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61 冬の冒険者


年が明け ノアは、13歳になった。

寒くなると魔物の数がガクンと減るので、冬の冒険者は割と暇になる。

植物や虫の魔物は、寒さに弱いんだろうから 当然かな。


なので この時期Cランク以上の冒険者達は、南に拠点を移して活動する事が増え、激昂も同様で 寒さが厳しくなる11月半ば頃から度々街を留守にするようになっていた。

不定期で戻って来るが、2~3日街で休養したらまた旅立って何週間も帰らないという具合だ。

お陰でミアの機嫌がすこぶる悪い、この上セルジュに彼女が出来た事を知ったらどうなるか…考えるだけで空恐ろしい。


一方冬の低ランク冒険者の多くは、近場の護衛や各々修行をしたりして冬をやり過ごす。

1年を通して稼ぐには、厳しい現実が待っていた。

特に護衛は争奪戦だ。


今回ありがたい事に、コトネル村に肉の買い付けに行く商人ウェバーと羊毛の買い付けをする商人ハント 二人一緒に護衛する仕事を指名で受けた。

二人は、ストラダム村の出身者で前回墓所の警護をした時の仕事ぶりを見て、クレッセントを気に入ったと語った。

嬉しいな、期待に沿えるよう頑張ろう。


冬の護衛で注意しなければならない魔物は、スノウセチ 残雪に擬態し隠れてる。

あいつは、綿毛の様にふわふわした体で鶏卵くらいの大きさの冬限定の魔虫。

可愛らしく一見無害に見えるが、触れると吸血し白い体がみるみるうちに真っ赤に変色する。

少々血を吸われるなら大した事無いと思いがちだが、ところが群れで行動する習性があるので、全身に纏わり付かれたらあっという間に血を吸いつくされ、干からびてしまう恐ろしい魔虫だ。


スノウセチの対処法は、夏に収穫した白い花を加工し、それを燃焼させ空気中に拡散させると寄り付かなくなる(なんか 蚊取り線香を思い出すな)

朝晩関係無く四六時中襲ってくるので、移動中は常に香炉のような装具を幾つか馬車に吊り下げる。

しっかり準備さえしておけば 大丈夫だ。


今回の移動は、荷車を止めて色々改良を施した盗賊の幌馬車を使う事にした。

主にプライバシーに重点を置いた改良で、ボク達四人と従魔以外は、出入り出来ない結界を張ってある。

中の様子を窺い知ることも出来ないし、ついでに外に音が漏れない効果も付けた。

その上 全体に軽く隠蔽もかけているので人目にも付きにくい。


隊列の先頭は、ボク達の幌馬車で それをロックウルフ達に交代で任せる。

そして後続は、依頼人2台の荷馬車。

左右と後方をボク達と残りのウルフ達で守った。

旅は、順調でアクシデントも無くアジョンを出発して3日目の昼にコトネル村に到着。

商人二人とラグが村長の宿舎へ向かった。


「ありがとう、君達に護衛を頼むと道中魔物に襲われにくいから安心だよ」


「そう言っていただけると光栄です」


「買い付けや商談をして明後日出発の予定だ、帰りもよろしく頼むよ」


幌馬車の中にディメーションを常時設置してあるので、目的地に到着したシャー達は、既に生命樹のそばで寛いでいる。

本音を言えば気兼ねなく休まるので、ボクもそっちで休みたいがそうもいかない。

おとなしく宿舎でお世話になる事にした。


「その球ずっと浮かせてるよな。疲れないのか?」


ボクを中心に衛星のようにクルクル浮遊する3つの球を見たラグが聞いた。


「ん~最初は、大変だったけど 少し慣れたかな」


ボクは、あの日からずうっと 寝ている時以外 球を浮かせ続ける努力をしている。

最初の1個を無意識で操れる迄に2週間近く掛ったが2個目は、10日程で慣れ そして今は、3個目を投入して絶賛努力中だ。


「その球見ていると、突っつきたくなっちゃうよね」


「スミスそう言いながら突っつくのはやめて!3個目投入したのは、最近なんだから操作が難しいんだよ」


「結局 最終的に何個浮かせるつもりなんだ?」


「ん~常時は、5個くらいかな。10個の予定だったけど思ったより邪魔でさ。でも、戦う時に100ぐらいあると便利な気がする」


トリルの問いにそう答えると、絶句され「ひゃっ100?」「戦争でも始める気かよ!」「あ~でも ノアだもん…」 散々な言われようだな。


「あくまでも目標だよ。使える様にしておけば いざっていう時安心でしょ?それに、魔力操作の練習にもなっているんだよ」


「そう言われてみればそうだよな、俺も効率的な練習方法考えないとな。一度に5本の矢を飛ばせるようになったんだがいまいち不安定でさ、普段から具現化していれば安定するのかな」


「矢を常時具現化してたら危ない人に見えるからやめなよ」


速攻で否定したスミスの言葉が腑に落ち ラグは、しょげた。


「あ~俺 ノアから貰った小さいナイフで、魔力を纏わせる練習しようかな。常時手に持っていてもあれだったら目立たないかもな」


早速 ペーパナイフを手に取って冷気を纏わせるトリルをラグが、羨ましそうな目で眺めている。


「チェッ お前等だけ狡いぞ!危なくて部屋で気軽に練習できないんだよなー外は寒いしア~ァ」


「だったらディメーションの中でやったら?今から行こうか」


「スミスは、どうなの?」幌馬車に向かいながらスミスに話しかけた。


「ぼくは、毎晩寝る前に魔力を使い切るまで練習しているよ。前より少しだけ広くなったかな。」


「へぇ~ じゃ~今夜成果を見れるんだね」


「そういう事になるのかな?そんな事言われたらなんか緊張してきた」


宿舎から表に出ると、村の子供達が集まってこちらを窺っていた。

その中に見覚えのある顔が…何でかな?


「何か用?」


「あ、こんにちは」


「狼が引く馬車の事を聞いたから、珍しくて見に来たんだけど…」


「それに 狼の背に乗っている子供の話も聞いたよ、お前達なの?」


年長者らしい二人の男の子が、質問した。

ボク達の事だと答えると、わっと歓声が上がり取り囲まれ さらに質問攻めにあった。

そして、数人の子供達が狼を見たいと言い出したので、シャー達に呼び掛けたら2m前後の狼が13匹も現れたので、子供達は怯えて少しパニックになった。


まぁ~時間が経てば、危険が無いと理解してシャー達と触れ合っていたけど。

最初に話した年長者の二人は、ボク達よりふたつ年上だった。


「俺 牛飼いのバグっていうんだヨロシク」


「同じく牛飼いの…って バグ牛飼いは、卒業したろ。俺はザザよろしくな!」


あっ 道理で、前ここに来た時に挨拶したあの子達だ。

デクシラを送り届けに来た時、もうもうと砂埃を舞い上げ牛を追い立てていた光景を思い出した。


「ノアですヨロシク。3年前に来た時会ってるよね」


「あ~あの時の!ノアよく覚えていたな。俺ラグロス 気軽にラグって呼んでくれ」


「ぼくは、スミスよろしくね」


「俺は、トリルだよろしく」


去年成人を迎えたバグとザザは、牛飼いの仕事を卒業して 春になったらムバクーヘンの街へ行き冒険者になると得意げに語った。

そのために、次の牛飼いになる村の子と2年間一緒に仕事をして、鈴杖の扱いや犬への指示の出し方 そして小型の魔物も出るので、仕留め方を教えるそうだ。


そうやってコトネル村の子供達は、仕事を引き継ぎ成人する年まで手伝うのが習わしらしい。

その後 村に残るか出るかは、自由だ。


ふたつ下のクレッセントがDランクだと知った二人は、少なからず驚いていた。

どうしたらそんなに早くランクが上がるんだと聞かれたけど…運が悪かったから?

たまたま 盗賊に遭遇したり、アームモンチの討伐にかかわったり、人攫いの一団に出会ったり…最初は、興奮して聞いていたが 話を聞くにつれ静かになり目を丸く見開き口をポカンと開けていた。

ボク達も話しながら どこか他人事のように思えて来る。

気のいい二人との話は、弾んで そのまま楽しく暗くなるまで語り合った。


次の日は、せっかくなのでデクシラに会いに行くと決めていた。

シャーの背に乗り のんびり揺られながら家に向かう。


久しぶりに会うデクシラは、ボクの身長が伸びたからか 少し小さくなった気がする。

突然の再開に涙を滲ませ喜んだデクシラは、ひ孫のメイムの世話をしている時。

ふと ボク達兄弟を思い出すと昔を懐かしむ優しい口調で話す。

ボクが家族や町の近況を教えると、遠い過去を見るような目をしていた。


暫く悪戯盛りの幼女の後を目で追いながら話をしていたが、遊び疲れて眠くなったのかメイムがぐずり出した。

メイムを優しく抱き上げ「もう 村から出る事は、無いわね」と 寂しそうに呟いた。

デクシラに「必ず また会いに来るから」と 約束してボクは、彼女の家を後にした。




最後までお読みいただきありがとうございます。

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