がいないのは退屈だし寂しいという理由で、ボク達も幌馬車で行く事にした。
念の為ライフも大量に作りたいが時間が足りないので、繊細な魔力操作が得意なスミスに手伝ってもらう。
スミスは、錬金のステータス持ちじゃ無いけど、ライフの作り方を伝えたかったので丁度いい。
ボクが旅に出た後、これを任せられるのはスミスしかいないと考えていたからな。
次の日、サザンとラグがギルドへ申請に行き、激昂と一緒に行動を共にする事が条件で、クレッセントのババール行きが許可された。
正式に許可が下りたので、激昂の部屋でおおよその日程を立てる。
まずダンジョン特有の空気感に慣れるため、初心者用に潜るとサザンが説明する。
「初心者用なら魔獣も下級ばかりだ、でも油断するなよ。」
「初心者最下層は地下10階だけど、スカルやデッターは経験済みだしそこまで心配する事無いさ。」
「あそこなら一日で終わるんじゃない?ただボスのスカーリーレジェントに手こずるかもな。」
何やら楽し気にリーとオルムが話している。
スカーリーレジェント…スカルの上位種か、前世に照らし合わせると、スケルトン ジェネラルスケルトン リッチみたいなもんか?それともジェネラルかな…。
ボク達の様子を見ながら臨機応変に進める事になり、ダンジョンの詳細をギルドの資料室で調べる様に指示を受け解散となった。
全ては教えてくれないんだね、こういう経験もボク達の糧となるからかな。
ボク達は初心者用だけじゃ無く他の入口の事も併せて調べると、それぞれ11階~20階、21階~30階と階層ごとに分かれていた。
延々と階段が続くのかなと思い、少しげんなりしてマップを確認すると何か表示が不自然だ。
あれこれ意見を出し合ったが、ボク達の知らない何かがあるんだなと結論付け考える事を止めた。
事前に資料を調べて、かえって混乱するってどうなんだろう?
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