58 ガリラヤ村2
スクロとの戦いを見守っていた村人が、歓声を上げ駆け寄って来て、
ボク達の勝利を称える、暫くするとその輪の中から、村長が一歩前に進み出た。
「これで憂慮する事無く、日が暮れるまで収穫に励めます、有難うございます。
さぁ村の衆、作業に取り掛かろうとしよう。」
村長の言葉に村人は頷き、ボク達にお辞儀をして意気揚々と収穫に向かった。
心配したウルフ達の傷は、ライフの効果ですっかり癒えている。
それを見て安心したら、膝の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。
「ボク達の為だったんだろうけど、あんまり無茶しないでね、痛かったろう。」
ボク達がウルフ達に労いの声を掛けると、目を細め盛大に尻尾を振っていた。
その後、休む間もなくスクロの解体をして、夜の作戦を話し合う。
「トリル、中型スクロの首を切断するのは無理みたいだな。」
「太くてどこが首だか、頭と肩が直結してるとしか思えないよ、やたら硬いし。」
「それにあの脚力、自力で足を捥ぐなんて正気の沙汰じゃないよね。」
「もうシャー達が、あんな無理をする必要が無いように、罠にかかったあと
前か後ろの左右の足を先ず狙って、動けなくする事を優先したいな。」
「確かに、毛皮が剥がれ肉が抉れて、あれは痛々しいというよりグロかった。」
「酷い言いようだな、スミス」
「感謝しているよ、おかげでぼく達…。」
「そうだな。」
ボク達は改めて、謝恩を込めた視線をウルフに送る。
すると、その視線を受けたウルフ達は、誇らしげに胸を逸らし座った。
ラグがわざとらしく咳ばらいをして話を戻す、その後の話し合いで
両足を凍らせて砕く事で意見が一致し、それぞれ午後に備える。
ボクは生命樹の側で寝そべり、思い遣る。
雷を落とせば中型スクロくらい、一撃で仕留める事が出来るんだろうな、
でもそんな事、誰も望んでいないだろう。
だって「トルネード雷神封印な。」って言われた時、二人は否定しなかった。
それにボク達自身が、身の丈に合った経験を積まなきゃ意味が無い。
チートな力に頼って、思わぬ落とし穴に落ちるやもしれないし、
ボクがいないと、パーティーが立ち行かないなんて事になったら洒落にならない。
仲間と行動するなら、ボクは出来るだけ力を抑えようと改めて決意した。
命の危険があれば、別だけどね。
牧草を踏む柔らかい音がしてふと目が覚めた、ボクはうたた寝していたようだ。
見上げるとスミスがご飯だよと声を掛けたので、起き上がり後に続く。
外に出たら、村人が準備した温かいスープの匂いが漂っていた。
「うわぁ~美味しそうだね。寒くなってきたから嬉しいよ。」
さっそく、大き目にカットされた野菜や肉を口いっぱい頬張る。
仕留めた中型スクロの肉を村人にも分けたので、それを使ったのかな?
だったら今回の土産は、スクロの肉で決定だ。
仕事なので土産は必要ないとも思うが、沢山あるし家族で分けるのは当然だろう。
食事を終えて、夜に備え作戦のおさらいをする。
「俺が罠にかかった、中型スクロの足をアイスアローで凍らせるんだな。」
「その時、足が4本とも凍ったら安心だね。」
「そして俺が、凍った足を大剣で砕けばいいのか。」
「勿論ボク達も加勢するよ、そのへんは臨機応変に対処しよう、
あと、念の為ライフを飲む事も忘れずにね。」
「そうか、効果は24時間だったね。」
村の人達は、日暮れまで働く事が出来たので、今日は家で寛いでいるようだ。
ライトを照らした事で、中型が現れなかったと考え、今夜は使用を控えた。
なので今は、家の窓から漏れる明かりが、暗がりを侘しく灯している。
夜が更け、明かりがぽつぽつ消えゆく、そろそろスクロが現れる頃合いだろう。
完璧とは言えないが、作戦の方向性を決めたボク達は、暗闇の中息をひそめ
スクロを待ち構える態勢に入った。
冷たい風が吹き、穂が揺れさらさらと微かな音が、さざ波のように畑を渡る。
ついっとウルフ達が頭を上げ、同じの方向へ厳しい顔を向けたので、
スクロが現れた事に気付いた。
小型が罠にかかったのだろう、西側のそこかしこで鳴き声が響く。
ボクとスミスで、その方向に眩い光を放つと、
急に明るくなり目が眩んで、慌てた小型が右往左往し次々と罠にはまってゆく。
それはまるでコメディのようで、思わず吹き出してしまった。
小型を従え中央にいた中型スクロは、その様子を目の当たりにして熱り立った、
そしてボク達を目掛け突進して来た。
けど慌てずその場で待つ、今回は周りに5mの罠を仕掛けたからね、余裕だよ。
だが、スクロも罠の事を警戒していたんだろう、途中から方向を変え迂回して
向かって来た、けど残念…どこから襲っても無駄だよ、罠で囲っているんだもん。
なので、敢え無く罠にはまりぶぉーぐぉーと雄叫びをあげて藻掻いている。
そこをラグは容赦なく矢を放ち次々に足を凍らせ、それをトリルが率先して
砕いて回り、やがて足を失い転がり倒れた。
そしてすかさず心臓目掛け突き刺し、2度目の中型スクロ戦は無事幕を閉じた。
経験がものを言うって、こういう事を言うんだね。
スクロを解体した後、小型を絞めてアイテムバックに放り込み罠を片付ける。
うまく逃げおおせた小型も少数いたが、もう纏まって行動をとる事は無いだろう。
あらかた片付けも終わり、休む事にした。
翌日、目が覚めると空腹を感じたので表に出ると、とっくに日は登っていた。
かなり寝過ごしたようだ、スミスとトリルも後からモソモソ起き出して来た。
「あれ、ラグは?まだ寝てるのかな。」
「荷車の中にいないぞ。」
食事をしながら何処に行ったんだろうと話していると、村長と一緒に歩いて来る。
「そうか、村長の所に報告に行ったんだな。」
「リーダーって大変だね。」
3人が顔を見合わせ頷いていると、近くまで来た村長が笑みを浮かべ話しかけた。
「君達ありがとう、こんなに早く中型2頭を始末する事が出来て驚いたよ、
本当に感謝します。」
寝坊したので、これから帰ると街に着くのは夜中になる、最悪街の前で野営だ。
なので、村長の了解を取って、もう一日留まる事にした。
「時間が出来たな、アイテムバックに入ってるスクロの牙を抜いて集計しよう。」
ついでに血抜きや解体の処理をする為、村の東にある湖に足を延ばす。
「身の方は其々持って帰っていいとして、角だけここに纏めてくれ。」
「え~っと、中型が大銀貨1枚で小型が小銀貨3枚だったよね。」
集まった小型の角を確認すると384頭分あった、それに中型の分を含め計算する。
「ワォ!手数料を引いても今回の稼ぎは、一人99,990シリか結構いったね。」
「流石商人の息子、計算早いな。」
「惜しい!あと少しで大銀貨10枚だったね。」
討伐の成果に満足して一息つく、水辺に座り霞んで見える対岸を眺めた。
しかし広い湖だな、琵琶湖くらいの大きさがあるかもしれない。
「ねぇ、左斜めのあの辺りが墓所だよね。」
「そうだな、ここからだとはっきり見えないが。」
「そういえばストラダム村跡改め、ストラダム墓所って名前に変わるらしいぜ。」
「へ~トリル早耳だね、誰からの情報?」
「ティナが言ってたよ、女の子ってなんだかんだ言って、情報早いしな。」
からかうつもりは無いが、つい顔がニヤついてしまうのは仕方ないと思う。
ボク達の表情を見たトリルは、話した事を後悔しているようだ。
「村長に挨拶を済ませてあるから、今夜は早く寝て早朝出発するからな、
そのつもりで行動してさっさと寝ろよ。」
ラグはそう言うと、荷車に戻った。
スミスも残った布に付与でもするかと呟き、ラグの後を追う。
トリルは剣の訓練をすると言って湖に残ったので、ボクはそれを横で眺めていた。
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