59 アセノス火山
12月に入り、日増しに寒さも厳しくなってきた、はぁ~冬眠したい…。
ボク達は今、激昂と共にアセノス火山を目指している。
ガリラヤ村から戻って数日後、セルジュが行先のリクエストを聞いたので、
鉱石を発掘出来る場所に行きたいと答えたからだ。
ボクのお目当ては、ルビーのように赤いクロコアイトと銅色で粒状のニッケリン
この2種類だ、見つかるといいな。
鉱山の魔物はモーローやカーンが主流だと教えて貰い、生態を調べたら
どうやらモグラとコウモリに似ているようだな。
現世の物語だと髑髏やゾンビが出て来るところなんだが、よくよく考えたら
墓場でもないのに何故そこにいると、突っ込んでもおかしくない設定だよね。
何かしらの事故で死体が放置された時、魔力に触れ魔物化する話を聞くので、
その場所で、落盤事故でもあれば別だが…ぅゃ?一瞬頭に浮かんだ言葉は消去だ。
岩場の近くにあるソリス火山は活火山で洞窟の中は灼熱だと聞いた。
でもそこは、ドワーフの縄張りで不用意に足を踏み入れると後々面倒だそうだ。
ん?温泉を利用しているけど、それは大丈夫なのかな…。
とにかくそういう事なので、
冒険者が依頼などで利用する、アセノス火山まで赴くことになった。
アセノスは休火山だから、耐火性とか気にしなくていい事が利点だな。
入山者が多いので、麓には無料で使用できる野営場や
素泊まり一人500シリ、朝夕食事付きで1200シリの宿場町がある、便利だな。
片道2日半の距離があり一昨日の昼出発したので、
今アセノス火山が目の前にある、雄大な自然の大きさに圧倒されるよ。
休火山になって長いのかな?
麓は緑豊かな土地で樹海があり、あそこに足を踏み入れたら迷子になりそうだ。
山の東側に設置された野営場に到着した。
夕暮れ時で沢山の人で賑わっていて、めぼしい場所はすでに埋まっていた。
仕方ないのでボク達と激昂は、少し離れた場所に停車する事になった。
((ノア素敵な森ね、栄養豊富な腐葉土がきっと潤沢にあるわよ。))
樹海を一目見てから、ドライのテンションが異常に高い。
今にも勢いよく飛び出して行きそうなドライを、何とか落ち着かせ時間を作ると
約束させられたよ。
ゼクス達は徒党を組んで早速樹海へ入って行った、11匹の群れだ、よほどの事が
無い限り心配ないだろう。
激昂とボク達は食事に出る事にしたので、幌馬車と荷車の見張り兼留守番を
シャー達に頼んだ。
町は多くの人で賑わい、屋台や食堂が何件も軒を連ねている。
メニューを見ると山の幸なのか、見慣れない名前がいくつかあった。
試しに幾つか頼んでみたら、春に採って保存していたのか、茶色くなった塩味の
薇が出され一口食べてみた、えぐかったよ…重曹って無いのかな?
でも、キノコのミルク煮は美味しかったよ、残念なのはクリーム煮で無かった事、
今まで気にも留めなかったけど、バターも未開発なのかも。
食事を終え野営所に戻り、ゼクス達を呼び戻して明日に備え寝る事にした。
この様子じゃ、洞窟も人でいっぱいだろうな。
表の様子が騒がしくて目が覚める。
まだ薄暗いのに他の人達は、慌ただしく山に入る準備をしていた。
その光景をポカンと眺めている、依頼を受けて来た訳じゃ無いので
慌てる必要も無いし、のんびりでいいや…寒さに身をすくめ寝床へ戻ったよ。
その結果朝食をとる時、野営所に残っていたのは、ボク達と激昂そして荷物番の
数人だけだった。
ボク達と激昂はロックウルフを留守番に置いて、シャー達を影に隠して連れて
行く事にしたよ。
宿場町を通り抜け山道を登る、吐く息は白く寒かったのに汗ばんできた。
途中から剥き出しの山肌に景色が変わり、ぽかりと開いた洞窟の入口に辿り着く。
遅れて来たので込み合っているのを覚悟していたが、入り口付近の人影はまばらで拍子抜けしたや。
中に入ると岩を砕く音が、あらゆる方向から反響している、これじゃ~モーローやカーンも、出るに出られないかもね。
ボク達も奥に入り込み、適当な場所を探して作業を開始する。
作業を始めて少ししてから、オルムが近寄って質問してきた。
「アイム達の事で聞きたいんだけど。」
「何?」
「ノアはシャーがいるから、ウフル達みんなの意思が明確にわかるんだよね?」
「うん、そうだよ。」
「他のメンバーもそうなの?」
「ん?どういう事、何が聞きたいの。」
「命令をアイム達は正確に理解して行動するけど、会話出来る訳じゃ無いんだ。
だけどラグ達は会話している気がして、どうしてかなって疑問に思ったからさ。」
「え?会話しているのラグ。」
咄嗟の噓が苦手なボクは、ラグに丸投げするしか思い付かないよ。
っていうか、ロックウルフは会話できないのか…シャー達が出来るからてっきり
そんなもんだと思っていたけど、ゼクス達はピクシー効果の賜物だったんだ。
急に話を振られたラグは、咄嗟に聞こえなかった振りをした。
きっと今、頭の中がフル回転中だな、ごめんラグ。
「えっ、何が?」
「だから、ロッキーとムーンだったっけ?ラグのウルフ。
僕はアイム達と話せないから、どうやったら話が出来るのか知りたいんだ。」
「俺も話なんか成立してないぜ、勝手に話しかけてるだけだよ、なぁ~トリル。」
「あぁそうだよ、言ってる事は理解しているみたいだけどな!スミスもだろ。」
「話しかけると尻尾を振るのが可愛いから、つい話しちゃうよね。」
「えっそうなの、僕の勘違いって事…。」
「逆に、そう見えたのなら嬉しいね。」「おぅ、そうだな!」「だよな!」
口を揃えまるで示し合わせたかのようだ、その畳みかける勢いに圧倒されて、
すっかりオルムの疑問をけむに巻いてしまった、流石です尊敬に値するよ。
初日、目的の鉱石は見つからなかったが、鉄や銅あと小さなルビーも見つかった。
ルビーにはクロムが少量入っているはずだ、クロコアイトがあるかも!
明日も頑張ろうっと。
2日目はもっと奥へ潜った、お昼を過ぎた頃やっと粒状のニッケリンを見つけた。
鑑定したので間違い無い筈、一歩前進だ。
3日目とうとうクロコアイトを見つけたよ、嬉しくて頬ずりしたい気分さ。
他にも色々鉱石や宝石をゲットできたし、筋肉痛にメゲないで頑張った苦労が
報われて本当に良かった。
4日目、連日の肉体労働の後なので、一日休んで明日帰宅する事になった。
ドライと約束したので、森の縁辺りでセルジュと二人で腐葉土を集めに行く。
一人が良かったけど、理由を説明できないので…。
仕方ない、アイテムバックで持ち帰って後でディメーションに入れるか。
「ノアこの場所でいいんじゃない?」
((どう?ドライ))
ボクはこっそりドライに確認すると、大丈夫と返事が返って来たので、
そこで集める事にした。
「あと1週間でノアも13歳か早いね、正式な冒険者になってもう一年だよ。」
「うん、兄さん色々教えてくれてありがとう。」
「改まってなんだよ当たり前だろ、可愛い弟だからね。」
ミアならともかく弟に可愛いだなんて、何のてらいも無くこういう事を
言うんだよな、兄さん…こっちが恥ずかしくなる。
「家に帰るとミアに睨まれるな、兄さん独り占めにしたって。」
「ミアも同年の子や、あと少し外の世界に触れた方が良いと思うんだけどね。」
「兄さんもそう思ってたんだ。」
「レイチェが働き出して少し変化があったけど、それは対等な付き合いじゃ
無いだろ?」
「小さい頃から兄さんにベッタリだったからね、彼女が出来たら大変だ。」
「その責任の半分はノアにあるけどね、それに彼女ならもういるよ。」
「えっ本当?彼女いたんだ、ミアも知っているの。」
「いや、知らないよ、それより責任の部分流したね、アハハ。」
「それは、えっと、何も言い返せないな、へへ。」
「まぁ~いいけど、二人がベッタリしてたら、逆に疎外感に苛まれたかもね。」
「ん~兄さんはそんな事、考えないと思う。時に厳しくても穏やかで優しいし、
僻んだり妬んだりしない、そういうところ父さんによく似ているよ。」
「わぁ大絶賛だね照れるな、でもありがとう。」
今度彼女を紹介するよと言って、兄さんは少し恥ずかしそうにしていた。
二人でゆっくり話すのって久し振りだ、こんな時間もたまにはいいな。
野営所に戻ると、まだお昼時なのに人で溢れかえっていた。
日暮れ前に帰って来るなんて、何かあったのかな?
「ラグ、何かあったの?こんなに人が居るなんて。」
「スカルとデッターが、出たんだって。」
「えっ、どうして…。」
「半年前に落盤事故があって、今日やっと事故現場まで到達したらしいよ。」
「そしたら、中から出て来たって。」
フラグの回収来たー!!
確かにチラッと頭に浮かんだけどさ、こんなハプニングなんていらないのに…。
周囲がざわついている中、ひときわ高い声が響いた。
「静粛に!この野営場に、大勢の冒険者がやって来ていると思う。
この町にも小さいながらギルドがあるが、如何せん人手が足りない、
もし手伝っても良いと言う者がいたら、ギルドへ連絡してほしい、宜しく頼む。」
激昂と話し合い手伝う事になり、ギルドへ向かった。
誕生日までにセルジュを連れて帰らないと、怒れるミア顔が浮かぶ…怖。
無事に帰れますように、ボクは強く願った。
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