56 リーダーラグロス
「みんなも分かっていると思うが、今日集まったのはCランク昇格の件だ。
この3日間で考えも纏まったと思う、何しろデートする余裕があるからな!」
「えっ、何々どういうこと?」
ドヤ顔で決め台詞を言ったつもりなんだろうが、台無しだよラグ。
珍しくまじめな顔で話し出したから、リーダーらしくなってきたなと
感心して聞いていたら、これだ。
きっと昨日から、ボクやスミスに早く話したくて、ウズウズしていたんだろうな。
でも、スミスの反応を見て満足気だけど、ボクはラグの期待を裏切ったようだ。
「なんだ、知ってたのかよ、ノア。」
「うん、昨日会ったからね、これからもデートするたび冷やかすつもり?」
「チェ!わかったよ、もう言わねぇよ、悪かったなトリル。」
トリルは苦笑して頷いた、大人だな。
スミスはもっと深く掘り下げて、話を聞きたそうな素振りだけど。
「話を戻して、Cランク昇格の事どう思うのか意見を聞きたい、誰から話す?」
「ぼくからでいい?」
スミスが率先して意見を言うなんて、滅多にない事だな、どうしたんだろ。
「ぼく、空気を呼んで話す癖があるからさ、
思ったことをはっきり伝えたいので、最初に話すね。
みんなが昇格を受け入れたとしても、ぼくはDランクに留まろうと決めている。
理由は経験が足りないからだよ、ぼくにはまだ早いと感じるんだ。」
言うべき事を言い終えたんだろう、ホッとした表情をしている。
スミスの発言が終わり、次は誰だと探るように3人の視線が交差した。
ここで、ボクもスミスに同意すると、ラグかトリルどちらかが、
本当はCランクになりたい気持ちを持っていても、言い出しにくくなるだろうな。
どうしようかと迷っていると、ラグがストレートに聞いてきた。
「スミスの意見は押し付けでないが、昇格反対だな。
なので、今度は賛成意見を聞いた方が良いかな、ノア、トリルどっち?」
「ボクも見送った方が良いと言おうと思ってたよ、反対だね。」
「俺も反対だったぞ、何だみんな気が合うな!ハハハ。」
「そういうラグはどっちだったの?」
「俺もCランクは早いと思ってたよ、父ちゃんと相談したけど概ね同じ意見だ。」
「俺は武器に魔法を纏う練習を始めたばかりだしな、
それに俺達だけで、大型の魔物を仕留めれるようになってからでも遅くないさ。」
他のパーティーなら1人くらい、絶対Cランクになってやる!って、
意地を張る奴が出てもおかしくないのに、こんな状況は稀なんだろうな。
冷静な判断が出来るクレッセントを誇りに思うよ、自画自賛になるので
口に出さないけどね。
ラグが結果を報告に行った、多分チムニーもこうなる事を期待していたと思う。
ボクが今まで昇格を散々蹴っているけど、苦言を言われた事無いもんな。
下手に受けてたら、きっと説教モードに突入していたよ。
ほどなくラグが帰って来たので、ボクはもう一つ提案を出した。
「あのさ、まとまった休みを決めない?3日働いたら1日休みとかさ、
あらかじめ決まっていたら、予定も組みやすいと思うんだ。
訓練する時間とか、自分の為に自由に過ごせる時間が欲しいなって思った。」
「いいかもね、今回お店を手伝って、知らない事が多いと痛感したよ。」
「訓練か…ノアは休みの間、何かやってたのか?」
「うん、錬金術の練習していたよ、これ見て。」
「綺麗な液体だね、何の効果があるの?」
「フフフ、驚くなかれ戦う前に飲むと、傷の再生、状態異常の緩和など優れた
効果を発揮するんだ、まだ試してないから今度飲んでみるよ。」
3人はディメーションの中で作ったと、勝手に解釈したようだ。
素材は生命樹の実だと話したら、食べると飲むじゃ大違いだと驚いている。
24時間で効果が切れるので気を付けて、と注意して一人10本配ったよ。
休みの件は受け入れられ、基本3日働いて2日休みとなった…アレ?増えてる。
遠い所に出向いて仕事をした時はその都度相談する、臨機応変だね。
半端な時間だけど、軽く仕事する気になりギルドへ出かける。
朝は冒険者で活気があるが、この時間だと人もまばらだな。
ボク達がギルドに入ると、3人組が親しそうな雰囲気でラグに声を掛けた。
昨日面倒見ていた子って、この子達かと直ぐ察しがついたよ。
3人は狩りに出たいが、何を受ければいいか判断が付かなく困っていると話した。
ラグはしょうがないな~なんて言いながら、頼られてまんざらでもない様子だ。
微笑ましいなと思い、ボク達も一緒に探す事になり、掲示板の方へ行く。
仕事を選ぶにも、パーティーの概要を知っていた方が選びやすいので聞くと、
一人足りない、ラグは顔を顰めた。
「回復魔法を使える子がいないの?昨日は気付かなかったが、それは厳しいな。」
「できれば、付与も欲しいよね。」
「あたし達の同期は、治癒系の子少ないんですよね~。」
「だからおれ達、いつも多めにポーション持ち歩いているんだ。」
「そっか、荷が増えて大変だな、アイテムバックがあれば別だけど。」
「そんな高額装備、持って無いに決まってるだろ。」
困ったな、ついて行ってやってもいいが毎日は無理だし、問題の解決にならない。
どうすればいいかと思い部屋を見回すと、デギキスが隅でポツンと座っていた。
これだ!確かあいつ治癒士だったはず、ラグは思うより先に足が動いていた。
「デギキス久しぶり、ここ座っていいか?」
「あ~いいよ、そうだジャンの事ありがとう、被害届出さないでくれたんだね。」
「それはいいよ、未遂だったんだし。」
「何か用?」
「確かデギキスって治癒使えたよな?それに従魔も持っているって聞いたぜ。」
そこから3人を紹介して、話はとんとん拍子に進み、お試しで組む事になった、
デギキスは控えめで和を乱さない奴だ、上手く馴染むだろう。
それに従魔を持っていると知った時の3人の顔、期待が漲っていたよ。
治癒の為だった事を忘れてないか?
「ありがとうソロ無理だし、どうしようと思って途方に暮れていたんだ。」
「俺達の年代はパーティー組んじまってるからな、今更探すの難しいぜ。」
少しでも見聞が広い人が加わって、あの3人も仕事選びに困る事も無いだろう。
丸く収まって本当に良かったよ、今回の事はラグのホームラン、お手柄だったね。
ひよっ子3人はデギキスに任せ、ボク達も依頼を選ぶ、休日を楽しんだ後だ、
仕事モード全開で行くぞ!と意気込んだのはいいが…。
ボク達が選んだ仕事は、距離が少しあるけど、初めて行く場所ガリラヤ村。
これで、3勤2休は出端から挫かれる事に決定した気がするよ。
ところで、軽く仕事するつもりが、何でこうなったんだろ…。
デギキスの事が上手くいって、テンションが上がってたのかな。
溜まり場に戻り、荷車の防寒や食料の準備をする、農村だし宿は無いかもね。
往復に2日掛かり、中型のスクロ討伐は初めてで費やす時間も計り知れない。
多分小型の取り巻きもいるな、長引いたらあっという間に12月になってしまう。
これから出かけると野営になるので、明日の朝出発する事に決めた。
時間に余裕が出来たので、スクロの情報収集をしようと話が決まる。
外出する矢先に昼食を取るのを、うっかり忘れていた事に気付いたよ。
なので遅い食事をとってから行動を起こした。
夕暮れ前に溜まり場に戻り、集まった情報を交換した。
風貌は体長2m、口から立派な牙が上に伸びて、鼻がひしゃげ4足歩行で短足。
あれ?もしかして現世の生物に例えると、イノシシかな。
だったら猪突猛進っていうくらいだから、足が速くて体当たりしてくるんだっけ、
弱点が鼻と下り坂だったかな、一応情報に加えとくか。
「大体こんなもんか、これを踏まえて何かアイデアを考えておいてくれ。
あと早朝出発したいから、寝坊する奴は溜まり場に泊まれよ!」
「アハハ、ラグ自分の事だね。」「ノアだって寝起き悪いだろ。」
「晩御飯食べてから、戻って来るのが妥当かな。」「俺もそうしよう。」
「そういう事で、解散!また後でな。」
新しい村どんな所かな、楽しみだよ。
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